【完】婚約破棄までの１週間はテンプレ三昧。私も幸せになりたい！in 異世界。

【城下町編。フロックス国境でダービー開始】

◆城下町から１週間目・昼。

 
 1つ目の村に到着した。漸く馬車から降りられホッとする。欲をかくなら地面で良い。寝転びゴロゴロと転がり回りたい。それ位腰も肩もバリバリだ。う～んと伸びをし、クリーンとヒールをかける。ニコニコと微笑み待機中のイケメンズにもかける。

 寝る前にもかけたろうが！男の癖に朝シャンかよ！ダメダメ！差別はいけないわ。流石に1週間の風呂なし馬車内泊で、超イライラしてるからって八つ当りしちゃ！解っちゃ居るけど止められない…。

 だってこの人達、本当に宮廷医者と調剤師なの？町医者のおじいちゃんの方が知識が有るのよ？薬草何かもろくに持参して無い。私が摘んだのをギルドに卸して無かったから持ち出しよ。後でギルマスに請求しなくちゃ。必要経費よね？しかも生の薬草は解らないって言うの！普通調剤や処方に使用される薬草は、既に乾燥させ粉末になってるそうだ。

 信じられない！思わず巡回医療をした事が有るのか尋ねたわよ。はい。有りませんでした。なら何故志願した！仲間内で聖女様にお会いしたいと愚痴ってたら、上司から志願の紙を貰った？出来るか心配だったが、王様が聖女に任せれば大丈夫。お前達は聖女に侍ってれば良い。道中奉仕しろと言っただと？

 全くこの国の王の頭はどうしようも無いね。正直シスルの国に亡命したいわ！余りに録で無しならマジに考えよう。因みに私、王様とキチンと会話した事無いよ？パーティーで面識は有るけど、会話は成立して無いからね。つまりこの時点でアウト！普通なら王様と謁見なりするでしょ？して無いって事は聖女は何をしても良いって事だよね？私にイケメンあてがった何がしたいの？隣国の宰相さんだって、歴代聖女を囲いこまれてるって言ってた。つまりその気はなくともそう思われてる訳よ。なら私がそう思いトンズラしても構わないわよね。１度是非王様の真意を聞いてみたいわね。

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  某王宮にて。密談中。

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 〈王よ。此度の聖女は強者の様です。あのもの達では嫌がられませんか？隣国とはかなり懇意になったそうです。城内に専用部屋まで賜ったとか。道中辟易され亡命でもされましたら…。〉

 〈大丈夫だ。此度の聖女は意外と情が厚い。多少の事では亡命等せんだろう。あの地位と顔だけのボンクラ達に辟易した後なら、後の奴が良く見える。吊り橋効果だ。聖女には悪いが、道中たんまり苦労して貰おう。色事には初な様だから、奴らにはかなり参る筈だ。奴らは当て馬だ。ニヤリ。〉

 〈王の深いお考えには感服致します。しかし後の奴はライドになりますが宜しいので？〉

 〈我国に留まるなら構わん。ライドは神が選んだ体の相性がバッチリな相手らしい。私もだが神の選んだ相手とは最高だぞ？離れがたくて猿の様にヤり過ぎたがな。しかし私は神の選んだ相手は、多分ライドでは無くルードだと思っとる。神は王太子だと言ったのだろ？ライドは影武者だ。元から王太子はルードだからな。〉

 〈なら尚更なのでは？〉

 〈聖女をこの世界の性事情に慣らす為とルードへの試練だよ。苦労して心を手に入れれば、相手の事を思いやれる。私の様に聖女からの愛を盲信し、何をしても良いと解釈しては困るからな。流石に私の二の舞にはならぬだろうが、世界観と常識の壁は高い。私の様に後悔せぬ様に、ルードには努力させねばならん。トンビに油揚げ拐われたならそれまでだ。これでも親心位は有るのだ。クリスはかなり歪んでたらしいしな。〉

