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へらり……と愛想笑いを浮かべるヨッヘム越しにサージュの姿が見え、ゼクスは思わず本音を吐露していた。
「ーー子爵が動けばどうなるものだか……」
ゼクスは笑顔でごまかしながら、小さくボヤくように呟かれた言葉は隣に座っていたリアーヌの耳にもハッキリとは届かなかったが、なにか呟いたことは伝わり、リアーヌやヨッヘムはたずねるような視線をゼクスに向けた。
「んー? なんだヨッヘムの店に手ぇ出すのか?」
「いやいや、ボスハウト家と争うだなんてそんな恐ろしいこと出来ませんよー」
困惑したようなサージュの言葉に、ゼクスはおどけたように答えるが、その頬はヒクリ……と、引きつっていたのだったーー
「ーーあくまで、今回限り。 そしてそれはリアーヌが経験を積むためのものだった……ということを理解していただけるのであれば、こちらは問題ありません」
気を取り直すかのように咳払いをしながら、最終確認のように言えば、ヨッヘムの顔がジワリジワリと明るく変化していく。
その変化を見たリアーヌはようやくゼクスのお許しが出たのだと、笑顔で確認した。
「じゃあ、私が買い付けやってもいいんですね⁉︎」
「良いですよー」
「やったー!」
両手を振り上げて喜ぶリアーヌ、そしてソファーの上でヘタリ……と気が抜けたようになっているヨッヘムが呆然と呟く。
「おお……言ってみるもんだわ……」
「ーー私頑張ってくるからね!」
「お、おお……ーーおう! せいぜい値切ってきてくれよ!」
リアーヌの声に、ヨッヘムはそこが子爵家で目の前には男爵までいるという事実を思い出し、気合いで自分の背骨を伸ばしてみせた。
「頑張る!」
「ーーじゃあ……こっちが予算で、これがリストだ」
「ーー金五十……」
ヨッヘムが懐から取り出し、テーブルの上に置いた皮袋を見つめ、リアーヌはゴクリと唾を飲み込んだ。
「ーー僭越ではございますが、お嬢様……」
「お願いします! 私にはこんな大金の管理とかムリです!」
「ーー念の為、あちらで中身の確認をさせていただければと……」
そう声をかけたアンナにコクコクと頷きながら、ヨッヘムは席を立った。
「あ、リストもアンナさんに渡しとくか?」
「あー……それは貰う」
「はいよ。 あー……さっき値切れって言っちまったけど、良いモンを安く、だからな? 混じりモンは買わねぇでくれよ?」
「……買わないつもりだけど……ーーそれってちゃんと見れば分かるもの?」
「ーー俺は分かるが……」
不安そうな顔で見つめあった二人は、そろり……とそっくりの仕草でこの場で一番頼りになる人物に視線を移した。
「ーー子爵が動けばどうなるものだか……」
ゼクスは笑顔でごまかしながら、小さくボヤくように呟かれた言葉は隣に座っていたリアーヌの耳にもハッキリとは届かなかったが、なにか呟いたことは伝わり、リアーヌやヨッヘムはたずねるような視線をゼクスに向けた。
「んー? なんだヨッヘムの店に手ぇ出すのか?」
「いやいや、ボスハウト家と争うだなんてそんな恐ろしいこと出来ませんよー」
困惑したようなサージュの言葉に、ゼクスはおどけたように答えるが、その頬はヒクリ……と、引きつっていたのだったーー
「ーーあくまで、今回限り。 そしてそれはリアーヌが経験を積むためのものだった……ということを理解していただけるのであれば、こちらは問題ありません」
気を取り直すかのように咳払いをしながら、最終確認のように言えば、ヨッヘムの顔がジワリジワリと明るく変化していく。
その変化を見たリアーヌはようやくゼクスのお許しが出たのだと、笑顔で確認した。
「じゃあ、私が買い付けやってもいいんですね⁉︎」
「良いですよー」
「やったー!」
両手を振り上げて喜ぶリアーヌ、そしてソファーの上でヘタリ……と気が抜けたようになっているヨッヘムが呆然と呟く。
「おお……言ってみるもんだわ……」
「ーー私頑張ってくるからね!」
「お、おお……ーーおう! せいぜい値切ってきてくれよ!」
リアーヌの声に、ヨッヘムはそこが子爵家で目の前には男爵までいるという事実を思い出し、気合いで自分の背骨を伸ばしてみせた。
「頑張る!」
「ーーじゃあ……こっちが予算で、これがリストだ」
「ーー金五十……」
ヨッヘムが懐から取り出し、テーブルの上に置いた皮袋を見つめ、リアーヌはゴクリと唾を飲み込んだ。
「ーー僭越ではございますが、お嬢様……」
「お願いします! 私にはこんな大金の管理とかムリです!」
「ーー念の為、あちらで中身の確認をさせていただければと……」
そう声をかけたアンナにコクコクと頷きながら、ヨッヘムは席を立った。
「あ、リストもアンナさんに渡しとくか?」
「あー……それは貰う」
「はいよ。 あー……さっき値切れって言っちまったけど、良いモンを安く、だからな? 混じりモンは買わねぇでくれよ?」
「……買わないつもりだけど……ーーそれってちゃんと見れば分かるもの?」
「ーー俺は分かるが……」
不安そうな顔で見つめあった二人は、そろり……とそっくりの仕草でこの場で一番頼りになる人物に視線を移した。
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