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⑥・それぞれの未来。
しおりを挟む一ヶ月後に無事に婚姻式を終えた二人。一年後には男児が誕生。翌年には男女の双子。その後間をあけ、全部で三男二女に恵まれた。
「ご無沙汰しております。乳母を任されました。どうぞよろしくお願いいたします」
双子の乳母として、もと侯爵令嬢が雇われた。彼女は薬が完璧に抜けた後王宮で侍女見習いと働き、やがて正式な侍女に昇格していた。そこで親善に訪れていた、この国の伯爵子息と懇意になり結婚。この度第一子を出産したため、王宮で募集していた乳母に応募していた。伯爵子息は嫡男のため、現在の彼女は次期伯爵婦人である。
「まあ、あなたは……遅ればせながらだけど、ご結婚おめでとう。出産もなされたのね? あなたに会えて嬉しいわ。双子ちゃんで大変だとは思うけど、よろしくお願いするわ」
「はい! 頑張ります! 」
お城で外交を任されている伯爵子息の、奥様となったもと侯爵令嬢。乳母の仕事をやり終えたあとは、王妃つき侍女として働き、定年まで勤めあげた。理解のある旦那様と子どもたちに囲まれ、妄想ではない本物の幸せを掴んだという。
「ご無沙汰しております。我が国と貴国との窓口を任され、親善大使として赴任致しました。どうぞよろしくお願いいたします」
王となったもと隣国の第三王子は、王妃となったもと公爵令嬢とともに、国を安定させるために奔走した。その努力は確実に実を結び、近隣諸国とも友好を深めている。さらなる友好の第一歩として、国内に各国の親善大使専用の屋敷を建設。駐在する各国の大使には、ある程度の特権を与え、両国にためになる活動を支援した。これは各国の文化などを学び、交流を深める絶好の機会となった。
「ほう、君か……元気そうでなによりだ。では早速だが商談だ。ようやく我が国のルビー鉱山の採掘が軌道に乗った。君の国では新規でアクセサリー加工を始めたよな? ルビーの輸入を王と侯爵にに打診してみてくれ。交渉の場を整えることは可能だろうか? 」
内乱により人手不足で閉山されていた、宝石鉱山での採掘が再開された。その掘り出された鉱石は磨かれ、通常ならば裸石として、アクセサリーなどに加工される。隣国の侯爵領では、近年アクセサリーの加工を始めていた。前侯爵たちが断罪され新しく侯爵となった息子が、貧困に悩む領民のためにと始めたのだ。
とくに山間部での強制労働からは解放はされたが、行き場を無くした人々の働き先に悩んだ。その解決策として、問題となった薬の原料である薬草を育てていた山間部に、宝石加工所を作っていた。
「それは助かります。侯爵領では、鉱石の産出が激減していまして、かなり輸入に頼っています。とくにルビーは産出しませんし、産出国が遠いため高価になります。こちらならば近いため、運送費も抑えられます。しかし良いのですか? 国内での加工も可能なのでは? 」
「アクセサリーの加工場はいくつかあるが、再開するつもりはない。内乱で技術者がほとんど死亡した。新しく技術者を育てるにも、他国から引き抜くにも資金がかかる。ならば裸石への研磨だけで輸出した方が良い。加工場はすでに研磨場に建て替えている」
ならばすぐにでも話をつけ、交渉の場を整えると伝えるもと侯爵子息。二人は握手をし、商談の前段階は整った。
「そう言えば君は伯爵になったんだよな? 文官としても優秀だったと聞く。一文官から親善大使。頑張ったな。天国の母君も喜んでいるだろう。これからも両国の架け橋となって欲しい。よろしく頼む」
「はい! 頑張ります! 」
もと侯爵子息は薬が抜けた後、一文官見習いとして王宮で働いていた。彼は仕事のない日は蔵書室へ通い、寝る間も惜しみ勉学に励んだ。その蔵書室で公爵令嬢、現在の隣国の王妃の実兄と出会う。始まりは己のしでかしたことの謝罪からだった。しかしもと侯爵子息の勤勉さと優秀さに、宰相補佐をしていた王妃の実兄は感じ入ってしまう。そのため親善大使にと抜擢した。
しかし他国と渡り合うには、やはり貴族の地位が必要となる。彼は侯爵家の後見は受けているが、長子ではないため貴族位は継げない。そのため王妃の実兄は己の父親である公爵に頼み込み、冬眠させていた貴族位の一つを、もと侯爵子息に送ったのだ。それが子爵位となる。
もと侯爵子息は子爵となり、宰相補佐の下でがむしゃらに働いた。親善大使としても近隣諸国を飛び回り、数々の商談をまとめ、また異文化交流を果たし進めた。これらはさらなる国の発展へと繋がり、多大な貢献と認められた。そして今回は親善大使としての隣国への派遣。各国の親善大使との交流もある。その労力を加味し、国から伯爵位への昇格を認められたのである。
伯爵となったもと侯爵子息は、定年まで親善大使として、両国の間を飛び回った。そんな多忙な日々の中、自国の王宮で侍女として働く一人の子爵令嬢と出会う。彼女は早くに母親を亡くし、後妻と義理の兄、そして半分血の繋がる妹にまで暴力をふるわれていた。ある日とうとう義兄に襲われそうになり逃げ出す様に家を出奔。王宮で侍女として働いていた。
彼女は自分を助けもせず見て見ぬふりをする父親と乱暴な義兄により、男性に恐怖心を抱いていた。彼はそんな彼女に根気よく付き合い己を受け入れてくれるのを気長に待っていた。そして二人はやがて結ばれ婚姻し、両国の架け橋として夫婦で親善大使を勤めあげた。そんな二人は可愛い子どもたちにも恵まれた。定年後には隣国へ戻り、妄想ではない本物の幸せを掴んだという。
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