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⑭
しおりを挟むそ……それは……!!
この世界はヤンデレが標準装備だと?最低でも微ヤンデレ?ほぼ誰でも微が付くの?私とマリエンヌが悪役令嬢だという、例のゲームの中限定ではなくて?
まさか!そんな!
「マリエンヌ? それは本当なの? 間違いはないの? 」
マリエンヌ!お願いよ!違うと言って!アリーが!アリーが倒れちゃうー。
「お姉さま……ゲームや物語のストーリーというものに強制力はございません。それはお姉さま自身が一番おわかりになりますよね? 」
そうよね。我が国では忘れたころに、ボウフラの様にわきだす婚約破棄。パターンは色々有るけれど、その出演者だった私たち。私とマリエンヌは悪役令嬢。そして主人公たるローズマリー。しかし物語通りにはならなかった。
そして舞台には続編もあった。悪役令嬢たる私が地下牢から脱獄し攻略者を選び下克上。しかしこれもまったく違った。私は牢には入らなかったし、攻略者を選ぶこともなく、下克上もしなかった。
まあ……ストーリーと違う意味では、下克上したけど。まあこれは悪人たちの自業自得よね。
「アリーさん。突然驚かせてごめんなさい。でもアリーさんは、すでに結婚されているんですよね? しかも結婚初夜の日に帝国へ行かれ、己の出自を知ったとか? ならばもうすでに私の知るストーリーとは違っています。ならば私たちと一緒なんです。強制力なんてないんです。だから心配しないで下さい」
マリエンヌってば……まったくフォローになっていないのよ。アリーの顔色の原因は、つまりはアリーの住むキャラウェイ王国も、我が国同様にヤンデレが標準装備ってことなのよ!
「私がネット小説で読んだ、ウェブ版の【専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。】では、アリーさんはご両親のことをすべて知ってから結婚されました。このお話は紙媒体の本に書籍化された際に、帝国訪問より結婚が先になりました。つまり婚姻時には父の出自は知らなかった。しかし書籍はここまで。つまり書籍より先があると言うことは、結果は違ってはいるけれど、現在のこの世界は……ネット連載の方に準じている……」
「マリエンヌはどこまで知っているの? 」
「私はウェブ版で更新を追って読んでいました。二巻発売が延びてようやく発売された辺りまでです。すでに連載は終了していて、番外編をたまに……あー! お姉さまたち! 」
マッマリエンヌってば!そんな大声出さなくても……みっ耳が痛いわ……アリーは顔面蒼白だし……
「すっかり忘れていました! 私たちの皇太子様ルートのエンディングには、お姉さまたちのその後のお話も出ていました。でも内容がほとんど思い出せないんです。お姉さま? 遺跡の湖で、エドワード様にお尻を触られましたか?そのときお姉さまから頬にキスをされましたか? このときに近隣諸国の親善大使ご夫妻のお話が出ました。あれはきっとアリーさんたちです。でもあれ? お話の中では明日親善に行くと……ならぼキスはまだ先でしょうか? まだキャラウェイ王国への公式訪問は決定していませんよね? 」
……すでに触られとります。はぃ……頬にチューも……くっ……なぜそこは思い出すのー!でも親善に行くのはまだまだ先よね。しばらく他の国への予定も無し。やはり物語とはかなり違っているのね。
……しかしリーダーのあのニヤニヤ顔が憎いわー!マリエンヌのバカー!
「マイナスからのスタートのヤンデレ溺愛な旦那様と、ギルドの依頼や物資の運搬で仲良くなった女性。この女性とお友だちになったと、お姉さまが皇太子様に伝えたら、たしか女性にまで焼きもちを焼きましたよね……うーん……これ以上は思い出せません。これが無いと思っていた強制力なのかしら? 」
只今私とマリエンヌとアリーでのお茶会中。帰宅するとマリエンヌは、カレーライスに大感激していたの。やはりあの実の粉は、香辛料をブレンドしたものと同じ成分だという。カレー粉には発汗作用があり、新陳代謝も良くなり健康にも良い。またこれらは胃腸の働きを良くし、疲労を回復したりもするそう。さっそく張り切って、色々なお料理を試していたわ。
途中からアリーも一緒になって、次々とカレー料理を作っていたのだけど……
アリーと旦那様の出会いを聞いて、マリエンヌが固まってしまったの。専属料理人としてや、ダンジョン最下層での置き去り。仲直りとご両親の食堂を再開。さらには母親の出自と旦那様の過去と向き合い結婚したこと。その初夜に帝国に闖入され、帝国ではいとこである皇帝の正妃にと、散々邪魔をされたこと。ここで父親の出自を知ったこと。
アリーってば、中々に壮大な人生を送っているわよね。しかし突然ビックリ。
これらを聞いていたマリエンヌが、いきなり頭が痛いと踞りうめきだしたのよ!