 〈ではあの話は了承したのですね？〉

 〈ああ。しかし2年の期限を設けた。隣国へ自身で手回しに行っとる。隣国にたまたま聖女が居たらしいぞ。聖獣が3体になったそうだ。そう言えば聖女を口説いたが、ルードと見分けがつかんからと断られたらしい。あのバカがライドのまま口説くからだ。ライドはルードを応援するそうだ。さてどうなるか楽しみだ。〉

 〈聖獣が3体ですか？しかも隣国にも。今回の聖女は素晴らしい資質ですね。ならば尚更若者達の恋愛を楽しんでは可哀想ですよ。でも我々もそんな年になったのですね。〉

 〈私も孫は早く欲しいからな。氷の宰相と呼ばれたお前が、孫をあやしてるのには衝撃を受けたぞ。ジジでちゅよ～。は流石に無いだろ？〉

 〈・・・。王も必ず同じになりますよ。〉

 〈ああ。そうなりたいな。〉

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  さあさっさと済ませて次に行くわよ！町の医院に行き、患者さんの様子を聞く。お医者様が治療出来るが、薬草が不足してる物等を調べる。私が手持ちの薬草を鑑定し、必要な物を用意する。後は調剤師に任せてOK。とは行かない。乾燥してなければとのことで、私が魔法で乾燥し粉砕する。レシピまで鑑定し、材料を全て揃える。ここまでしないと調合出来ないそう。それじゃあ、後は混ぜるだけじゃん。

 巡回医者の仕事は、既に伝達されてる町医者では判断出来ぬ病気の判定だ。新たな薬が必要なら処方し、魔術師に任せねばならぬかを判断する。今回届けに有ったのは7件。3件は診断と新たな薬でOK。後の4件は魔術師に回される。つまり私ね。

 まず1件目は、子供の指の切断だった。この場合切断された指が有れば、指の保存状態も有るが１週間以内なら魔術でくっつくそうだ。しかし切断してから既に10日が経って居る。

 無理だと言い張る医師に、指はしっかりと保存して居る。試すだけでもとすがり付く父親。駄目元でもと渡されるヒンヤリ冷たいガーゼの包み。小さな親指と人差し指だ。利き手では将来困るだろう。

 医師が切断面を消毒し、掌を机に固定する。更に青白い指を繋ぐ様に固定する。掌の上にガーゼがかけられた。医師が私に合図を送る。

 私は涙を堪えながらイスに座る子供の背中側に回る。左手で背中を撫でながら、ゆっくりと魔力を全身に流す。全身に回った所で右手を掌に重ね、切断面で止まり逆流する魔力を戻し先へと促す。血管を繋ぐ様に、血液が巡回する様に。プツンと何かを突き破る気配と共に、掌が熱くなり徐々に熱さが収束してゆく。ふぅ…。多分繋がったと思う。恐る恐るガーゼを捲る。指は完全にくっついて居た。

 《大丈夫？ゆっくり動かしてみて？指先まで動くかしら？》

 机の上に固定されたままの指先が動いた！ワッと歓声が上がる。固定を外され指を眺める子供。でも少し悲しそうだ。あ！切断面が火傷の痕みたいになっちゃってる！子供の手を取り指元の傷を指でなぞり魔力を流す。傷を削るイメージだよ。うん。大丈夫。

 《女の子だもんね。治るなら綺麗な方が良いよね。もう大丈夫。でも安静にしてね。》

 子供はご両親に連れられ、お姉ちゃん有り難う！と、見えなくなるまで手を振り帰った。さあ後3人ね！頑張るぞって、こりゃ無いよ？
 
 残りの3人は骨折だった。タルバの時の様な複雑骨折じゃないよ？あの時は、骨が砕け一部は潰れてた。しかも折れた骨の一部が、皮膚を突き破り飛び出してた。皮膚を突き破り飛び出した分は、タルバの治療によって除去されてた。皮膚も内部も治療されてたから、細菌感染等の心配も無かった。でも除去された分の骨のパーツが足りず、治療にかなりの魔力を使用したの。

