【完】婚約破棄までの１週間はテンプレ三昧。私も幸せになりたい！in 異世界。

【ストレチア国お城編。婚約破棄で皆幸福】

●お城7.5日目。

 
 朝起きた。まだ外は薄暗い。昨晩書いた数通の手紙を机の上に置く。アニーさんとのお買い物時に購入した服に着替える。お洒落着のワンピースでは無く、庶民の着る洋服だ。カジュアルなパンツルックので、見た目男性用にも見える。セミロングの髪は結い上げ帽子を被る。だぶっとしたパーカーを羽織れば男性にも見えなくはないだろう。荷物は全てウェストポーチの中だ。所謂テンプレのインベントリって奴ね。魔法はチートだから、本を読めば殆んど使えるのよ。昨日のパーティーの演出も全て魔法だよ。中々様になってたよね？

 はむちゅは既に小鳥になって肩に乗ってる。

 アラケルは…。

 《アラケル！いい加減にしないと置いてくよ！どうしてそう頑固なの？ごめんなさいですむでしょ？》

 〈・・・・・。〉

 まさか死んでないよね？ツンツンすると固い！慌てて掬い上げるがピクリとも動かない。でもトクトク言ってる。死んでないね。まさか冬眠したの？

 ハムスターは生命維持の出来ぬ極限状態になると、冬眠状態に入ってしまう。しかし冬眠は野生の頃の名残り。ペットのハムスターの冬眠は、殆んどがやがて死に至る。アラケルはどうなの？

 《このバカ！意地で死んでどうするの！ほら魔力線繋いだわよ！起きなさいよ！ねえ起きてよ！魔力足りないならキスしてあげるわよ！》

 ピクリ・・・。

 〈リョウ？魔力線を繋げば魔力は回ります。暫くすれば回復しますよ。キスする必要は有りません。寝た振りかもしれません。それに聖獣は死にませんよ。兎も角日が上る前に城を出ましょう。〉

 そうなの？寝た振りなら怒るよ？私はアラケルをハンカチに包み、胸のポケットに入れた。ここなら暖かいだろう。では気を取り直して出発だ！

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 お城の脱出ルートはこんな感じ。先ずは屋上まで上る。これは城の奥に有る螺旋階段で一直線だ。私は屋上には行った事が無い。しかしおばちゃま情報では、螺旋階段で上ると展望台の様になって居る。ぐるりと城の周囲を見渡せ、遠くに城下町入口も見えるそうだ。見えるなら城下町まで瞬間移動出来ないかな？と言う算段だ。ダメなら城の外に移動し、小刻みに進む。普通に歩いて城下町入口までまる１日。入口から入らなくて良いなら、城の少し先から忍び込めるんだけどね。入口から手続きして入らないと、後々面倒な事になるそう。まあ何とかなるだろう。因みに後は泊まる所さえ確保すれば暫くは暮らせる。アニーさんとの買い物のおかげ。洋服屋のおばちゃんと息子さんのお店で、殆んど揃えて貰った。ただこの世界のお金が無い。資金稼ぎが当面の課題だ。これはギルドへ行くつもりだよ。

 部屋の扉を開けたらビックリ！アニーが居た。アニーは何も言わず、私に袋を手渡した。中を見ると金貨と宝石が入ってた。

 〈多分こうなると思ったの。これは餞別。私のお小遣いにもならない額だから貰って。また絶対に会いたい。忘れないで会いに来てね。〉

 《当たり前じゃ無い。アニーに何か有ったら直ぐに来るわ。餞別遠慮しないわよ。お金が無くて心細かったの。嬉しい。お部屋にお手紙が有るの。ルードが見付けてから貰って。来てくれて有り難う。》

 〈ルードには黙って行くの？〉

 《言う必要無いでしょ？護衛対象が居なくなれば騎士団に戻るだけじゃない。ん？私が逃げた責任取らされちゃうかしら？》

 〈それは大丈夫だと思う。ルード言って無いんだね。兎も角気を付けて！ケガとかしないでよ！〉

 ん～。アニーってばツンデレさん。可愛い～。

 《大丈夫！落ち着いたら連絡するよ。多分ビックリするよ。あ！これあげる。キャラメルとブラウニーって言うお菓子だよ。私の手作りだからね。》

 〈有り難う。手作り大丈夫かしら？今回はリョウには死ぬほどビックリさせられたわよ。〉

 《大丈夫よ！》

 私たちはブンブン握手をして別れた。
 
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 テクテク歩き、漸く螺旋階段が見えてきた。するといきなり、行く手を誰かに阻まれた。誰？

 ビックリ！アニーの友達を呼んでくれたおばちゃま達だ。え？アニーさんから聞いて急いで来たの？お弁当と紹介状？おばちゃま達はパーティーの裏方をしていて、私が聖女だと知った。やり取りの一部始終を見て居たそうだ。

 〈その紹介状は城下のギルマスと門番宛だよ。ギルマスは信用できるから、出来れば全て話して頼りなさい。門番のは、この人は信用できるからタダで通せとの推薦状。身分証無いと審査に時間かかる。聖女だと内緒にするんだろ？下手したら町に入れない。身分証はギルドで作れる。ギルマスに頼めば、不味いステータスも大丈夫。隠して作成してくれる。あんたは良い子過ぎるね。おかけでアニーは幸せになれる。あんたもならなくちゃね。昨日のパフォーマンスで近隣諸国のお偉いさんまで聖女に夢中だ。ソイツがついてるなら大丈夫かね？多分狙われるよ。気を付けな。〉

 ん？はむちゅがピッピと鳴いた。

 おばちゃま達！心配してくれて有り難う！あ！キャラメルとブラウニーをどうぞ！何故か減らないんだよ。ポケット叩かなくても、無くなった分が増えるんだ。不思議だ。これがこの世界の常識で無ければ、まあ神様のオマケか何かだろう。おばちゃま達に貰ったお弁当をしまう。さあ螺旋階段を上ろう。吹き抜けで無く柱をグルグル。先が見えないタイプなのが残念だ。そろそろ屋上では綺麗な朝日が拝めるかもしれないね。振り返りおばちゃま達に大きく手を振った。

 階段を上りきると、綺麗な朝焼けだ。雲は水色では無いから雨にはならないかな？さあお城を脱出だ！新しい生活のスタートだよ！

 ん？アラケル起きた？

 《さあ行くよ！城下へレッツゴー！》

 私の姿は屋上から消え去った。

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 残念！城下町までは少し距離が有るね。残念ながら城下町の入口までは無理だった。でも見える距離だ。瞬間移動も良いけど、まだ朝も早い。異世界を散歩しながら行こう。さあアラケル歩くわよ！さっきからモゾモゾしてるわよね？あなたはワンコになりなさい。良し良し良い子ね。

 《はい。お手！おかわり！ん～おりこうさん！ラスに昇格してあげよう。はいこれ食べる？キャラメルはご褒美ね。はむちゅはブラウニー食べる？ツンツンつつくの可愛い～。》

 少し歩くと湖発見！湖畔でおばちゃま達から貰ったお弁当を食べた。ん？お弁当も増えた！増えると言うか、食べると再生されてる？袋から出しても食べなきゃ増えないね。つまりこの巾着袋が原因だね。
 
 良く解らないけど神様のおかげだろう。

 《神様有り難う～。》

 私の異世界生活はこれからが本番だ。

 そう言えば、はむちゅとラスの聖獣姿ってのは別に有るの？人間界では人型。動物姿は変幻自在なのよね？もしかして巨大なモフモフ！？

 エヘヘ。楽しみだわ。ジュルリ…。
 
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