【完結】此処ではない何処かで《此処はフリーセックスが基本の世界(汗)》

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20 Side ヴィーオ① (危険な依頼)

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ファロヴェストでアリーシャと離れてから、オレは故郷の街、アースラ大陸のエスタスラで頼まれていた依頼をこなすべく、急いでポルトノルドの北東に広がるサイガーと呼ばれる森林地帯を目指した。

そこに棲むという、火喰い竜の“ツノ“を手に入れるのが。目的だ。

このツノに護符魔法を付与したものが、エスタスラでは御守りとして重宝されている。
アースラ大陸でもはるか西方でその存在が確認されているが、昔乱獲されたことがあるとかで生息数が激減している為、現在は狩猟も捕獲も禁止されていて手に入らない。
交易先のポルトノルドからも一定数は入ってくるのだが、それでもやはり人気すぎて手に入れるのが難しいのだと言う。

「身重のパートナーのために、どうしても御守りを手に入れたいんだ」

と言う友人の為に、ちょうど他にもいくつかマヴェーラ大陸での用事を抱えていたオレが、ついでに調達してくることにしたのだ。


サイガーに向かう途中のキャンプ地でたまたまポルトノルドの年若い冒険者に出会い、『強い魔物が出た時にはオレが対応すること』を条件に、運良く火喰い竜の生息地まで案内してもらえることになった。

「ピルト」と名乗った彼は、冒険者とは言え見たところまだ青年というには若いといった風貌で、聞けばやはりまだ駆け出しだとのこと。けれど、火喰い竜のツノの採取には前に何度か行ったことがあるから場所は分かると言うので、お願いしたのだ。



マヴェーラ大陸の気候は温暖で、どこに行っても広葉樹が生えていた。
しかしだいぶ北の方まで来たせいか、今は空気が少しひんやりとしていて、針葉樹が多くなって来ている。この木々がすべて針葉樹に変わったら、そこがサイガーと呼ばれる森林地帯だった。

“火喰い竜”と聞かされて大きな竜を想像していたが、今のところその姿は見えない。
ピルトが「こっちこっち」と軽やかな足取りで先導してくれるので付いて行く。
あたりには木々がまばらに生え、地面には朽ちた木々が転がっている。土はフカフカとしていて、あちこちに小さな色とりどりの野花が咲いている。静かに耳を澄ますと、鳥のさえずりや小動物たちの微かな気配も感じられた。
自然の豊かな大地だった。

「で、火喰い竜はどこに?」

と訊くと

「あそこだよ。ほら、あそこにも、・・・ここにも」

とピルトがあちらこちらへと指を差し・・・。

言われて視線を向けると、そこに居たのはオレの身長の半分ほどの体長の、大きな茶色いトカゲだった。
その保護色ゆえに今迄気が付かなかったが、あたりを見回してみると、木の陰だとか雑草の密集したそばだとかにたくさん居て、皆のんびりと目を閉じている。

「アレが?」

くらくらとしためまいを覚えながら問う。

「うん、アレが。・・・“火喰い竜”だなんて怖くて強そうな名前が付いてるけど、大人しくて人も襲わないから安心して大丈夫だよ」

そう言って、白い歯をニカッと見せながらピルトが笑った。


「ちょっと見ててね」

と言って、ピルトが指先に小さな炎を作ると、それをフッという息とともに少し遠くの、日が当たって乾いた地面に飛ばす。
すると、ボオッという音とともに、勢いよく炎が燃え上がる。
「一体何を」と問うよりも早く、周囲に居た火喰い竜たちがものすごい勢いでそこに集まり、燃えている地面の木っ端ごと、奪い合うように食べ始めた。

竜たちは、普段はキノコや木の実、柔らかい雑草や木の枝などを食べているらしいのだが、たまに雷やら自然発火などで火事が起こると、こうして喜んでその火種を食べまくるとのこと。
舌が熱さに強くて、しかも火で焦げた草木が大好物らしいのだ。

そのおかげで、永いことこの広大なサイガー森林地帯も大きな火事に焼かれることなく保たれ続けているとのことなので、これも自然の采配なのかもしれない。


「ただー、火喰い竜のツノって、なかなか生えてこないんだよね。元々生えない個体も居るらしいし」

そう言ってピルトはキョロキョロと地面を探し始める。
確かに、その辺りにたくさんの火喰い竜が居るものの、ツノらしきものを生やした個体はパッと見、見当たらない。

しばらくして「あったよー!」と声を上げながら、ピルトが駆け寄ってきた。
そうして見せてくれたのは、ピルトの親指ぐらいの太さと長さの、少し湾曲したベージュ色のツノだった。

火喰い竜の古くなったツノは根元から自然と落ちるらしい。
それを探すと良い、と言われ、オレも周辺を探してみることにする。

先程まで火料理に興じていた竜たちも、今はまた大人しく目を閉じていた。

なかなかツノは見つからなかったが、代わりに頭のてっぺんにツノを1本生やした個体を見つけたので、ピルトを呼ぶ。
するとピルトは「おおっ、珍しい!」と喜びながら、ツノの取り方を教えてくれたので、早速試してみることにした。


ツノの先に指を当てながら、ゆっくりと“根本から折れる”とイメージして魔法を流す。
・・・うまく出来ない。

オレは基本的な生活魔法以外はあまり魔法は得意ではないのだ・・・。

それを見ていたピルトに「“魔法で髭を剃る“ようなイメージで良いと思う」とアドバイスされたのでやってみると、今度はするんとツノが落ちた。慌てて拾う。

これだけされても、当の火喰い竜は目を閉じて眠ったままだ。
その皮を防具にする為にと乱獲されて絶滅しかけるのも、当たり前なのかもしれない。



それからしばらく、ふたりでツノを探して拾い集めた。
そして日が傾き始めた頃に火喰い竜の生息地を後にして、ピルトとふたりで糧食を齧りながらポルトノルドを目指した。

ちょうど夕食の時分に街の端の飲食店街のあたりに辿り着いたので、お礼を兼ねてポルトに夕食を奢る。
そこでお腹もいっぱいになったところで、お互いが拾ったツノを見せ合い、互いの欲しいものを交換した。オレが初めて自分で落としたツノは、ポルトに言われてオレ自身がキープすることにした。

ついでにマジックバッグの中に入れっぱなしになっていた、アースラ大陸の特産品なんかも出して見せる。
案内の対価としてポルトが選んだのは、アースラでしか採れないフルーツをいくつかと、魔物の皮を1枚、だった。
「もっと取って」と言っても、ピルトは

「これで充分だよ。火喰い竜のツノも手に入ったしね。これをアクセサリーに加工すると、結構高く引き取ってもらえるから、これだけでも嬉しいぐらいなんだ。
最近サイガーにちょっと面倒な魔物が迷い込んでるって言う目撃情報があって、怖くてボクひとりでは採取に行けずにいたから、今回ヴィーオさんのガイドを出来て逆にラッキーだったよ」

と言って、笑いながら固辞した。
そんな対価交換の後、オレたちは店の前で別れた。


空には日の入り後のキレイな夕焼けが広がっていた。
まだアースラ大陸に渡る定期船に間に合う時間だったので、オレは港へと急いだ。

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