成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

文字の大きさ
上 下
886 / 1,038

886

しおりを挟む
「利用……?」
「あの子は脅されてなんかないーーつまり証拠なんか絶対に出せない」
「あ……」
「でもあの子は、今度はフォルステル家に罪を着せて自分の保身をはかってるーーありもしない証拠を捏造してくるかもしれないよ?」
「……今度はフォルステル家とやり合うつもりってことですか?」
「あの子の力だけじゃ敵わないだろうね? ーーだからこそのラッフィナートなんだとは思うけど……それにしたってどのツラ下げて、だよねー」
「……じゃあさっきの『魅了』は……?」
「あー……ダメ押し? ありもしない証拠を渡してくれれば、彼女を本格的に排除できるから……」

 あまり褒められた行為ではないと理解しているのか、言いにくそうに前髪をいじりながら答えた。

「ーーそう、なんだ」

(……ってことはつまりーー別に口説くとかそういうことじゃ無いわけか……)

 ホッとしたようなリアーヌの表情でゼクスはようやく事態を把握し、そしてリアーヌが嫉妬していたという事実にまで思い至る。
 ニヤケそうになる口元を隠しながら「そうなんだよー」と相槌を打った。
 そして軽く咳払いをしつつ表情を取り繕うと再び口を開く。

「俺もまだ疑ってるところはあるから、様子見だね」
「……疑ってる?」
「ーー本当に彼女の後ろに黒幕がいないのか……?」
「……でもさっき、ありえないって」 「ーー隠し切れてしまう人たちがいないわけじゃない」
「ええ……」

 リアーヌは(あやふやな……)と内心でゼクスに対し呆れていたが、ゼクスはそれが事実だった場合、どう動くかを必死に考えていた。

 ーーゼクスはベッティが……レーレン家が元々王妃側の人間だった場合を危惧していた。
 そうすれば今のこの状況に、ほとんど説明が付いてしまうのだ。
 最初からユリアに近づくために友人になり、ユリアの恋路を言葉巧みに妨害。
 ーー例えユリアがだと認識していても、レオンに心底嫌われている現状では、その言葉は以外の何者でもない。
 そしてユリアにトラブルを起こさせ続け、それを治めるのが王妃であり続けるならば、ユリアは王妃のーー第一王子の派閥ということになってしまう。
 本人がどう思っていようと……例え否定をしようとも、周りはそう扱う。
 そうして身動き取れなくされてしまえば、ユリアは第一王子と縁付くしかなくなるのだ。

(……そう考えれば、被害を被ったシャルトル家やボスハウト家は王妃に取って邪魔な家々ーー……今回うちに近づいた目的はなんだ……? うちまで派閥に入れようとしてる……?)
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...