ちぐはぐ

稀人

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一章 私立八意学園

ザワザワ

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家に帰ってから連絡先を交換し忘れていることに気がついて、まあ明日聞けばいいやなんて考えて、明日も会うことが前提なことに本当に付き合うことになったんだなぁと振り返り悶える。


なんだあの返答は、なんなんだ今日の私は!穴掘って埋まりたい!


しばらく悶え苦しみ気が付いたら眠ってしまっていたあたり単純だなと自分でも思う。


朝、服を着替える時にふと思いつき


「せ、せっかく彼氏が出来たんだしね、もう普通に着てもいいよね!」


半年以上封印していた女の子らしい服に身を包んで謎の感動を味わう。


去年まで普通だったのに、今は生まれ変わったかのような気分だった。

そう考えると彼は白馬に乗った王子様?などと夢見がちなことを思い、小さいから馬に足が届かないかもなどと失礼なことを考えて少し笑ってしまう。


お昼休みにでも聞けばいいやと自分のクラスにいつも通り入ると地味なざわめきが起きる。


「イケメンがイケジョに変わってる!今日は雨!?」


「いや、槍が降るかもしれないぞ!間違いなく何かが起きる前触れだ!」


「君たちは朝から失礼だなぁ!」


相変わらずの賑やかなクラスに溶け込み自分の机に座ってすぐに親友と呼んでもいいくらいに仲のいい友達に話しかけられた。


「どしたのー?久しぶりに女の子らしいかっこしちゃって、好きな男の子でも出来たん?」


「おはよ、好きなっていうかなんていうか、うーん」


なんと返そうか悩んでると教室の外から聞いたことがある声が聞こえて来た。


「白百合先輩いらっしゃいますかー?」


おうふ。話題の張本人がいらっしゃった。


いつも通りの冷やかしに軽く彼氏だと言ってやると(この時点でちょっと浮かれてたのかもしれない)クラスがざわつき、受けだの攻めだの言い始めた。


男の子だということを伝えると男子からは驚愕の声、女子からは歓声と怨嗟の声が巻き起こる。


そりゃそうなる。私だってそうなる。

だってそこらの女の子より可愛いもの。私の三倍は可愛いもの。もの…。


ちょっと泣きたくなったが外に誘われたので一緒についていくと、彼の顔が赤くなってることに気がついた。


そこで気付いた。なんでわざわざ彼氏だと紹介したのかと。

アホなのかと。うん。昨日のことから見てもアホだわ私。


今更恥ずかしくなって2人揃って赤くなりつつ校舎裏に逃げ込むと、彼が口を開いた。


「先輩、昨日から思ってたけど本当にポンコツだなあんた!」


返す言葉もございません。


「普通クラスに紹介します!?なに?彼等は親かなんかなの!?」


「ごめん…」


叫んだせいか息を切らしていたが少し落ち着いたのか


「あーもう、昨日連絡先聞いてなかったから聞きに行っただけなのに酷い辱めを受けました、先輩あとでジュース奢ってくださいね」


「はい、なんなりと…」


なんとなく一瞬無言になって、完全に落ち着いた彼から


「とりあえず、お互いの呼び方決めましょうか。いつまでも先輩だとか君だとか言ってるわけにもいかないですし。俺のことは類でも類君でも早乙女君でもなんでもいいです、先輩のことはなんと呼べば?」


「えっと、好きに呼んでいいよ?あ、でもなんとなく白百合先輩とかは他人行儀過ぎて嫌かなぁ」

「了解しました、じゃあポンコヅカって呼びます。劇団員っぽいし」


「うん、いい……いいわけないよね!なに!?ポンコヅカって、え?なにポンコツと劇団を混ぜたってこと!?」


この子本当に失礼だ!可愛い顔してなんて的確に酷い呼び名をつけるんだ!広まったらどうしてくれる!

「充分なほどにポンコツでしょうよ。まあ冗談はともかく、蓮さんとか適当に呼びます」


相変わらず失礼だがとりあえず普通のところに着地したらしい。となると私は類君と呼ぶのが無難かな?精一杯可愛く見えるようにと注意をしながら


「じゃあ私は類君と呼ぶね。改めてよろしくね類君!」


何故か顔をそらされた。そんなに似合わないだろうか。

いいじゃないか、彼氏っぽい人の前でくらい。
似合わないなんてわかってるんだ、ほっといてくれ。


神様お願いします、今すぐ彼と私を入れ替えろください。
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