成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 部屋に入りながら、サージュやゼクスの祖父グラントと父クライスが言葉を交わし合う。

「この人ったら急げとしか言わなくて……私も何がなんだかーーなにかご存知?」
「城のほうが騒がしいーーぐらいの話しか……ーー安全になるまでいたらいいんだよ! ーーほらぼんも! 食いモンは、たんと用意してあるからね」
「ーーあざっす!」

 リエンヌやザームもゼクスの祖母フリシアと話をしながら応接室へと入っていく。

 そんな緊張感などどこにもない光景を眺め、リアーヌはポソリと呟く。

「……なんか大丈夫そうな気がしてきました」
「子爵様が慌ててないって、ものすごい安心感あるね……?」
「ですね……?」

 リアーヌはそう答えながらも、心にある不安をかき消すように、足早に応接室へと入っていった。



 その後、ある程度落ち着いたリエンヌがギフトを使い、ヴァルムたちの安否を確認していく。
 このギフトは、やりくりにより自分の家の利益や不利益を事前に察知することが出来るので、使用人たちの安否もその範疇はんちゅうに含まれているようだった。

「ーーあら?」

 いつものようにテーブルに肘をつき、頭を押さえ、目を閉じながら力を使っていたリエンヌが、そんな言葉と共にパッと目を開ける。

「……どうした?」

 応接室にいた全員がリエンヌへ注目する中、代表するようにサージュがリエンヌへ問いかける。

「……ここに騎士が来るみたいなんだけどーーあなたなにも感じない?」
「……特には?」

 サージュはそう答えながらチラリとリアーヌを見つめ、その表情から娘も異変を感じ取っていないと判断し、リエンヌに向かって小さく肩をすくめた。

「……じゃあ、来ても問題は無いのね!」

 納得したように明るい声で言ったリエンヌに待ったをかけたのはラッフィーナート家の者たちだった。

「ーーちょっと待ってくれるか?」
「……騎士がうちに?」

 グラントとクライスが顔をひきつらせながらたずねる。

「……でも、サージュがなにも感じないなら、何事もなく帰ってくれるんだと……」
「ーーなら、そのまで心配することは無い、のかね……?」

 リエンヌの言葉にフリシアが納得の表情を浮かべたところで、ゼクスがリアーヌにコソリとたずねた。

「ーー心配することは無いと思う?」
「……私たちは?」
「ーー詳しく聞いても?」
「母さんのも父さんのも、結果が良ければ大きな反応はないんですよ。 父さんはもちろんですけど、母さんのも『結果、悪いことにはならなかったけど、途中大変だった!』なんてこと結構あって……」
「ーーつまり、今回もそうなる……?」
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