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しおりを挟む【お詫び】
前回のお話のラストの言い回しが少し可笑しかったため、修正しました。あまり変わりは無いと思いますが、なんだか話が噛み合わないと感じましたら、前回の後半を確認して戴けたら幸いです。
*****
ど……どうしよう……。まさかアリーがこんなにバイオレンスになってしまうなんて……。
「おい……お前彼女になにを言ったんだよ? 監禁怖い……とか、毎日毎日はやっぱり可笑しい……とかボヤキながら、魔法ぶっぱなしてるぞ? 」
「……」
「いやー! ほどほどが解らないの! もしかして異常なの? ルイスの変態ー!! 恥ずかしすぎるわー! 妊娠と間違える位の魔力の残滓ってなによー! 新婚さんは仕方ないけどほどほどって! 笑われちゃったわよー!! ぜったいに許さん! ドガン!ドドン! ドオーーオォーンッ! 」
アリー……でもスキルって凄いわ。魔力量に左右されないから、いくらでも使用できる。でもさすがに使いすぎは不味いわね。なににおいても無限ということはあり得ない。またなんの代償もないことはあり得ないのだから。
人間が普段生活するために働き食べる。これらは代償要らずだと思うかしら? 食べるために働く。または働くためには食べる。働くために体調管理が必要で健康な体を維持するために食べる。または食べるために働き食材をえる。これらは堂々巡りでしょ?代償を支払っていないように見えるし、上手く回っていて代償要らずに感じるわ。でもどちらかに傾けは理解できるの。
例えば食べることに拘りウェイトが傾けば、食べすぎによる弊害や、金銭的なトラブルの恐れも出る。また働くことばかりに傾けば、家族を蔑ろにしてしまうかもしれない。仕事に終われ精神的にも疲労してしまう。バランスが取れている内は良いけど、その負の部分がいずれ代償となりえてしまう。
つまりなにかを成すためには、見えなくても必ず、どこかに付加がかかっているのよ。
たぶんスキルは精神的イメージを、心の強さで具現させる力。精神力を糧にしている。ぜったいに体調だけではなく、心も疲労するはずなんだから!
「アリー! もう大丈夫だから止めて。魔の森がなくなってしまうわ。魔の森は人には有害だけど必要でもある。アリーなら解るわよね? だから伐採と整地はその辺で……」
「あっ……つい夢中になってしまいました! 」
「いやー。しかしアリーさんは凄いな! 後は男衆が柵を組んで魔除けを埋め込むから! 最後に結界を頼みます。ここまで今日出来てしまうとは……アリーさんもエリーと違わず規格外だな! エリー! 皇太子様だけど、アリーさんの旦那さんに教えを乞えば? 同じ規格外がお相手なんだし、少しはまともになるんじゃね? 」
……なんでよ!しかもその言い方!めちゃアリーに失礼じゃないの! あ……リーダーはそういえば、ルイスさんのことをまったく知らないのよね。まあ私もまだお顔は拝見していないのだけど……
でもぜったいにエドと同じタイプよ。私には解る……マリエンヌのいう、溺愛ヤンデレ臭がチラチラ見えかくれするし、常に漂っているもの。
「本当にすみません。つい妊娠かもとビックリしてしまい……近々シーグリンダンジョンに行く予定が、妊婦になったらぜったいに無理……下手したら出産まで部屋から出して貰えないかもと悲しくなってしまって……」
「……エリー? もしかしなくても同類なの? 」
「らしいのよ。まだお会いしてはいないのだけど……」
「やだ怖い……もしかしなくてもキャラウェイ王国公式訪問決定の際には、自分も行かなくちゃ駄目なの? 逃げて良い? 」
「アホたれ! 駄目に決まっているでしょ! 専属護衛のリーダーがなにをいっているのよ! とにかくほら! さっさと仕事を終わらせてきて」
リーダーを追い払い、項垂れるアリーを休憩所に誘う。麦茶とおからクッキーをそっと差し出す。
「この麦茶はね。子供にも妊婦さんの体にも優しいんですって。こちらのクッキーに練り込んであるおからは、お豆腐を作る際に出るものなの。お肉じゃない唐揚げがバカ売れでおからが大量にでてしまい、マリエンヌが作ったの。腸内の清掃をしてくれ、ダイエットにも良いの。甘さも控えめだから是非食べてみて」
アリーがお茶をのみクッキーをパクリ。クッキーはアリーの専売特許の様なものだけど、ダイエットクッキーはまた別物よね?
