成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 王太子ほどではないが、時期公爵、そしてその婚約者の身柄の安全はありとあらゆるトラブルに直結してしまう。
 万が一を考慮した場合、一つや二つの店に出かけるならともかく、好き勝手に大通りを散策できる機会などそうそうないことを、二人ともきちんと理解していたのだ。

 フィリップたちの後からも続々と婚約者や、内々で結婚が決まっている者が店に入ってきて来る。
 そしてビアンカの隣にはパトリックがそしてリアーヌの隣にはゼクスが並んだ。

「……これはーーここからはバラバラに自由行動的な感じ……?」
「ーーそのようだけれど……大丈夫なのかしら……?」

 小声でたずねたリアーヌに、ビアンカも同じように小声で返しながら店の外に並ぶ騎士たちに視線を向けた。
 ここに集まる“友人たち”ですらなにかあっては大問題になる者たちばかりだというのに、その婚約者ーーつまりは跡取りたちまでこの場に合流し、尚且つその者たちがバラバラに動こうというのだ。
 守る方からすれば悪夢と言えるような状況であることは明白だった。

「ーーむしろ固まらないでほしいと、警護の責任者から懇願されたようですよ?」

 ビアンカの疑問に答えたのはパトリックだった

「……そうなんですの?」
「はい。 二人までなら盾になることも、抱えて走る手段も視野に入るらしいのですが、この人数だと盾になることすら難しいからーーと」
「ーーバラけさせたほうが騎士さんたちは楽だった……⁉︎」

 パトリックの説明を聞いていたリアーヌは驚愕の表情の表情で呟くが、ゼクスがすぐにそれを否定した。

「いやいや、元からバラバラになると分かっているのと、まとまって動くと聞いてた集団が突如二つや三つに別れたり数人が別行動を始めるのとは、全然違うから」
「そう……ですかね?」
「当たり前さ。 俺たちが子供で騎士が子守だと思えば分かる?」
「……すっごい分かる!」

(勝手にフラフラ歩きまわる子供たちより集団でいてくれる子供たちだし、集団より断然少人数‼︎)

 騎士たちの邪魔をしていたわけでは無いのだと、リアーヌがホッと胸を撫で下ろしていた頃、店の中にレジアンナの声が響いた。

「ーー大変⁉︎ まだおそろいのものを買ってないわ⁉︎」

 その言葉を聞いてリアーヌはビアンカと顔を見合わせる。

「ーーあれ? さっき全員分の買わなかったっけ……?」
「……それは貴女が値切ったお菓子でしょう? レジアンナは今日の思い出になるものを欲しがっているのだから、お菓子じゃね……?」
「……食べたらなくなっちゃうしね?」

 リアーヌたちは、レジアンナとその親しい友人たちがなにごとか話し合う様子を眺めながら頷きあう。
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