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腹黒宰相はゲスの極み。
しおりを挟む馬車の中で女性の話を聞きながら、城下町の東門へ向かう。道中、ソイルモー牛が群れでいたので、弓を取り出しやっつける。コイツはワイバーン退治へ向かう道中で、母さんが草むらに角が見え隠れすると騒いだ魔物だ。牛系の魔物で、土塊の多い洞窟を住みかとする。日中は餌を探しに、群れで広い所にいるので狩りやすい。
馬車を停めて貰い、仕止めた獲物を次々と拾い集める。これは母さんにハンバーグにして貰おう。食事処でもミートソースにコロッケにメンチカツ等々。デカくカットすればステーキにもなる優れものだ。
そうだ!これから話し合うなら面倒だから、ギルドで解体して貰おうか?肉だけ戻して貰い、次いでに出た角や皮や魔石を買い取って貰おう。ミンチ肉は魔法で出来るからね。
こんな時本当に、ギルドがお隣で良かったと思うよね。
東門がみえてきた。全面オープンし機能の全てを回復させた東門は、商隊やら冒険者やらで日々混雑している。簡単にだが入門検査も有るため、一般人なら30分待ちもざらだ。しかしギルドの発行するプラチナカード!商業、冒険者どちらも共通!これが有れば、商店街脇の各ギルドに繋がる特別な入口から入れるのだ!
但しアーケード内への直通通路は、プラチナ持ちでも出店舗限定。
プラチナカードは商業ギルドに登録なら、出店舗ランクB以上。冒険者ギルドも同じくBランク以上。商業ギルドの年会費は、ランクにより決定する。ランクは最低Eランクから、最高のAランク。年度末に更新される。これらは冒険者ギルドも同様だ。但しランクは、こなす依頼や実力や試験によって決定する。またAランクの上に、Sランクがある。所謂スペシャルランク。勇者の俺は勿論Sランクだよ。
勿論、我が母さんのお食事処は、食事処の売り上げだけでAランクだ。しかし収入はそれだけではない。東門前商店街からも、家賃収入その他が入る。
宿泊施設や特別講習会にイベント等々からの収入である。
因みに宿の方の人材は、全て商業ギルドを通している。元々経営なんてしたことの無い俺達。その点商業ギルドなら信用がある。ぼったくられそうになったがな!その為、商業ギルドから人材を派遣して貰う形にした。特に孤児院の子供達。宿の仕事等はした事の無いものばかり。その点、商業ギルドはしっかりしていた。人材を育成しながら派遣する。男の子は稼ぎの良い冒険者になる率が高い。女の子は他の仕事を探すが、やはり出来る仕事は少ない。その為冒険者になる率が高くなる。そしてやはり死亡率も高く、討伐は苦手な事が多く稼ぎも少ない。また定期的な収入が見込めない。一般的な商業施設は、何処も家族経営が多い為だ。
つまり商業ギルドは、人材派遣で更なる利を得られる。宿泊所は人材を安心して任せられ、薄利多売だが楽になる。
それらを総合してのランクなので、全てを考慮したらAランクではすまなくなった。
よって母さんは、お食事処としての個別登録を解除した。かわりに東門前商店街として登録。これは卸売業や貴族の屋敷の御用商人の様な、大商会と同等のSランク。つまり冒険者ギルドと同じく、プリズムカードを戴いた。BとAがプラチナカード。Sランクがプリズムカード。まあカードの色が違うだけだが、ギルドカードは全国的に統一されている。冒険者ギルドと商業ギルド、通常ならどちらか1つに登録する。だが両方登録する事も可能だ。両方の会費と義務を支払えば良いだけ。俺と母さんは両方に登録している。俺達のプリズムカード各自1枚。この1枚で、冒険者ギルドも商業ギルドも利用出来る。両ギルドを介した内容が、このカードに情報として詰まっている。まるでハイパーコンピューターの様だ。これらが魔法で補われている。剣と魔法とファンタジー。本当に不思議な世界だよな。
つまり!これ1枚で基本的にどこの国でも身分証明書になり、それぞれのギルドの恩恵にあずかれる訳よ。
つまり同様の優遇を他国の人間も受けられる。また逆もしかりだ。正体隠したくても、カード見られたら、ちーん。
てな訳で、俺はプリズムの冒険者カードを見せる。女性と護衛2人を少し待たせて、冒険者ギルドで解体その他を依頼する。そのままお隣のお食事処へ向かう。流石に料理教室は終了していた。俺は母さんに声をかけ、応接室へ3人を案内した。護衛の2人は勿論別のソファーだ。周囲には遮音の魔法をかけている。
あ!ワンコ居た!
