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19 救出
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中に入ると、そこは宿の部屋2部屋分ぐらいの広さはあるものの、雑然とした物置のような場所だった。
一応隅に大きなベッドが置いてあるので、宿泊場所としても使えそうではある。
しかしベッドの上には誰も居ない。
再度サーチをかけると、ヴィーオの弱々しい魔力が、物に溢れた部屋の奥でヒットした。
すぐに駆け寄ると、そこには床の上に拡げられた薄汚れた毛布の上に横たわるヴィーオの姿が在った。
「ヴィーオ! ヴィーオ!!」
あんなに綺麗好きで、しょっちゅ浄化魔法をかけてくれていたヴィーオが、今はすっかり薄汚れていて、髪も髭も伸び放題。しかもボサボサ。
私は躊躇うことなくその体に触れて、肩を強く揺する。
「ヴィーオっ!」
するとようやくノロノロと、目を開けて上体を起こしたヴィーオが、朦朧とした様子の焦点の合わない目で私の顔を見た。
良かった、生きてた・・・
(・・・当たり前か、彼の魔力を感じられてたんだし)
思わずヴィーオに抱きつくと、いつももどかしいほどに優しく触れてきてくれたヴィーオが、今はムギュっと強めの力で抱き返してくれた。
「・・・アリーシャ・・・? ・・・オレ、とうとう幻覚まで見え始めた?
・・・それともこれも・・・アイツ? ・・・これも・・・幻惑・・・??」
何やらぶつぶつと呟きながら、そして今度は胸に貼り付いた私を、逆にぐいぐいと引き離そうとしてくる。
それに抵抗しつつ抱きしめ続けたヴィーオの身体は、すっかり痩せて筋肉も落ちているようだった。
多分彼は、外から“鍵“魔法をかけられたせいで、ずっとここから出られずに居たのだろう。
見回すと、部屋の片隅には“時間停止“魔法が付与された大きな棚があり、そこに溢れるほどの加工肉や果物類が無造作に置かれているのが見えたから、食べ物には困らないはず。・・・なのに、あんまり食べていなかったのかな?
狭い空間の中では運動するのも限られるから、そのせいで筋肉が落ちてしまったのかも。
とりあえず大きな怪我も無くて身体の方は大丈夫そうだけど、彼の魔力がほとんど消えかけているのが問題だった。
ふと、外の結界石に籠められていた“魔素循環停止”の魔法を思い出した。
私たちの魔力は、日々、普通に呼吸することによって大気の中に溢れる魔素を体内に取り込み、魔力として蓄積している。魔物も然り、だ。
なので、この“魔素循環停止“魔法は、魔物を捕まえて拘束するときや、弱らせるときによく使われるものである。
・・・それを人間に対して使うだなんて、一体どこの誰がやったのよっ?!
腹立たしさが止められなかったけど、とりあえず今はヴィーオだ。
私は以前、ファロヴェストのお姉さんから教えてもらった、でも全く使うアテのなかった魔法を試してみることにした。
まず、ヴィーオの頬に自分の頬を擦り寄せる。
私の肌感覚を思い出させる。安心させる。そして馴染ませる。
思惑どおり、ヴォーオは「・・・アリーシャ?」と言いながら頬を擦り付けてきた。
前には綺麗に剃られていて存在しなかった髭が、肌に当たる。でも、程よく伸びているので、痛いということは無い。
私は目を閉じ、“魔力回復“を意図して舌の先にその魔法を乗せ、ヴィーオの口の中に滑り込ませた。
ヴィーオが、反射的に私の舌先を彼の舌で受け止める。
そこに、魔法を流して付与した。
何度も、何度も。
“魔力回復“
“体力回復“
“意識回復“
“精神回復“・・・
ありとあらゆる、思いつく限りの回復魔法を繰り返し繰り返し乗せて、何度も舌を絡める。
魔力回復の為、とは言え、その行為はとても心地良くて・・・。
だけど、ずっとそうしていたいのは山々だったけれど、結界を壊し、扉は開けっぱなしにしていたとは言え、なかなかこの空間の魔素が循環してはくれず・・・。
そのせいで次第に私の魔力ゲージも落ちてきていることに気がついて、仕方なく唇を離した。
閉じていた目を開けると、先程の朦朧とした表情とは打って変わって、すっきりとした、そしてうっとりと濡れた紫の瞳で私を見つめる、ヴィーオの顔があった。
一応隅に大きなベッドが置いてあるので、宿泊場所としても使えそうではある。
しかしベッドの上には誰も居ない。
再度サーチをかけると、ヴィーオの弱々しい魔力が、物に溢れた部屋の奥でヒットした。
すぐに駆け寄ると、そこには床の上に拡げられた薄汚れた毛布の上に横たわるヴィーオの姿が在った。
「ヴィーオ! ヴィーオ!!」
あんなに綺麗好きで、しょっちゅ浄化魔法をかけてくれていたヴィーオが、今はすっかり薄汚れていて、髪も髭も伸び放題。しかもボサボサ。
私は躊躇うことなくその体に触れて、肩を強く揺する。
「ヴィーオっ!」
するとようやくノロノロと、目を開けて上体を起こしたヴィーオが、朦朧とした様子の焦点の合わない目で私の顔を見た。
良かった、生きてた・・・
(・・・当たり前か、彼の魔力を感じられてたんだし)
思わずヴィーオに抱きつくと、いつももどかしいほどに優しく触れてきてくれたヴィーオが、今はムギュっと強めの力で抱き返してくれた。
「・・・アリーシャ・・・? ・・・オレ、とうとう幻覚まで見え始めた?
