成り上がり令嬢暴走日記！

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　嬉しそうにそう笑うゼクスに、リアーヌも嬉しそうに笑いながら口を開く。

「すっごく安くなりましたよね⁉︎　最終的には一本三百円ですよ⁉︎」
「船で運ぶ経費乗せたって、千円にならない！　つまり千円で売ったって儲けが出るってことだ！　アウレラの酒がだよ⁉︎」
「そもそもお酒一本が千円って！　うちの国のお酒だって激安です！」
「ーーしかもこれで顔はしっかりと覚えてくれただろうし……ーーあの値段で売ったっていう前例も作れた」

　ニヤリと黒い笑顔を浮かべるゼクスに、リアーヌは首を傾げながら口を開いた。

「……前例ってそんなに重要なんですか？　あのおじさん何回も「今回は特別です！　ご挨拶代わりですから！　今回だけの値段ですよ！」ってものすごい主張してましたけど……？」
「ーーどれだけ儲けてる商人だって、帳尻を合わせられないような値段は付けないものなんだよ……絶対に」
「帳尻……ーーえ、あのお酒本当はもっと安いんですか⁉︎」
「いやいやいや、流石にそれは無い。　ーーただ、あの店主はあの酒をあの値段で売っても、他の商品で確実に黒字に持っていけるんだ……ーー損して得とれって聞いたことない？」
「……どこと無く？」

（その言葉にあんまり聞き覚えは無いけど、からくりは開店セールの目玉商品と同じっぽいな……？）

「……あの店主はあの値段で売っても他で十分に取り返せるって計算は必ずしているはずなんだ」
「なるほど……」
「ーーリアーヌの最大の功績は、その底値を引き摺り出してくれたってこと」
「……引き摺り出しましたかね……？」
「……リアーヌ三百円から更に下げようとだいぶゴネたでしょう？」
「ーー三回成功したから四回目も行けるんじゃ無いかと……」

（なんか値切るのが楽しくなってどこまででも行ってやろうと思ってました……）

「あの時、あの店主キッパリ断ったでしょ？　「そんな値段じゃ売れない。　これ以上は契約を白紙に戻す」って」
「……ーーあんまりに値切られすぎて、本当に頭にきてる可能性も……？」

（やったのは私だけと、逆の立場だったら（どんだけ値切る気だ⁉︎　ナメてんのか⁉︎）ってキレると思うよ……？）

「無いとは言い切れないけど……ーーあの場ってそういうやりとりをする場だからね？　こっちは値切る気で行ってて、あっちもどうにかそれを阻止するつもりでいたーーリアーヌをターゲットにしてね？　でもそのリアーヌに見事返り討ちにあったから抵抗する手段を失って、底値まで披露する羽目になったんだと思ってるよ？」
「そう、なんですかね……？」
「ーー底値が分かったなら今後の駆け引きはずっとやりやすくなる。　向こうの引き際が分かってるようなもんだからね？」