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ラッフィナートの面々も、呆然とした表情を浮かべてサージュを見つめていたのだがーー
この状況下において、これは当然とも言える配慮だった。
今回の悪評は、ボスハウト家側の問題にゼクスが巻き込まれたと言っても過言ではない。
であるならば、ボスハウト家としてはラッフィナート家に対し、配慮を見せないわけにはいかなかったのだ。
ーー本来であれば『そのお心遣いだけで……』などと相手側が返し、筋を通したことになるのだがーー……
そもそも、この配慮を見せるような場面はほとんど存在しない。
貴族となる準備を始め貴族社会に深く出入りしているラッフィナートの人間であっても、馴染みのない配慮であったのだが……
貴族よりも貴族の習わしに詳しいヴァルムはその事実に気が付かずにサージュに伝言を頼んでしまったのだ。
そしてーー
唯一、その配慮を理解できたかもしれないゼクスは……
ーーこの中の誰よりサージュの言葉に動揺し、呆然と呟いていた。
その顔に『ありえない』と貼り付け、家族たちに視線を送ったゼクスだったが、その先で見た沈黙を貫きながらも忙しなく視線を交わし合っている姿に、ジワジワと不安の色を濃くしていった。
「それはつまり……その、商人が考える契約や雇用の凍結と変わらないのか……?」
「らしいな。 そうなった場合、陛下への許可も貰えるらしい」
大したことではない……と言うようにそう言い放ったサージュに、隣に座っていたリエンヌは心配そうに眉を下げ、リアーヌやゼクスを見つめていた。
二人とも不安そうに眉を寄せ、話し合いの結論を待っているようだった。
(……ヴァルムさんが言わなきゃダメって言うんだから、言わなきゃいけないことなんだろうけど……ーー婚約の凍結ってなに……? そんなの聞いたことないよ……)
「そう、なのか……?」
「けれど……凍結することでそちらにご迷惑はかからないの……? そのーー外聞的な意味合いで……?」
グラントとフリシアは伺うようにサージュに問いかける。
本心を語るのであれば、このウワサヲやり過ごす少しの間だけでもボスハウト家と距離を取りたい、というのが本音であった二人だが、その本音とは別に、ボスハウト家との縁を手放すつもりなど、さらさら無く、今後のことを考えて少しでも良好な関係を築いておきたいという気持ちも本当だった。
「ーー平気、なんじゃねぇか? ヴァルムさんの言いつけでもあるし、悪いことにゃならねぇよ」
サージュのその言葉にホッとしたように顔を見合わせるグラントたち。
しかし、やはりリエンヌだけは不安そうに眉を下げながら話の行末を見守っていた。
この状況下において、これは当然とも言える配慮だった。
今回の悪評は、ボスハウト家側の問題にゼクスが巻き込まれたと言っても過言ではない。
であるならば、ボスハウト家としてはラッフィナート家に対し、配慮を見せないわけにはいかなかったのだ。
ーー本来であれば『そのお心遣いだけで……』などと相手側が返し、筋を通したことになるのだがーー……
そもそも、この配慮を見せるような場面はほとんど存在しない。
貴族となる準備を始め貴族社会に深く出入りしているラッフィナートの人間であっても、馴染みのない配慮であったのだが……
貴族よりも貴族の習わしに詳しいヴァルムはその事実に気が付かずにサージュに伝言を頼んでしまったのだ。
そしてーー
唯一、その配慮を理解できたかもしれないゼクスは……
ーーこの中の誰よりサージュの言葉に動揺し、呆然と呟いていた。
その顔に『ありえない』と貼り付け、家族たちに視線を送ったゼクスだったが、その先で見た沈黙を貫きながらも忙しなく視線を交わし合っている姿に、ジワジワと不安の色を濃くしていった。
「それはつまり……その、商人が考える契約や雇用の凍結と変わらないのか……?」
「らしいな。 そうなった場合、陛下への許可も貰えるらしい」
大したことではない……と言うようにそう言い放ったサージュに、隣に座っていたリエンヌは心配そうに眉を下げ、リアーヌやゼクスを見つめていた。
二人とも不安そうに眉を寄せ、話し合いの結論を待っているようだった。
(……ヴァルムさんが言わなきゃダメって言うんだから、言わなきゃいけないことなんだろうけど……ーー婚約の凍結ってなに……? そんなの聞いたことないよ……)
「そう、なのか……?」
「けれど……凍結することでそちらにご迷惑はかからないの……? そのーー外聞的な意味合いで……?」
グラントとフリシアは伺うようにサージュに問いかける。
本心を語るのであれば、このウワサヲやり過ごす少しの間だけでもボスハウト家と距離を取りたい、というのが本音であった二人だが、その本音とは別に、ボスハウト家との縁を手放すつもりなど、さらさら無く、今後のことを考えて少しでも良好な関係を築いておきたいという気持ちも本当だった。
「ーー平気、なんじゃねぇか? ヴァルムさんの言いつけでもあるし、悪いことにゃならねぇよ」
サージュのその言葉にホッとしたように顔を見合わせるグラントたち。
しかし、やはりリエンヌだけは不安そうに眉を下げながら話の行末を見守っていた。
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