・・・それともこれも・・・アイツ? ・・・これも・・・幻惑・・・??」
何やらぶつぶつと呟きながら、そして今度は胸に貼り付いた私を、逆にぐいぐいと引き離そうとしてくる。
それに抵抗しつつ抱きしめ続けたヴィーオの身体は、すっかり痩せて筋肉も落ちているようだった。
多分彼は、外から“鍵“魔法をかけられたせいで、ずっとここから出られずに居たのだろう。
見回すと、部屋の片隅には“時間停止“魔法が付与された大きな棚があり、そこに溢れるほどの加工肉や果物類が無造作に置かれているのが見えたから、食べ物には困らないはず。・・・なのに、あんまり食べていなかったのかな?
狭い空間の中では運動するのも限られるから、そのせいで筋肉が落ちてしまったのかも。
とりあえず大きな怪我も無くて身体の方は大丈夫そうだけど、彼の魔力がほとんど消えかけているのが問題だった。
ふと、外の結界石に籠められていた“魔素循環停止”の魔法を思い出した。
私たちの魔力は、日々、普通に呼吸することによって大気の中に溢れる魔素を体内に取り込み、魔力として蓄積している。魔物も然り、だ。
なので、この“魔素循環停止“魔法は、魔物を捕まえて拘束するときや、弱らせるときによく使われるものである。
・・・それを人間に対して使うだなんて、一体どこの誰がやったのよっ?!
腹立たしさが止められなかったけど、とりあえず今はヴィーオだ。
私は以前、ファロヴェストのお姉さんから教えてもらった、でも全く使うアテのなかった魔法を試してみることにした。
まず、ヴィーオの頬に自分の頬を擦り寄せる。
私の肌感覚を思い出させる。安心させる。そして馴染ませる。
思惑どおり、ヴォーオは「・・・アリーシャ?」と言いながら頬を擦り付けてきた。
前には綺麗に剃られていて存在しなかった髭が、肌に当たる。でも、程よく伸びているので、痛いということは無い。
私は目を閉じ、“魔力回復“を意図して舌の先にその魔法を乗せ、ヴィーオの口の中に滑り込ませた。
ヴィーオが、反射的に私の舌先を彼の舌で受け止める。
そこに、魔法を流して付与した。
何度も、何度も。
“魔力回復“
“体力回復“
“意識回復“
“精神回復“・・・
ありとあらゆる、思いつく限りの回復魔法を繰り返し繰り返し乗せて、何度も舌を絡める。
魔力回復の為、とは言え、その行為はとても心地良くて・・・。
だけど、ずっとそうしていたいのは山々だったけれど、結界を壊し、扉は開けっぱなしにしていたとは言え、なかなかこの空間の魔素が循環してはくれず・・・。
そのせいで次第に私の魔力ゲージも落ちてきていることに気がついて、仕方なく唇を離した。
閉じていた目を開けると、先程の朦朧とした表情とは打って変わって、すっきりとした、そしてうっとりと濡れた紫の瞳で私を見つめる、ヴィーオの顔があった。
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