 でも今回の骨折は、単純に折れてるだけ。私は医者じゃ無いから解らないけど、骨を元の位置に戻してギブス等で固定する位は出来ないの？変な風にくっついて余計に酷くなってるよ。

 ・・・。レントゲンが無いからどう折れてるのか解らないのね。私は鑑定で調べるけど、鑑定も使える人が少ないの？うーん。なら仕方無いのかなぁ。週に１度は魔術師も巡回してるそうだからね。

 取り敢えず3人の骨折を治す。これはあっと言う間に終了した。最後に町を一周し、軽い怪我や頭痛等も治療した。治らないと諦めてた火傷の痕や、切り傷の痕等も治療したよ。男性は勲章だ！何て断る人も居たけど、やはり女性は見えぬ所でも治したいよね。可愛い女の子の頬のケロイドを治した時は、本当に両親が喜んで居た。本人はきょとんとしてたけど、家族は苦しんでた。小さい頃、お兄ちゃんのヤンチャで大火傷をしたそうだ。お兄ちゃんの心の傷も治せたとお礼を言われたよ。

 私はてくてく町中を歩く。肩にはレインとラス、項にはタルバ。イケメンズの姿は無い。あ奴らは疲れたと医院のベッドを借りて寝ている。全くどうしようも無いね！途中で治療のお礼にとお昼もご馳走になった。イケメンズ叩き起こして次の町に行こうかね。ん？向こうに町が見えるじゃん。もしかしなくても次の町かな？町を目掛けて瞬間移動してみる。町の案内板発見！この名前間違い無いね。しかも歩いて5分だって。かなり近くまで飛べたね。
 
 イケメンズは役に立たないから先に行っちゃおう。レインに言伝てを頼んだら、直ぐに行ってくれた。嫌がられるかと思ったのに素直だね？

 〈リョウがセクハラとやらでイライラしてたから、気を利かせたのだろ。〉
 
 《レイン優しいな。あのイケメンズ！本当に役に立たないよ。しかもしつこいしね。》

 ラスとタルバと町に向かい歩き出す。お！見えて来たよ。すぐだったね。ん？

 入り口はこちら→右へ更に3分。

 正門はまだ先でした。

 さあ！一同回れ右！ドガンっ！

 いっ痛～い！なっ何っ？猪にでもぶつかったの？しかも何よ！血がベットリ洋服に付いてる～。私怪我して無いわよね？クルリと周囲を見渡すと、少し先の木の根本に黒マントの人が蹲って居た。

 《私にぶつかってあんなに弾き飛ばされた訳じゃ無いわよね？そうならショックよ。怪我してるの？治療しましょうか？》

 〈リョウ！近寄らないで下さい。その男から他者の血の匂いがします。しかしリョウは怪我人を無視は出来ないのでしょう？怪我は右足首です。ワナにでもかかりましたか？かなり深いですが切り傷の様です。その場から治療して下さい。魔法を打ち出すイメージです。〉

 レイン戻って来たんだね。良し！ではクリーンとヒールをピストルを打つ要領でズキュンだよ。

 一瞬の衝撃の後、黒マントの人が光った。黒マントはむくりと立ち上がる。

 〈村で治療して貰う予定だった。更には突き飛ばされ痛みが増したわ！礼は言わんぞ！〉

 こりゃまた俺様野郎だよ…。

 《別に礼は要らないよ。今から村で治療する予定だから、どうせ私がしただろうしね。ただ突き飛ばしたは余計よ！ぶつかって来たの間違いでしょ。》

 黒マントは舌打ちをして居なくなった。なんなのアイツは！！

 〈リョウ。言伝てして来ましたよ。ここまで2時間位で到着するそうです。〉

 わ～い有り難う～。セクハライケメンズから解放よ！2時間フリーよ！治療早く終らせて国境の砦にゴーよ！ん？砦見えてるじゃん。イケメンズ置いてこうかな。飛べれば馬車内セクハラ無しだよ。こりゃ幸先良いね！
 
 スキップしながら村へ向かった。

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