成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 アウレラ到着後二日目の昼過ぎーー
 その日は夕飯まで宿には戻らないと言っていたはずのゼクスが宿に戻ってきていた。

「ーーあれ? ゼクス様どうしたんですか?」
「飛び込みで営業かけたら結構大きめの取引になりそうでさ? ーーリアーヌさえ良ければその交渉、見学してみない?」
「……ーー私ってそういう交渉も練習すべきなんです……?」

 不安そうに顔を曇らせるリアーヌに、ゼクスは肩をすくめながら苦笑いを浮かべる。

「……全く出来ません! って周りから思われちゃうのはマズい、かな? ーーただ今回のは本当に見学。 初めての相手だし、最悪まとまらなくてもそこまで痛くない契約だからさ。 見学にはもってこいかなー? って思って……気が乗らないなら無理にとは言わないけど……」

 リアーヌは迷うように後ろを振り返り、オリバーたちに意見を求める。
 なにかを言い出しそうなアンナをオリバーが手で制し、優しく語りかける。

「ーーお嬢様はどうなさりたいですか?
ゼクス様はお嬢様の将来のためを思って提案されました。 お嬢様はどう思われますか? 将来のために行くべきか行かないべきか……」

 リアーヌはその言葉を聞き(そりゃ行くべきなんでしょうけど……)と心の中でグチる。
 本来ならばそれに(でもあの港の屋台街まだ食べ尽くしてないし、近くの市場みたいなとこにも行ってないし……)と、続けるはずだったのだが、前半部分を思った瞬間、ほわり……となんだか柔らかいものに包まれたような感覚を覚え、リアーヌはそれがギフトによるものだとすぐさま理解しーー……盛大に顔をしかめてしまった。

「……嫌な予感がされますか?」

 そんなリアーヌの変化にオリバーは顔を引き締めながらアンナと視線を交わし合い、ゼクスは小さく息を呑んだ。
 そんな周りの反応に、リアーヌは(そうだってことにしちゃおうかな……?)と少し迷ってしまったが、すぐさま襲ってきたソワ……に、観念したように口を開いた。

「行ったほうが良い気がします」
「……本当ですか? その……嫌な予感がされるのでしたら男爵には正直にお話になったほうが……?」
「うん! 気なんか使わないで? ……俺も行かないほうが良いかな……?」
「……ーーその、私は今日も屋台街に行きたくて……でも行ったほうが良さそうな気配を感じてしまって……」
「あー……ね?」

 リアーヌの言葉にゼクスは無理やり相槌を打ち、オリバーとアンナはグッと腹に力を込め、ため息を吐き出すことを堪えていた。

「……うまく行ったら屋台街回って帰ります?」
「……ーー終わりの時間次第かな?」

 そんなゼクスの言葉に、リアーヌは(交渉の時は無理でも、雑談になったらすぐさま切り上げようって言い出そう……!)と心に固く誓っていた。
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