767 / 1,038
767
しおりを挟む
「ーー気持ち悪りぃよりずっといいだろ? ものが食なきゃ身体を壊すぞ?」
「それはそうなんだけど……」
ゼクスは迷うように背後を振り返り、目の前にある扉の向こうにいるリアーヌを想った。
「ーーリアーヌ少しだけ外に出てみない? 風に当たると気分が良くなる人も多いんだ」
ソファーの上、ぐったりしながらも思案顔を浮かべたリアーヌは、少しの時間をおいて首を縦に振った。
「……ゼクス様はなんで平気なんですか?」
ゼクスの手を借りながらソファーから立ち上がったリアーヌは、少しだけ不満げな顔をゼクスに向けながらたずねた。
ゼクスはリアーヌの腰に手を添え……ーー半分抱えるように腕を回しながら、リアーヌを甲板までエスコートしながら答える。
「んー? それこそ子供……まともに歩けないほど小さい時から船には乗ってたよねー。 だから気がついた時には船はでっかい遊び場だったよ」
「遊んでると酔わない……?」
「ーー慣れ、のほうかな?」
「ズルいぃ……」
「はいはい、ほら捕まってて?」
ゼクスはそう言うと、細い階段をリアーヌを抱き抱えながら登って行った。
「あれ? 坊見学ッスか?」
甲板の出入り口付近で作業をしていた船乗りの一人がゼクスに気がつき声をかける。
それを合図に多くの船乗りがそちらに視線を送る。
「見学も兼ねて風にあたろうと思ってね」
その言葉にチラリとリアーヌに視線を走らせる船員たち。
長年船に乗っている彼らはその顔色だけでリアーヌの状況を理解したようだった。
「ありゃ……ダメでしたかー」
「船初めてだからね……?」
気を使うように言ったゼクスに対し、リアーヌは潮風を胸いっぱいに吸い込み、見渡す限りの海を見つめながら、少しだけスッキリしたような顔で答えた。
「部屋よりこっちの方が気持ちいいです」
その言葉を聴いていた船乗りたちは、嬉しそうに顔を綻ばせながら自分たちの作業に戻っていく。
潮風にあたり、気分が良くなる者は船酔いに慣れやすいーーそんな昔から言われている言葉を思い出しながら。
ゼクスもまた、その言葉を思い出しながら(本当に早く慣れればいいんだけど……)と願うように思っていた。
そんなリアーヌたちに早足で近づいてくる男が一人。
会話は聞こえていたのか、苦笑いを浮かべながら被っていた帽子を軽く上げながらゼクスに合図を送るように挨拶をした。
「外のが良いならいくらだっていてくださっていいんですが……運がいいのか悪いのか……」
その言葉にゼクスが眉をひそめながらたずね返す。
「何があった?」
「残念ながら何も無いほうですわ。 凪ーーほぼ無風です」
「それはそうなんだけど……」
ゼクスは迷うように背後を振り返り、目の前にある扉の向こうにいるリアーヌを想った。
「ーーリアーヌ少しだけ外に出てみない? 風に当たると気分が良くなる人も多いんだ」
ソファーの上、ぐったりしながらも思案顔を浮かべたリアーヌは、少しの時間をおいて首を縦に振った。
「……ゼクス様はなんで平気なんですか?」
ゼクスの手を借りながらソファーから立ち上がったリアーヌは、少しだけ不満げな顔をゼクスに向けながらたずねた。
ゼクスはリアーヌの腰に手を添え……ーー半分抱えるように腕を回しながら、リアーヌを甲板までエスコートしながら答える。
「んー? それこそ子供……まともに歩けないほど小さい時から船には乗ってたよねー。 だから気がついた時には船はでっかい遊び場だったよ」
「遊んでると酔わない……?」
「ーー慣れ、のほうかな?」
「ズルいぃ……」
「はいはい、ほら捕まってて?」
ゼクスはそう言うと、細い階段をリアーヌを抱き抱えながら登って行った。
「あれ? 坊見学ッスか?」
甲板の出入り口付近で作業をしていた船乗りの一人がゼクスに気がつき声をかける。
それを合図に多くの船乗りがそちらに視線を送る。
「見学も兼ねて風にあたろうと思ってね」
その言葉にチラリとリアーヌに視線を走らせる船員たち。
長年船に乗っている彼らはその顔色だけでリアーヌの状況を理解したようだった。
「ありゃ……ダメでしたかー」
「船初めてだからね……?」
気を使うように言ったゼクスに対し、リアーヌは潮風を胸いっぱいに吸い込み、見渡す限りの海を見つめながら、少しだけスッキリしたような顔で答えた。
「部屋よりこっちの方が気持ちいいです」
その言葉を聴いていた船乗りたちは、嬉しそうに顔を綻ばせながら自分たちの作業に戻っていく。
潮風にあたり、気分が良くなる者は船酔いに慣れやすいーーそんな昔から言われている言葉を思い出しながら。
ゼクスもまた、その言葉を思い出しながら(本当に早く慣れればいいんだけど……)と願うように思っていた。
そんなリアーヌたちに早足で近づいてくる男が一人。
会話は聞こえていたのか、苦笑いを浮かべながら被っていた帽子を軽く上げながらゼクスに合図を送るように挨拶をした。
「外のが良いならいくらだっていてくださっていいんですが……運がいいのか悪いのか……」
その言葉にゼクスが眉をひそめながらたずね返す。
「何があった?」
「残念ながら何も無いほうですわ。 凪ーーほぼ無風です」
19
あなたにおすすめの小説
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる