成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……一度持ち帰って検討いたしますわ……?」

 そう答えた瞬間、嫌な予感はじわじわと薄まっていき、リアーヌはフィリップからのちょっかいを無事にかわせたことに胸を撫で下ろしていた。

「……いつだって自分の身の振り方は考えておかなくてはいけないのよ?」
「えっと……?」

 フィリップの隣に座るレジアンナに少し怒ったように言われ、リアーヌは首を傾げる。
 リアーヌに見つめられ、レジアンナは怯んだように視線をは迷わせるが、それでも手を握り締めながら真剣な表情でリアーヌを見つめかえし、さらに言葉を重ねる。

「ーー私だってこんなこと言いたいわけじゃないけど……でも万が一が起こってしまったら……!」

 憤るように言葉をぶつけるレジアンナに、リアーヌは困ったように眉を下げながら「あー……」と迷うように言葉を濁す。
 レジアンナが心から自分を心配してくれているのは理解出来たが、だからと言って、先ほどの嫌な予感をひしひしと感じる申し出を受けれることは不可能に近かったのだ。

「ーーウワサではラッフィナートはボスハウトの後釜となる家を探し回っている……とか?」

 そんな動揺を知ってかしらずか、フィリップはたっぷりと含みを持たせながら言葉を紡いだ。
 そんなフィリップの言葉にリアーヌの身体がピクリと反応する。

 ーーラッフィナート商会が今現在、精力的に探している“後釜”は、この騒動で敵と認定した商店や取引先たちであり、決して新たな婚約相手などでは無かったのだが……リアーヌに揺さぶりをかけるにはそれで十分だったのだ。
 数多あまたの情報を取得し選別することに長けている貴族、そしてその中でもより多くの情報が入ってくる大貴族ーーその嫡男であるフィリップが、こんな簡単なウワサの審議が付かないわけがないーー
 つまり、フィリップにはそのウワサが偽りであると気がついていたのだが、リアーヌへーー引いてはその後ろに今もなおいるであろうゼクスへ『そちらの事情くらい把握しているぞ』と伝えるために、リアーヌへ言葉をかけていた。

 ーーしかし、ここでフィリップは一つの大きな思い違いをしていた。
 ラッフィナート商会へのウワサ出た直後、ボスハウト子爵夫妻がラッフィナート商会へ足を運んだことはすでに把握していた。
 そしてその直後に婚約の凍結が発表されたーー
 つまり、ラッフィナートとボスハウトがなんらかの話し合いや取引を交わし、通常であれば凍結などにはならないところを、あえて凍結という手段を用いてウワサの収集にあたったのだーーと考えていたのだ。
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