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⑰・end。
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第二王子さまに先導され、商談室とやらに通された。品の良い応接セットがある部屋の横には、簡易な給湯室が備え付けられていた。第二王子さまがお茶の準備をしてくれる。
「お茶くらいなら私でも淹れられます。王子さまは座ってくださいな」
「いやいや。ここはいつも使わせて貰っているから、私の方が慣れているだろう。私は王子と言えども臣籍降下する身だ。傅かれているわけではない。騎士団では一般の兵に混じって訓練もしているから、お茶くらいは己で淹れるぞ。ちなみに野外料理も多少はできる。これはアリーさんたちと同行するようになり、ダンジョンなどにも潜る様になったからだな」
それはさすがだわ。エドワードなんて、お茶が目の前に差し出されないと飲まないもの。いくら皇太子だからと言っても、郷に入れば郷に従えなのよ。孤児院へ慰問に行っても、なんの手伝いもできやしない。ならば教えて貰いながら手伝うとか、子どもたちと遊んであげるとかすらしない。開拓地の視察に行っても、事務的なことを黙々とこなすだけ。政務や外交などはたしかにしっかりとできるけど、市政のことを知らなすぎる。まあ王となり統治者として見るならば、帝王学を学び王座から指示を出せばすむことでしょう。その他は王妃たる私がサポートすれば良いこと。しかし現王はまだまだ現役よ。王でなく皇太子として慰問や視察をするのならば、そこにいる人々や働く人々の立場に立たなければ理解できないこともたくさんあるのよ。
貴族ばかりが集まる舞踏会などで、ニコニコ笑顔を振りまいていれば良いだけじゃないのよ!だからかエドワードは、庶民にあまり人気が無いの。貴族令嬢には大人気ですけど!なのに側室にと近寄ってくる女性たちを、虫ケラだとか言って無礼打ちにしちゃうし。笑顔の大安売りをして、妙な誤解をさせるのが悪いんじゃない。私が側室を娶るなと我が儘を言っているとかいわれるし、令嬢たちには嫌がらせをされなりと、とばっちりを受けてるのに……
本当に困りものだわ……
「エリザベート嬢? 食が進まないみたいだが……」
あらやだ!ついつい物思いに耽ってしまったわ。
「すみません。つい婚約者のことを考えてしまいまして……皇太子さまは本当になにもできないんですよ。まあ王家の男性には、たしかに必要は無いかもしれません。王となり私が王妃となれば、その辺りは私が受け持ちます。しかしまだ王ではなく皇太子なのですから、郷に入れば郷に従って欲しいのです」
「そうだな。我が兄上も夫婦で視察や慰問に行くが、市政のものに混じり手伝いをしたりして親交を深めている。民に寄り添う良き王になるだろうと、庶民には慕われ周囲にはかなり期待されているな。だがこれは人によりけりではないのか? 庶民より数段上を歩き、そのカリスマで民を導く王という場合もある」
たしかにそうだけど……
「ねえリーダー。皇太子さまって、カリスマ性とかあるように見える? 民を導くような威厳があるようには、私にはどうしても見えないのよ……」
だってねぇ……いつものエドを見ていたらねぇ……。
「いくらなんでもそれは酷いだろ。たしかに皇太子さまはヘタレだ。しかしそれはエリーの前でだけだ。単独で公務に出る際は、キチンとしているぞ。虫ケラにもキチンと社交辞令の笑顔を振り撒いているしな。まあそれでよけいに群がられて、殺虫剤を撒き散らしてくるが……」
リーダー……殺虫剤ってなによ。しかしエドってばなにをしちゃってるの?嫌なら笑顔を振り撒きすぎなければ良いじゃない。
「皇太子さまも結婚すれば落ち着くだろ。まさしてや子どもでも出来れば、エリーだけでなく他にも目がいくさ。恋は盲目ってな」
「なんで私のせいみたいになるのよ」
「カリスマがどうのと言うからだ! たしかに皇太子さまは、エリー以外に興味がない。だから視察や慰問でも、他人に関わろうとしないんだ。だが違う面から考えてみろよ。私情を挟まずキチンと悪は裁き、国の発展のために尽くす。まあエリーに良く見られたいことが根本に有るみたいだが、それが活力になるなら良いじゃないか。国をより良く采配するのが王の一番の仕事だろ? 市政のことはエリーが教えてやれば良い」
それはそうかもしれないけど……
「国民に興味のない国王ってどうなのよ? 」
「王には柔軟な考えも必要だ。周囲に優秀な側近たちがいるならば、国王は全面に出る必要はない。市政のことなどは、側近たちが進言してくれるだろう。大切なのは他国や自国の高位貴族との駆け引きだ。皇太子さまはその点は優秀みたいではないか。裏の顔もある様だしな」
「そうそう。皇太子さまの裏の顔は凄いぞ。悪人には待ったなしだからな。ヘタレなだけじゃない。だから正しい貴族たちからは、多大な信用を得ているんだ。側近もそんな奴らばかりどからな。だから心配するな。エリーは弟くんのためにも、違う方面で頑張ってくれ! 」
……リーダー?最後の一言はよけいなお世話よ。どうやって頑張れと言うのよ!それを言うならリーダーだって!
