【完】まだまだ宜しくないヤツだけど、とりあえず婚約破棄しない(確実)

桜 鴬

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 皆様はじめて食するカレーライスに大はしゃぎ。スパイシーで食欲を誘う香り。ゴロゴロと入ったお野菜に、押すと解れてしまうようなお肉。やはりゴールデンバッファを探して正解だったわ。バッファより肉質が良いから、お肉の旨味がしっかりしているし、部分的にだけではなく、全体的に霜降りなのよ。だからカレーのように煮込んでも、固くならないし味が飛んだりもしないの。ゴールデンは最高ね!

 正直お色を見たら……

 正直な悪ガキたちなんて、『○○○だー! 』と騒いで走り回っていたけど……母親に頭を叩かれ、カレーのお皿を奪われ大泣きしていた。

 お皿は返して貰えたけど、お代わりに間に合わなくて大泣きしていたのよ。それなのに!

 「ロジャース!! このウスラトンカチ! 飛び入りの貴方が食べすぎてどうするのよ! とにかく商会に送るから、マリエンヌが戻ったら渡してよ! 貴方は食べちゃダメだからね! カレーパンもよ! 」

 「……」

 献立が急遽ライス付きのカレーになって、予定のパンがたくさん余ってしまったの。アリーがそのパンを使って、レシピノートに記載されていた、揚げカレーパンときな粉揚げパンを作ってくれたの。マリエンヌは地方の学校を給食付きで支援している。揚げパンは特に給食で人気の品よ。子供たちは、甘いパンを大喜びでほおばっていたわ。他にも出来立てポップコーンにカレー粉を振りかけたもの。こちらも中々に美味しくて、色々とアレンジできそうで楽しい。

 残念ながらカレーパンは少ししか作れなかったから、カレーを我が国の上層部に伝えるために貰ったの。材料となる実は、帝国のダンジョンからのドロップ品。しかし一度潜ればかなり収穫できるそう。量が確保できしだいレシピ付きで、カレー粉として発売するそう。カレー粉が発売されれば、真似て香辛料の配合を完成させる人が出るかもしれない。我が国ではアリーの国と帝国をも挟むから、すぐには庶民の口には入らないと思うけど、やがてカレーライスが我が国でも庶民の食べ物になれば良いと思うわ。

 だってなんだか懐かしい味がするもの。

 粉にされたカレイの実もたくさんわけて貰ったし、マリエンヌの喜ぶ顔が楽しみだわ。それに他の実も、ユリウス様のお陰で判明したの。

 まずはカレイの実は、もちろんカレーライスね。次のマンボウの実は、鑑定のまんまの麻婆豆腐。お豆腐は公爵領でつくっているけど、今回は無かったので、麻婆茄子を作ってみたわ。
 
 福ちゃんの実は、カレーの添え物の福神漬け。キムちゃんの実とは、激辛のキムチのタレの粉末らしい。白菜や大根等の野菜を漬け込む。今回は塩揉みした浅漬けに加えてみたわ。この粉末を溶かし、お肉や野菜を煮ても美味。キムチ味のピラフにスープにお鍋など、調味料としても幅広く使用できる。

 ヌカベーの実は、ぬか漬けのもとのこと。ぬか漬けとはお米を精米する際に出る糠を使い作る漬物のこと。これはすでにマリエンヌが再現している。糠を使った化粧水などもあったはず。しかしこの実の粉を使えば、浅漬けのように揉み込むだけで、ぬか漬け味の漬物ができる。

 手間ひまかかるお料理が、簡単にアレンジ出きるのは嬉しいわよね。たくさん貰ったカレイ以外の実の粉末も!マリエンヌへのお土産よ。

 「……ロジャース……ちょっとそのマジックバック返して」

 「……なぜだ? マリエンヌへの土産だろ? 」

 「いいから! 」

 これは時間停止機能付きだけど、持ち主識別機能の無い万能型なの。つまり誰でも出し入れ出来るわけ。レンタルなどにも使われているわ。私は袋の中からカレーパンを取り出し、己のマジックバックに移す。良し!これで心配は無しよ。

 「……食わねーよ! 」

 「さすがにロジャースはマリエンヌの手前大丈夫でしょう。しかしあれを見なさい! 」

 「……」

 「貴方はあの方に食べさせろと命令されて断れますか? その後ろにいる人に、持っていかないと俺が殺されると縋られ無視できますか? 」

 「はぁ。悪い。たしかに無理だわ。皇太子様はまだカレースープ飲んでるの? リーダーもお前の専属護衛なんだから、皇太子様の近くにいなきゃいいのに……って、俺を送るからか! リーダーすまん。エリーもすまん。アリーさんにも、突然すまなかったと伝えてくれ。しかしカレーは旨かった。次回は是非商会の話を旦那様と!と伝えて欲しい」

 「任せて。カレーパンで城の連中の胃袋を掴んでくるわ。私は絶対に公式にキャラウェイ王国に行きたい! そのためには良い点をアピールしなくちゃね! 」

 ロジャースを掴んで転移する。ちょうどマリエンヌが戻っていたので、カレーの鍋とカレーパンを二つ手渡す。

 「時間が無いから他のお土産はまた後でね! 」

 マリエンヌとロジャースにサヨナラをし、私は正国へ戻る。

 ……皇太子様? まだ転がっているの?

 「こりゃ無理だろ? 下手したら戻すぞ。いくらなんでも食べすぎだ! 」

 仕方ないわね……転がる皇太子様を抱き起こすと……

 「エド! やだ臭いっ! カレー臭が凄すぎる! 肩は貸したくないから、手で我慢して。午後の視察は私だけで行くから、エドはお城ね。リーダー待ってて。すぐに戻るから」

 再度横たえ手を握る。うぅ……思わず握った手を見てしまう。手にもカレーが付いてる……洋服にも付いてるし……子供じゃないのよ?しかも白い服に黄色いシミが点々と……

 王城の皇太子様付きの侍従を呼び、後の事の手配を頼んでいく。お城の皆さんは初めて嗅ぐ匂いに、妙な心配をしているけれど!

 毒なんかではありません!食い意地の張った皇太子様が、子供と争い食べすぎて、洋服まで汚したんです!お腹パンパンで寝ているだけです!

 なんて言い訳して手配する己が情けない……

  皇太子様? 貴方は子供ではないんですよ?



 (zzz……)

  (当たり前だ! 私は子供ではない! しかしジジイでもない! 加齢臭とはなんだ! 加齢臭とは! カレーはたしかに旨かったが……)

(zzz……)

 『エド! エドワード! 臭いから触るな! カレー臭がするってば! その匂いに洋服で、視察なんて無理に決まっているじゃない! バカ! 匂いを消してからにして! 』

(zzz……)

 バタン!

 *****
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