そして語られた驚愕の事実。
アリーたちは帝国から帰られた後、地元の町で披露宴をしたそう。商業ギルドに冒険者ギルド。地元の商店の皆さまに、貴族議会にお偉いさんたち。さらにはお二人がいない間に、ころポックル商会として、食堂を含めた商業施設型のお屋敷が完成。
若いお二人への期待とお祝いとして、王家までデバって最新設備を投入したとか……まあ血統の魔道具の、機密保持にはそれくらい必要よね?
帝国のくの一の方々による、カラクリ屋敷化も見事らしいわ。これだけは一度私も体験してみたいわ。
披露宴はなんと一週間もかけたそうよ。庶民も屋台を出したりお祭り騒ぎで楽しんだ。大神殿も新しくクリーンな門出を!というイメージアップのため、新大新官自らはもちろん、新聖女様も総出でお祝いをした。披露宴は盛大にかつ楽しく終了したの。
でもね?二人の幸せを妬む輩も多かった。特に女性の噂話ね。もちろん僻みや嫉妬も多かったけど、悲しい真実も混ざっていたの。
アリーの旦那様が知らなかった真実。本人にはまったく責任はない。しかし知らないことは、のちの後悔に繋がってしまう。そしてその悲しい事実は、クリーンな大神殿を目指す人々の、心のシコリになってしまう。なによりその被害者の女性と子供を幸せにしたい。そう思い皆が一致団結して、皆は女性の心と体の治療にあたった。アリーは帝国を何度も訪れ、錬金術師や神通力を使う方々の協力を得た。やがてそれは実を結び……
このお話はまだ私がアリーと、ギルドですれ違う顔見知り程度だったころのお話。もちろん私は知らなかった。しかしマリエンヌは……
「時系列的には次は蒲焼きの日の素材を探しにダンジョンへ行くはずです。私はそこまでしか読んでいません。完結はしていましたが、もしかしたら続いていたかもしれません。なのでキャラウェイ王国への、我が国からの公式訪問は、蒲焼きの素材探しの後になるのでしょう」
きっとそうね。蒲焼きの素材探しのダンジョンってのが、たぶんシーグリンダンジョンへの視察なのでしょう。公式訪問はその後……
手配を頑張らなきゃ!
「アリーさん。私の知るお話は、ほぼ終了しています。これからの未来にも、私たちの時のように、防ぐべき不幸な未来は有りません。また私たちのゲームの様に、恋愛ものではありません。なので悪役令嬢もいませんし、断罪もぬるいです。アリーさんたちのお話は、いわゆる追放ものとなります」
「追放ものですか? 最近我が国でもブームらしいのですが……」
「少々旦那様はヤンデレ臭が漂いますが、たくさんの子供たちの笑顔に囲まれる幸せな未来。愛されいると思えば……もしお知りになりたいのならば先のお話もします。でも……」
うぅ……マリエンヌってば……さりげなくたくさんの子供たちに囲まれるって……つまり複数なのね……それもたくさんって……
「マリエンヌさん。教えてくれてありがとうけございます。お気遣いすみません。未来は決定していない。己で掴むもの。そういうことですよね? 続きは必要ありません。皆さんと一緒に紡ぐ未来が最良だと思います」
そうよアリー!楽しい未来のために頑張りましょう。良かったー。たくさんの部分には反応していないわね!
「あのさぁ……男が言うべきじゃないんだけど、ヤンデレ漂う旦那には、女性が家族計画した方が良いと思うぞ。愛する妻だけしか要らないから、子供は要らないと言うタイプじゃないんだよな? 皇太子様と同じ溺愛タイプなら、愛する妻の子供は何人でも! そのためにも一時も離したくない。出きるならたくさん欲しいタイプだ。己からは絶対に! 家族計画はしない! 」
「……」
「ちなみに今は魔道具にもある!いきなり申し訳ない! いつものエリーを見ていたら、アリーさんのこともつい心配になってしまい……」
もう!リーダーのバカ!バカー!アリーがたくさんの部分に反応してしまったじゃないの!
「いえ……ありがとうございます。考えます……しかし男性にこんなアドバイスを……」
さすがに恥ずかしいわよね。アリー大丈夫。こうして大人になるんだから!
「エリー。いや、エリザベート様? 他人事のような顔をしては駄目なのでは? 皇太子様も同様ですが? あ! でもブライアン君ののためにも頑張るんだっけ。目指せ我が国の繁栄! 大家族皇室万歳!! 」
きーさーまーはー!!
リーダー? あなたはそんなに死にたいのかしら?
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