「あら? そういえばリーダーは、男爵さまになられたんでしたっけ? しかも来月には結婚式だとか?さらには私たちが結婚したら、子爵さまになるのよね? しかも一代限りではない世襲貴族よ。違う方面で頑張るのは、リーダーも同じなのではないのかしら? 」
「くっ……そうだよ! だから皇太子さまは策士だから大丈夫だと言ってるんだ! まさかエリスが伯爵家の令嬢だったなんて! 誘われて気軽に遊びに行ったら、家族総出で大歓迎だ! 完璧に外堀を埋められたわ! しかも爵位を一代で返上なんてならぬように、必ず後継を残せだと! まあ考えてみたら当然だよな。公爵家の侍女が、庶民のはずがないよな……」
「しかも惚れてしまったのはリーダーもだからね」
「くっ……」
皇太子さまはリーダーを、皇太子妃予定の私の護衛に推挙した。しかしリーダーの実家は伯爵家ではあるが、嫡男ではないため爵位は継げない。まあ実家の後ろ楯が有るからそれでも構わないけど、出来れば己で爵位を持って欲しい。爵位持ちしか入れない場所も有るので、私の護衛をするならやはりそうなるわよね。そんなわけでまんまと皇太子さまからの、ハニートラップにかかったの。もちろんローズマリーみたいなアバズレではないわよ。我が家に侍女として仕えるくらいだから、身分も後ろ楯もしっかりとしている。
しかもエリス嬢本人が、我が家に出入りするリーダーに惚れてしまったと言うじゃない。私には事後承諾だったけど、こればかりはエドの采配に感謝だわ。あちらのご両親も四女ともなれば、裕福な商会辺りへ嫁げれば良いと思っていたそうなの。だからリーダーは嫡子ではなくともやがて爵位を貰え、将来的にはさらに上を確定されている。将来性のある優良物件だと、諸手をあげて大賛成しているそうよ。
なにせ皇太子さまのお墨付きですから!
「皇太子さまが早く結婚しろとせっつくんだよ! エリーの周囲に独身者がいるのが気に食わないらしい。俺以外の護衛の選択肢の一番は既婚者だぞ。俺はエリーなんかに惚れたりしないわ! 」
「エリーなんかってなによ! 失礼ね! 」
あら?この蒲焼き丼は、ご飯の間にも蒲焼きが挟まっているのね。でもこのタレが絶妙よね。白いご飯に絡んで本当に美味しいわ。蒲焼き丼を頬張りながら、カップにされた蓋を外しお吸い物という汁物をすすう。
「このお吸い物ってのも美味しいわね。香りが良くて優しい味がするわ。中に入っているのは茸みたいね」
「いきなり話を変えるな! まったく仕方がないな。それは松茸という茸のスープだそうだ。本物のウナギの場合は、肝を使い作るらしい。だが今回の素材は肝が使えなかった。本来は串焼きにも使うそうだが、急遽松茸に変更したそうだぞ」
まあ本物のウナギとは違う素材だもの。まったく同じに料理はできないわよね。でも蒲焼きもお吸い物も本当に美味しい。本来とは違う魔物の素材でも、これだけ美味しい料理にしてしまう、アリーは本当に凄い料理人よね。
「ほらそれからこちらが茶碗蒸しで、これらの串焼きは松茸ところ茸だ。こちらの串は焼き鳥というそうだ。鶏肉に鶏皮、レバーに軟骨。照焼より少々あっさり目のタレで焼いてある。色がついていないのが塩を振って焼いたもの。帝国の庶民の屋台料理だと。素材は魔物の鶏モドキだがな」
養殖の鳥は高価だもの。庶民にはやはり魔物の肉がポピュラーよね。しかし美味だわー。
