813 / 1,038
813
しおりを挟む
「リアーヌ様がとても素直な方で、こちらまで肩の力が抜けて、今日のお食事はとても楽しかったわ?」
この言葉は夫人の本心だった。
貴族の社交界は国を変えても似たようなもので、腹の探り合い、足の引っ張り合いを繰り広げる。
そんなことをするよりは、細心の注意を払って準備した料理を美味しい美味しいもの食べてくれるリアーヌを眺めている方が気だというのは事実だった。
ーー情報交換、情報収集といった面から見るならば、なんの収穫も得られなかったのだったが。
「……私も楽しかったです」
控えめにリアーヌが答えると、ゼクスの口からため息じみた吐息が漏れて、その肩をビクリと震わせる。
(役立たずでごめんよ……)
「あらそんなに責めないで差し上げて? 私リアーヌ様には次もたくさん食べていただきたいわ? ーーリアーヌ様が喋れなくなってしまうほど美味しいちらし寿司を用意するからね?」
「ーー美味しいちらし寿司……」
夫人の言葉にリアーヌはゴクリと自然に溢れてきた唾を飲み込んだ。
「……リアーヌ?」
「ぁっ! いやその……す、少しで……はい……」
笑顔のゼクスに圧をかけられ、身体を小さくするリアーヌ。
その背後ではアンナたちの瞳が不愉快そうに細められたが、リアーヌの態度が態度だったので、それ以上行動に出ることはないようだったが。
そんな中、ゼクスを嗜めたのはタカツカサ伯爵だった。
「男爵、あんまり婚約者をいじめてはいけないよ?」
「そうね、こんなに可愛らしい方の笑顔を奪ってはいけないわ?」
夫妻からの言葉に、ゼクスは少し迷うようなそぶりで「あー……」と言葉を濁したあと、肩をすくめながら口を開いた。
「では……お言葉に甘えて、次回も心ゆくまで名門タカツカサ伯爵家の料理を堪能させていただきます」
「楽しみだわ! 次もとびきり美味しいお米を送ってもらいますからね⁉︎」
「嬉しいです……!」
リアーヌは反射的にそう答えながらも、すぐに不安そうにゼクスに小声でたずねる。
「……え、本当に食べてもいい……?」
「ーー次は事前にある程度食べてからお邪魔するから……」
(……たらふく食わせてから食事会に臨めってことですね、分かります……ーーそう言えば成長期真っ盛りの時、外食行く前は必ず、コンビニでおにぎり食べてからだったな……)
本来ならば、このような場所で、ヒソヒソと会話することは褒められた行為ではないのだが……ーー今回は、その会話内容が丸聞こえだったため、その無作法に眉をひそめる者はいなかった。
「ーーじゃあ次は……食後のデザートにとびきりのものを準備させようかしら?」
二人の会話が聞こえていた夫人はイタズラっぽくそう微笑む。
この言葉は夫人の本心だった。
貴族の社交界は国を変えても似たようなもので、腹の探り合い、足の引っ張り合いを繰り広げる。
そんなことをするよりは、細心の注意を払って準備した料理を美味しい美味しいもの食べてくれるリアーヌを眺めている方が気だというのは事実だった。
ーー情報交換、情報収集といった面から見るならば、なんの収穫も得られなかったのだったが。
「……私も楽しかったです」
控えめにリアーヌが答えると、ゼクスの口からため息じみた吐息が漏れて、その肩をビクリと震わせる。
(役立たずでごめんよ……)
「あらそんなに責めないで差し上げて? 私リアーヌ様には次もたくさん食べていただきたいわ? ーーリアーヌ様が喋れなくなってしまうほど美味しいちらし寿司を用意するからね?」
「ーー美味しいちらし寿司……」
夫人の言葉にリアーヌはゴクリと自然に溢れてきた唾を飲み込んだ。
「……リアーヌ?」
「ぁっ! いやその……す、少しで……はい……」
笑顔のゼクスに圧をかけられ、身体を小さくするリアーヌ。
その背後ではアンナたちの瞳が不愉快そうに細められたが、リアーヌの態度が態度だったので、それ以上行動に出ることはないようだったが。
そんな中、ゼクスを嗜めたのはタカツカサ伯爵だった。
「男爵、あんまり婚約者をいじめてはいけないよ?」
「そうね、こんなに可愛らしい方の笑顔を奪ってはいけないわ?」
夫妻からの言葉に、ゼクスは少し迷うようなそぶりで「あー……」と言葉を濁したあと、肩をすくめながら口を開いた。
「では……お言葉に甘えて、次回も心ゆくまで名門タカツカサ伯爵家の料理を堪能させていただきます」
「楽しみだわ! 次もとびきり美味しいお米を送ってもらいますからね⁉︎」
「嬉しいです……!」
リアーヌは反射的にそう答えながらも、すぐに不安そうにゼクスに小声でたずねる。
「……え、本当に食べてもいい……?」
「ーー次は事前にある程度食べてからお邪魔するから……」
(……たらふく食わせてから食事会に臨めってことですね、分かります……ーーそう言えば成長期真っ盛りの時、外食行く前は必ず、コンビニでおにぎり食べてからだったな……)
本来ならば、このような場所で、ヒソヒソと会話することは褒められた行為ではないのだが……ーー今回は、その会話内容が丸聞こえだったため、その無作法に眉をひそめる者はいなかった。
「ーーじゃあ次は……食後のデザートにとびきりのものを準備させようかしら?」
二人の会話が聞こえていた夫人はイタズラっぽくそう微笑む。
22
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる