成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「なるほど……? では敵に回る未来もあるかもしれないのか……ーーそういえば男爵は会場に用事でもある様子だったが……行かれては? リアーヌ嬢の相手はレジアンナたちが、きっとつとめてくれることでしょう」

 本気なのか嫌がらせ目的か、味方にならない道も残したゼクスに、フィリップは分かりやすく「リアーヌを置いて出ていけ」と伝えていた。
 しかしゼクスはその言葉に挑発的な笑顔を作って見せた。
 フィリップたちがユリアを切り捨てると決めた段階で、リアーヌの価値は跳ね上がり、ボスハウト家との関係を見てもリアーヌが不快に思うようなことーーその婚約者に対しての手出しなどは決して出来ないだろうと読んでのことだった。

「ーーですから確認しただけのことですよ? ……もしかして悪いのは耳じゃ無いのかなぁ……?」
「ーーほう?」

 ゼクスは独り言とは言い難い程度の声量言い放ち、当然のようにそれを聞き取ったフィリップは額に青筋を立てた。

(あっ……また会場に戻りたくなってきた)

 リアーヌは助けを求めるように視線を動かし、ビアンカと目が合う。
 縋るような眼差しを送ったリアーヌだったが、ビアンカはそれにフルフルと首を振るだけで答えた。
 諦めてチラリとゼクスたちのやり取りに視線を移すリアーヌだったが、笑顔のまま小難しい単語を使っての嫌味の応酬に、再び視線をビアンカに戻すと、そっと席を立った。

 その動きを察知した給仕人たちがすぐさまビアンカの隣にリアーヌの席を整えてくれたので、リアーヌはようやく局地的なブリザード地帯から脱出することが出来たのだった。

「ーーなんで喧嘩になったんだろう?」
「……単なる意見交換よ」

 小声でヒソリ……と話しかけると、ビアンカも同じように声をひそめて答える。

「……ついさっき、二番――」

 二番目と言いかけて、ビアンカに視線で止められたリアーヌはゴクリとその言葉を飲み込んで、改めて言い直す。

「ーー若いほうにするって決まったばっかりなのに?」
「……敵の敵は味方ーーだなんて世の中そんな簡単に割り切れないものよ」
「もはや同じ派閥に入ればいいのに……」
「ーー望む未来が同じだからといって、仲良くなれるかどうかはまた別問題じゃなくて……?」
「――別の問題そう……」

 リアーヌは未だににこやかに毒を吐き合っている二人を眺めながらため息混じりに答えた。

(……マジであの二人はいつのにあんなに仲が悪くなったのかと……――あー……でもゲームだとルート固定された後は他の攻略キャラほとんど出てこないしなぁ……ーー実は元から相性が悪かった説……?)
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