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【閑話。another side】

:聖女様は最強よ!〔アニーside〕

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 私はアニー。この国の公爵家の長女。第二王子クリス様の婚約者だ。我が国の成人は15才。王族や貴族の子供達は、殆んどが10才前後で婚約し、成人後の15才~18才で結婚する。

 私は10才の時に3才年上のクリス王子と婚約した。私とクリス王子とは幼馴染み。私は小さい頃から、優しくて素敵なクリス王子が大好きだった。だから婚約は本当に嬉しかった。

 実は最初はクリス王子の、兄の王太子様の婚約者の予定だった。しかし神から神託が下り、近い内に聖女が異世界より遣わされると言う。ならば次期王妃の座は空席に。お偉方の考えにより、急遽変更になったのだ。私は正直嬉しかった。でもクリス王子はどうなのだろう?王子の周りには沢山の女性が居た。多重婚が認められてるこの国では、一夫多妻が多い。特に王族はハーレムを作り、後宮を持つ者も少なくない。でも正妃は私だ。それだけが私の拠り所。初めての顔合わせをドキドキして迎えた。

 *****

 しかしそんな杞憂は直ぐに晴れた。クリス王子は可愛らしい私を小さい頃から好きだったと言ってくれた。会える日には優しいキスに贈り物。本当に幸せだった。しかしある日私は、クリス王子が女性と半裸でキスしてる場に居合わせてしまう。流石の私にも何をして居たのかは理解できた。呆然とする私にクリス王子は囁く。

 〈アニーごめん。君が大好き過ぎて手が出せない。だってまだ子供だろ?君が怖がりそうで触れられ無かった。大丈夫。君以外は割り切った相手だ。相手も同じ。子供はアニーの子しか欲しくない。〉

 私が子供だから?なら子供じゃ無ければ良いの?怖がらなきゃ触れてくれるの?他の人には触れないの?確かにクリスは既に成人してる。性的な興味も有るのだろう。だから他の人と…。私は勇気を出してクリスにしがみついた。

 〈他の他人を抱かないで。私は怖くない。クリスになら何をされても嬉しい。〉

 その夜、私はクリス王子に抱かれた。それからは殆んど毎日の様に閨に呼ばれた。私はあらゆる事を試された。ハッキリ言ってクリス王子は変態だと思う。でも私が嫌がれば、また違う人の所へ行ってしまう。それだけは嫌で要求を飲み続けた。

 しかしクリス王子は、隠れて他の人と遊んでた。誘われると断れなかった。優しいのは優柔不断でも有った。でも愛してるのはアニーだけ。正妃になって僕の子を産んでくれ。と言われる。怒れどもついつい甘い言葉にほだされてしまう。すると更に行為はエスカレートする。私を呼ぶ時抱くのは私だけだ。しかし第3者を同時に侍らせるまでになって居た。でも私以外には本気にならない。私はその言葉を信じて居た。

 *****

 聖女召喚の前日、私はクリス王子と共に王様に呼び出された。王様の話によると、聖女召喚を反対して居た王太子様が失踪されたとの事。その為一時的だが、召喚された聖女の婚約者をクリス王子にする。これはあくまでも表向きの事。私との婚約は解消にはならない。心配はいらないとの事だった。クリス王子も心配しないでと頭を撫でてくれた。

 召喚の儀式は無事に終了した。クリス王子は私を抱きしめキスしながら、男みたいなデカい奴が出てきた。胸の谷間すら無いと憤慨してる。聖女も生意気で、いつの間にか逃げ出してたそう。でも仮の婚約でしょ?気にする事無いんじゃ無いの?しかし事態は翌日急展開した。

 私はクリス王子と共に、何故か宰相様に呼び出された。呼び出された部屋には、私達が婚約の儀をした際の魔術師が居た。到着すると問答無用に腕を取られ魔術師により、クリスと私の腕輪は外された。

 〈アニーには悪いが王命だ。聖女とクリス王子の婚約を正式な物とする。そなたは2人の婚姻後、側室として後宮入りして貰う。王子も了承済みだ。〉

 ばつが悪そうに目を反らすクリス王子。どうして?昨日と言ってる事が全く違うじゃ無い!

 〈クリス王子…。どうして?〉

 〈すまない。アニーは大好きだ。気持ちは変わらない。ただ兄上が見付からなければ、僕が結婚するしか無いんだ…。〉

 なら何で一時的に何てしたの!それにまだみつかるかも知れないじゃ無い。まさか聖女がクリスを気にいって誘惑したの?それで強引に婚約したのね!私は何も考えられなくなり、その場を走り去った。

 廊下を走る!淑女のマナー何て知ったこっちゃ無い。すると前から知った顔が歩いてくる。あれって多分ルードよね?彼は確か聖女の護衛をしてた筈。なら後ろの女が聖女なのね。

 ・・・・・。

 ちょっと!クリスの言ってたのと全然違うじゃ無い。確かに女性にしては少し背は高いけど、バカでかい訳じゃない。男みたいって言うけど、凛とした中性的な美人だ。胸だって凄いボリュームじゃない!あの胸フェチめ!もしかしなくてもこれが原因なの?

 〈こら!そこのデカパイ女!私のクリスをたぶらかさないでよ!クリスは私のなの!私もクリスのものよ。貴女の入る隙間は無いわ!〉

 私はついつい怒鳴り付けてしまった。きょとんとする聖女。聞いてビックリ!聖女はクリス王子の名前すら知らなかった。しかも気さくで話易い。一方的に怒鳴り付けた私を怒りもせず、クリス王子の目を覚まさせる!とまで言ってくれる。一体どうして?私は彼女の強さが羨ましかった。

 *****

 そして彼女は約束通りにやってのけてくれた。パーティー会場に居た人々は、彼女の素晴しさと神々しさに皆目を見張って居た。

 【神に愛された真実の愛を説く聖女様。】

 会場内で皆が囁く。でも私とルードは知って居る。声には出さず泣くリョウの姿を。止めどなく静かに流れ落ちる涙。元の世界を思ってだろうか?

 リョウ有り難う。私はクリスを愛してる。でもいいなりに成るだけの女じゃ駄目ね。私の為に動いてくれた友人や貴女の為にも強くならなきゃ!

 リョウが戻してくれたこの腕輪に誓うよ。

 貴女は私を友人だと言ってくれた。私も貴女の友人だと胸を張りたい。私も頑張るよ!

 友人として、リョウの幸せ報告を待ってるよ。

 でもルードってば知らないわよ?結局言わなかったんだね。後でバレたら怖いぞ~。

 *****
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