「リーダー。長い説明をありがとう。取りあえず先に食べましょう。王子さまはもう食べ終わってしまったのですか? なら良ければ……」
私はマジックバックより、マリエンヌの作ってくれたフルーツ大福を取り出す。ついでに茶器をだし、緑茶を淹れ王子に差し出した。
「これは……帝国の和菓子に似ているな……たしか苺の入ったものは有ったような? あれはアリーさんが提案したのだったか? 」
「ええ。私も話を聞いて帝国に興味を持ちました。我が国には前世の記憶持ちという、転生者が存在します。私の妹もその一人ですが、その妹が前世の記憶を頼りに作り上げたものです。その文化が、帝国とかなり類似しているそうです。美味しいので是非食べてみてくださいな」
第二王子さまは興味深そうに眺めたのち、苺の大福を口にした。さらに私はカレーパンを追加した。これはアリーさんが作ってお土産に持たせてくれたものを、マリエンヌが再現してくれたものよ。さすがにこのカレーは、帝国にはないみたいね。カレーはまだアリーの食堂でも試作段階で、王子もまだスープした味見したことがないという。第二王子さまは私が指輪に魔法を付加したことを含め、我が国にかなり興味を持ってくれたようね。
「ふう。ご馳走さまでした。王子さま、お待たせしてしまい、申し訳ございません。招待状の件、楽しみにしております」
「いやいや。こちらこそ有意義な時間をいただいたよ。しかし前世持ちか……興味深いね。妹さんにも、美味しかったと伝えて欲しい。皇太子さまには……そちらの都合にお任せしよう。ではクリスマスには、是非王宮に泊まって下さい」
第二王子さまをお城まで転移で送ろうかと申し出たが、馬車を待たせているからといわれて別れた。転移の魔法を使えることにも驚かれてしまった。
帰り際に食堂を覗くと、まだまだかなり混雑していた。アリーに会えないのは残念だけど、今日は諦めましょう。邪魔になってしまうわね。
「おい! 今並んでたお客さんたちが話していたんだが、アリーさん妊娠したらしいぞ。どうやらハネムーンベイビーらしいな。シーグリンダンジョンで気付いたそうだ。めでたいな」
アリー……やはり当たっていたのね。まさかダンジョンで無理したのかしら?でめ元気そうに働いているから大丈夫よね。
その後私たちは国に戻った。エドワードにはもちろん、なにも喋らなかった。リーダーにもしっかりと口止めをした。
しかし……
「なぜキャラウェイ王国から、クリスマス晩餐会の招待状が来たんだ? しかも第二王子からの招待状だ。親交があったのか? エリザベート? 」
まったく疑り深いわよね!
「第二王子さまはキャラウェイ王国代表で、アリー夫妻とともに諸外国を回っています。私は正国の復興支援で、何度かお会いし話もしております。もちろんアリーも一緒です。私がアリーと懇意にしているので、ご招待してくれたのでしょう。エドは行きたくないのですか?」
「……いや……王宮の客間を使わせてくれるそうだ。ぜひとも参加させて貰おう」
やったー!なんだな邪な気を感じるけど、行けるのは嬉しいわね。
「実はその招待状とともに、かの国の王直々から、ブライアンへの釣書が同封されていてな。王国の侯爵家と伯爵家の女性がお相手だ。先々の友好のためにも、側室にどうかとの話だ」
はて?なぜブライアンに?ブライアンには姫君の婚約者がいるのよ?