「これ……小豆味ですか? こちらは抹茶にきな粉味……優しい味ですね。美味しい……」
良かったー。ボランティアで来ていた医療団の中に、ちょうどお医者様がいたのよ。女医さんだし産科も可能だというから見て貰ったの。
結果は……まださすがに解らないんですって。まあ通常の医療では、まだまた判明しない時期だからね。そのお医者様にも、高魔力同士の妊娠についての知識は有ったの。違う魔力の流れも解る。でもアリーの魔力量が多くて、混ざっているのが残滓か赤ちゃんか解りにくいそう。
『残滓ならば、三日も経てば消えます。心配ならば、その後に再度診察して下さいね。でもあなたほど高い魔力もちの奥様に、残滓として確認出来る魔力を残せるなんて……出来れば五日はあけた方が間違いないかも。新婚さんは仕方ないけど……ほどほどにね? 』
お医者様も平気な顔して言うから!アリーってば真っ赤になっちゃったわよ!
「心配かけてごめんなさい。体調に変化は無いし、自覚もないので妊娠かも? ってのは、しばし忘れます。どうせ五日なんて無理だろうし、シーグリンダンジョンにも行けなくなっちゃうし……なにかあったら必ず見て貰いますので、エリーも内緒でお願いします……」
「でも……大丈夫なの? 」
「だって! 診断で解らないなら仕方ないです。それにまだ通常ならまったく解らない時期なんです! だから正式に判定が出るまで忘れます! エリーも忘れて下さい! 」
……でも……心配だわ……
「大丈夫です! 暫く私一人での仕事も無いし、そうなるとルイスが片時も離れませんから……今回だってついてくるって煩かったんです。でも商業ギルドのギルマスが、今回の仕事は一人で十分だと言ってくれて……私だって少しは自由な時間も欲しいんです……」
アリー……そうよね。いくら新婚さんでも、プライベートは必要よね。これはやはり私が頑張りましょう。一日でも早くキャラウェイ王国と仲良くならなきゃ! 幸いにもアリー夫婦は、国と国を結ぶ親善特使よ。ならばその地位を使わないなんて勿体ない!
クローブ皇国の次期王妃たる私エリザベート!国の上層部を丸め込み!友好を深める大切さを理解させ、アリーと私だけの時間を作りましょう。そうだわ……ルイスさんにエドの教育を頼んだらどうかしら?王様にちょこっと話せば上手くいきそうね。マイナスからプラスに這い上がった、ルイスさんの手腕を習いなさいな。
二人で帝国のダンジョンとか行きたいわー。アリーとなら転移でちょちょいだし、帝国にも足掛かりが出来る。これはナイスよ!
「アリー。実は私もなの。しかも私には護衛もついてるしね。私が誘ったら旦那様は離してくれるかしら? 私もたまにアリーと女同士で息抜きしたいわ」
「……」
「私個人からのお誘いでは、ルイスさんから駄目だしを食らうかもしれないけど、ギルド経由や王家絡みなら大丈夫よね? 先ずはキャラウェイ王国への公式訪問を取り付けるわ! その前にはクッキーの配送をお願い! これはギルドを通すわ。 その合間にこっそり遊びましょう。証人はアヤツにやらせるから大丈夫! 」
リーダーってば! 聞こえないふりするな!バッチリ聞き耳立ててるくせに!もう仕事は終わったのね。
「アリーは今日は何時帰宅と伝えてるの? 」
「夕飯には間に合うと……」
「なら今から魔の森でウサギ狩りをしない?お肉は美味しいし、毛皮で可愛い洋服を作ってくれる。そのままマリエンヌの所に飛んで、お茶して帰りましょう。マリエンヌ特製のおにぎり弁当と、ヘルシー唐揚げ入り弁当を夕食にどうぞ。ロジャースも旦那様と商談したいみたいだし、色々と説明してくれたら助かるわ」
まあロジャースとの商談は、私たちが公式訪問してからになるわね。それまでは一階の展示スペースとやらで宣伝させて貰いましょう。
ん?リーダー?あら気が利くじゃないの。さらには向こうから空色の鳥さんが……
「今日の仕事は終了だそうよ。このまま魔の森に入っちゃいましょう。アリーは大丈夫? 私が無理いっているなら、正直に言ってね。お友だちってのが嬉しくて、押しつけちゃっていたら……」
「エリー!!」
あらあら泣き虫さんになっちゃったの?結婚して環境が変わったばかりなのに、いきなり妊娠かも?なんて言ってしまったのが悪かったのよね。普段は旦那様がいるんだし、回りが注意していれば大丈夫でしょう。
『アリーは大丈夫。三角ウサギの保護も有るし、僕の加護もついてる。心配してくれてありがとう。でも……類は友を呼んじゃうんだね……頑張って! 』
……今の声って……もしかしなくても……あの空色の鳥さん?今日はアリーに言付けの手紙なしで戻っちゃったわ。
……類は友を呼ぶってエドのこと?鳥さんに心配されたの?
でも可愛い鳥さんね。私にお話しをしに来てくれたのかしら?
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