【完】まだまだ宜しくないヤツだけど、とりあえず婚約破棄しない(確実)

桜 鴬

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 我が国ではなぜか定期的に、脳内お花畑カップルが出現する。なぜかそのカップルは、大勢の前でいちゃつき、片方が婚約破棄を大声で叫ぶ。叫ぶのはほとんどが男性側で、つまりは公共の場で己の不貞を曝し、婚約者の女性に婚約破棄を突き付ける訳。

 通常ならば不貞を働いた男性側に問題があり、当然ながら慰謝料案件。普通の頭なら考えなくても理解できる。婚約破棄なんて政略的なことを、公共の場で訴えるなんて、己れと恋人の汚点にしかならない。そして哀しいかな。まったく落ち度のない、破棄された女性の汚点にもなってしまう。

 しかしその男性側は己の不貞を棚に上げ、恋人に婚約者が危害を与えたなどとほざく。己れたちの罪を正当化させ、相手を罪人にしたい。かってに婚約者の罪を捏造し、さらには国外追放だの牢にぶちこめなどと、裁きの場をまたずに決めてしまう。もちろんこんな裁きが通用しないなんて、常識的に考えれば直ぐにでも解ること。なぜに穏便にことを運べないの?きっと自己顕示力が強いのでしょうね。

お花畑たちには永遠に解らない……

 以前に妹のマリエンヌがやられたのよ。まあ。マリエンヌは婚約破棄されてラッキーだったけど。あ!私もされたのよね。喜んで逃走したのに、わたしは結局逃げられなかった……

 たしかあのときのローズマリーは処分されたのよね?牢に入れても大人しくしないし、異性とみれば誰彼構わず手玉にとり、逃走の足掛かりとする。はては隣国に亡命したりもしたからね。本当に逞しくて素晴らしい気力だけど、こうなるともう、処刑か犯罪奴隷落ちしかない。私は王家の裏の顔にまでは関わりたくない。可愛そうだけど、ローズマリーの生死を知りたいとは思わない。その素晴らしい気力を、もっと違うことに役立てられなかったのかしら?

 だけど我が国は相変わらずよね。平和ボケし過ぎでは?魔の森の遺跡は封印した。もう異世界の迷える魂は、二度とこの世界には迷い混まないはずよ。でもまだまだいるのねー。

やはり平和すぎるのがいけないのよ。貴族のボンボンたちには、兵役ならぬ魔の森での討伐役を課すべきでは?私が纏めて面倒……は、見たくないわね。まあ最近は前世もちではないおバカも多いそう。さてさて今回はどうかしら?

 しかしまたお花畑さんたちの出現なの?しかも今回は……まあお手並み拝見といきましょう。

 おぃ……貴様は我が家をなめてるのか?

 喧嘩上等よ! いえ決闘よ! 無理? ならば私が!えー余計にややこしくなるから出るな?こんな公衆の面前でバカする奴らに気配りはいりません!

 悪いけどたしかにね?この子はひょろくて情けなく見えるかもしれない。でもね?私が次期当主と認めてるのよ? 情けないばかりじゃないの。それに宰相たる父に、政務と領地経営はバッチリとしこまれている。心配だったひょろさもね!私がかなり鍛えたんだから!脱げば凄いわよ。今までの情けないお坊っちゃまだと思わないで!魔の森で鍛えたお陰で、魔力量もかなり増えたし効率よく体内循環させられるようになったわ。

 つまりね。魔法で身体強化も出来るし、攻撃魔法をバンバン打ちながら剣も使えるの。

 きゃー。ブライアンステキよー。いまの貴方には地位によるお見合いだけじゃない。貴方に惚れたお嬢様からの釣書も多いのよ。わが弟ながら鼻高々だわー。愛妾狙いは流石に認められないけど、側室までなら素晴らしい釣書ばかり。

 ブライアンよ。申し訳ないが頑張って欲しい。マリエンヌが大商会のロジャースと婚約。ロジャースはコメコメ大商会としての今までの功績と、前回の事件での功績で貴族位を賜った。段階的に今年中には伯爵位。結婚式までには侯爵位を賜る予定になっている。前回の事件の処分でかなりの爵位が宙に浮いたからね。もちろんロジャースの手腕もあるし、大商会の我が国での重要性もある。さらにはマリエンヌは王家の血筋。私たちのお母様は現王の妹君。そのマリエンヌを嫁として貰うための相応な地位。もちろん側室は待ったがかかる。なぜなら侯爵位の後継は、マリエンヌの血筋でなければ困る。つまり後継者争いの恐れが生じる側室は無理。

 これは多重婚を認める我が国ではの特別な法律なの。マリエンヌとロジャースは愛し合っての婚約だけど、身分や地位にはそれなりの義務と責務がついてくる。嫌な言い方だけど、平民が成り上がりで貴族位を得る。これは本当に大変なことなの。特に派閥的なことよ。貴族には後ろだてが必要。つまりたくさんの妻がいると、妻の実家が我も我もと手を出してくる。そして後継者争いが勃発する。それは国政をも脅かすわ。そのための牽制。成り上がったばかりでは、それを抑えるだけの力が足りないの。

【貴族位授与の初代には、側室や愛妾は認められない。また三代以内に、必ず青い血を混ぜること。達成出来ぬ場合には、貴族位を返還することとする】(青い血とは貴族の血のこと)

 我が国での新規爵位授与の際には、次代以降に貴族の血を混ぜることが求められる。つまり貴族位の婚約者候補がセットなの。(男女共)報奨には、王家からのおすすめの釣書が、さりげなく何点かセットされてくる。つまり初代の伴侶は、可能な限り貴族の家柄から求められる。しかも側室や愛妾は認められない。

 もちろん既に平民同士で結婚していたり、どうしても無理な時もある。そのときは次の後継に、その義務が繋がる。三代貴族の血が混ざらなければ、残念だけど爵位没収なの。これって結構キツいと感じるけど、元々平民は一夫一妻。無理な場合は爵位を得た本人は免除。次代は政略結婚にはなるかもしれないけど、三代までは待ってくれる。

 じゅうぶん優しいじゃない。だって功績を上げて貴族位を得た本人に無理強いはしない。そのかわり子孫には強制っぽいけど、そんなことはないわよね?だって子孫は選べるわけ。政略結婚が嫌ならば、貴族位を返上して平民に戻ればよい。我が国の高位貴族はほとんどが政略結婚よ!両親か祖父母の功績による報奨。己の力では無いのだから、返還すれば?平民になる選択肢が有るなんて羨ましいわ!私には選択肢がないんですけど?

 なのにウダウダ言ってんじゃないわよ!

 *****
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