ソファーで寝てやがる…。
おれは母さんに話をし、大きなタライにじゃが芋を入れ水を張って貰った。
「おい起きろ!ワンコ!俺達はこれから大事な話がある。貴様はこの中の芋を全部剥け。勿論芽もくり貫けよ。決して勇者に世話になってる等の、ホラを吹いたからでは無い!コロッケ旨いぞ。パンに挟んでも最高だ。夕食の為だ。頑張れ!」
「疲れたのだ…。」
「はあ?昼食食べたんだろ?なら働け!デザート抜くか?今日はアンミツだぞ?因みに俺のインベントリには、バニラアイスが入っている。まだ試作品だぞ?アンコにアイスを混ぜたら…「どけ。むく。」至高の…。」
「ふーん…?」
ワンコは苦虫を噛み潰した様な顔をしている。嫌々だが剥き出した。しかしパンに挟んでの件で喉を鳴らしたのは見逃さなかったからな!しかしヘタだな。芋が無くなるし、手を切りそうだ。
「ほら!これ使えよ。」
皮剥き器をを複製しといて良かったよ。母さんの持ち込んだ、緊急避難袋に入ってた。
へえー。これなら意外に上手いじゃない。てっきり使えないかと思ったよ。
では頑張ってくれ。
全く余計なことしやがって!何となくワンコはこの女性の事を知ってた感じがするんだよな。証拠は無いし、あくまでも俺の勘だ。だが!俺の直感は当たるのだ!この直感で、生死の境目を分けた事も有るんだ。
だって。何故勇者に世話になってると言う必要が有るんだ?その場に俺は居なかった。因みに東門前商店街は、母さんがオーナーだ。勇者で有る俺が母さんの息子なのは公然の秘密だ。別に隠してる訳では無い。知られても構わない。そう。知ってる人は知ってる。両ギルド関係者達何かがそうだ。
腹黒宰相風に言うならば、聞かれないからいわないんです。周囲は勝手に姉弟だと思っています。てな感じなんだよ!だから勇者にってのは変なんだ!普通なら母さんに世話になってると言うべきだろ?
あやしい。
絶対にこのワンコは不審者だ!
俺にとってな!
なーんて考え事していたら、何故か母さんと女性が、手を握り合い号泣してた。母さん?何時の間にソファーに座って話をしてたの?しかもその机の上のお菓子の山は何よ?
おーい。みんな中身無いじゃん。俺が一生懸命、チマチマ複製してる日本のお菓子がー!
「母さんのバカ!ミカポン複製するのも大変なんだぞ!スナック菓子とかチョコは、貯まるまで食べないでよー!ポテトチップかポテトフライで我慢して!あー!飴玉もダメー!」
大丈夫よ。必ず1つは残してるから?それにこれ等は私が持ち込んだんじゃ無いって?それは解るよ!でも原型が無いと、詳しい材料とか解らなくなるんだ。すると失敗したり、魔力消費がはねあがるんだよ!だからポテトチップとか、ポップコーン何かはこちらで作ったんだから!
「芋終わらない。食べたい。」
「ダメです!」
項垂れるワンコ。しかし知らぬ。
「母さん?話は済んじゃったみたいだね。俺は2人に任せるよ。」
「祐太郎。あのね。ソニアさんが、1週間後の誕生日会に招いてくれるそうよ。」
「勇者様。私がソニアです。お話しを聞いて戴いたのに、名乗らず申し訳ありません。」
確かに聞いてない。つまり俺もまだ名乗っていない。
「来週は先代勇者の誕生日なの。体調も良くなったので、身内だけでパーティーをするそうよ。」
参加者は、宰相、先代勇者、ソニアさん、赤ちゃん、魔王討伐メンバーの4人。+その養父母3組。宰相の奥さんは既に死亡。養父母達は宰相の親戚で、子供に恵まれなかった夫婦だ。先代勇者がハーレムで作った子だと、宰相に言われているとの事。
本当にあの宰相は救いようがないな。己の仕業を勇者の色事で誤魔化すのか?マジでゲスの極みだよ。
「養父母達は良い人ばかりよ。だからこそ、あの人が悪く思われてるのが悔しかった。お願いします。父を皆の前で断罪してください。」
「そうよ!宰相は今だに祐太郎に謝ってないんだから!」
母さん。自分も謝られて無いよ。そうだよな。慰謝料で全てが片付いた訳では無いんだよな。
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「良し!なら皆で宰相をギャフンと言わせようぜ!」
「「「おー!!!」」」
おい!何故ワンコも声を上げてるんだ!お前はじゃが芋剥いてろ!
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