ちぐはぐ

稀人

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一章 私立八意学園

憧れ

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私としても確かに憧れという感情はあった。小さな頃、少しマセてきて漠然と憧れ、年を重ねて自分には無理だと現実と折り合いをつけたりもした。


そして今、憧れや夢という感情からも外れ、お伽話というものだと認識していたことが現実に重なった。


そう、いわゆるお姫様抱っこ(?)のような状態からのキス。


相手が自分より小さく年下でなおかつ自分より可愛いというよくわからない付属品も付いているが。


そしてなにより(自分で蒔いた種だが)全校生徒の前である。
扇動した、叫んだ、気持ちをぶつけた、そう、つまるところこの状態から生まれる羞恥心は自業自得、むしろ因果応報。


でも恥ずかしいものは恥ずかしいんだい。


「あの、ね?ここまでやるとはお姉さん思ってなかったからすごく恥ずかしいんだけど」


「蓮さん、僕も恥ずかしいですがあなたのせいです。ここまでやったんですしもう逃がしませんからね」


「馬鹿、逃げないし逃さないし、これからもよろしくねだよ」


「それじゃ、競技の邪魔になってますし離れますか。蓮さんのリレー応援してますからね」


「うん、頑張る」

類君の顔は真っ赤だった。格好つけても隠しきれない彼を見て私の恥ずかしいという感情は霧散して、少しだけ余裕が持てた。

短距離走の続きが始まると運動部の面々が口々に


「リア充爆発しろぉぉぉぉお!!」


と叫びながら全力疾走していた。なんか申し訳ない気持ちになるが、少し浮かれた気分になる。


リア充。リア充ですよ?縁がないと思っていた単語、そしてこのシチュエーション。恥ずかしいとしても女の子的に嬉しくないわけもないじゃないですか。


問題はあとが怖いということくらいだ。クラスでいじられるのは確定、絵里には全力でいじられ続けるだろうし、なによりこのちょっと意地悪な彼氏君がなにもやり返してこないわけもない。


いや、十二分にやり返された気もするけど。


そうこう考えてるうちに短距離走は早々と終わり(嫉妬の力なのか本当に早かった)最後の種目であるリレーがやってきた。


もちろんだが男女別で走るし中澤君とぶつかるようなことはない。


うちのクラスは現在3位リレーで男女共に勝利して1位のクラスが3位以下なら優勝というなかなか厳しい点数だ。まあ思い出作りなのであまり順位は気にしてないが。


それでも、手は抜かず全力で走り切ろうと思う。せっかくいい思い出が出来たし、最後までいい記憶で終わらせたい(コケるとか絶対したくない、間違いなく死ぬまでいじられ続ける)


「蓮さん、頑張ってください。あと、転ばないでくださいね」


「へー?意外だね類君なら転んだら笑ってあげますとかいうと思ってたんだけど、正式な彼女になったら優しくしてくれるのかなー?」

いつもの意趣返しのつもりで軽口を叩くと

「怪我して欲しくないですし、なにより」


「なにより?」


「ポンコツ可愛い蓮さんを見ていいのは僕たち3人だけですから」


「君は変わらないなぁ!」


「変わらないですか、もし変わっても受け入れてくれます?」


「優しく変わるならね!これ以上酷くなったらもういじめだよ!」


「そうですねー。あ、蓮さん今日の放課後お話があるので一緒に帰りましょう」


話が噛み合ってないというか普段のままな私とシリアス気味な類君っていう形になっている気がする。


「ん、わかった。それじゃいつものところで待ち合わせね」


「はい。それじゃ転ばないように頑張ってください、応援してます」


「ありがと、それじゃ行ってくるね」

なんかSFとかバトルファンタジー小説みたいなのだったら死亡フラグになりそうな言葉だなぁなんて思いながらクラスへと向かう。


死亡フラグじゃなきゃ転倒フラグ?全力でへし折らなきゃ。
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