「まあ強制ではないが、一応渡しておいてくれ。もちろん見合いは、姫君と正式に婚姻してからだ。あちらもそれで構わないと言っている」
「でもなぜブライアンなのかしら? 」
「私が側室を拒否しているのは有名だからな。だがブライアンの婚約者は、側室を認めている王家の姫君だ。その心構えもキチンと教育されているはずだ。だからだろうな。キチンと正妻の立場を立て、王家の血の入らない家の令嬢を選んでいる。後々要らぬ問題を起こさぬ対策だろう」
それは……考えてくれるのはありがたいけど、私がその釣書を手渡すの?絶対に嫌みを言われるじゃない。
「ブライアンに悪いが、私はエリーにしか欲情しないんだ。だからエリー……」
こら!こんなところで顔を寄せないで!あー!リーダーが逃げた!もう仕方ないなぁ……
少しだけよ……
ブライアンごめんなさい。悪いとは思うのだけど、側室を拒否するエドを、内心では嬉しいと感じてしまう私もいるの。でも無理なら断っても良いのよ……
「はいストーップ! これ以上のオイタは駄目です。この手は何ですか? 」
「……もう少しくらい進んでも良いのではないのか? 」
「こんな場所では嫌です! 」
「なら場所を変えよう! 」
いきなり私を横抱きにすると、護衛を蹴散らし客間に運ばれてしまいました。
返事を間違えたわね……
でも最近は昔の様に嫌悪感は無くなったから……
「エド? 節度は厳守よ……んっ……んんぅ……」
私たちは少し仲良くなりました。
こうして年末のクリスマスの日、私とエドは正式に、キャラウェイ王国を訪問することとなったのです。
*******
この続きは……
【コラボ中♪専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。&相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)】
になります。こちらは、【専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。】側からの視点となります。アリー視点です。
エリーとエドの視点からも書く予定でしたが、少々無理の様ですみません。
*******
「お茶くらいなら私でも淹れられます。王子さまは座ってくださいな」
「いやいや。ここはいつも使わせて貰っているから、私の方が慣れているだろう。私は王子と言えども臣籍降下する身だ。傅かれているわけではない。騎士団では一般の兵に混じって訓練もしているから、お茶くらいは己で淹れるぞ。ちなみに野外料理も多少はできる。これはアリーさんたちと同行するようになり、ダンジョンなどにも潜る様になったからだな」
それはさすがだわ。エドワードなんて、お茶が目の前に差し出されないと飲まないもの。いくら皇太子だからと言っても、郷に入れば郷に従えなのよ。孤児院へ慰問に行っても、なんの手伝いもできやしない。ならば教えて貰いながら手伝うとか、子どもたちと遊んであげるとかすらしない。開拓地の視察に行っても、事務的なことを黙々とこなすだけ。政務や外交などはたしかにしっかりとできるけど、市政のことを知らなすぎる。まあ王となり統治者として見るならば、帝王学を学び王座から指示を出せばすむことでしょう。その他は王妃たる私がサポートすれば良いこと。しかし現王はまだまだ現役よ。王でなく皇太子として慰問や視察をするのならば、そこにいる人々や働く人々の立場に立たなければ理解できないこともたくさんあるのよ。
貴族ばかりが集まる舞踏会などで、ニコニコ笑顔を振りまいていれば良いだけじゃないのよ!だからかエドワードは、庶民にあまり人気が無いの。貴族令嬢には大人気ですけど!なのに側室にと近寄ってくる女性たちを、虫ケラだとか言って無礼打ちにしちゃうし。笑顔の大安売りをして、妙な誤解をさせるのが悪いんじゃない。私が側室を娶るなと我が儘を言っているとかいわれるし、令嬢たちには嫌がらせをされなりと、とばっちりを受けてるのに……
本当に困りものだわ……
「エリザベート嬢? 食が進まないみたいだが……」
あらやだ!ついつい物思いに耽ってしまったわ。
「すみません。つい婚約者のことを考えてしまいまして……皇太子さまは本当になにもできないんですよ。まあ王家の男性には、たしかに必要は無いかもしれません。王となり私が王妃となれば、その辺りは私が受け持ちます。しかしまだ王ではなく皇太子なのですから、郷に入れば郷に従って欲しいのです」
「そうだな。我が兄上も夫婦で視察や慰問に行くが、市政のものに混じり手伝いをしたりして親交を深めている。民に寄り添う良き王になるだろうと、庶民には慕われ周囲にはかなり期待されているな。だがこれは人によりけりではないのか? 庶民より数段上を歩き、そのカリスマで民を導く王という場合もある」
たしかにそうだけど……
「ねえリーダー。皇太子さまって、カリスマ性とかあるように見える? 民を導くような威厳があるようには、私にはどうしても見えないのよ……」
だってねぇ……いつものエドを見ていたらねぇ……。
「いくらなんでもそれは酷いだろ。たしかに皇太子さまはヘタレだ。しかしそれはエリーの前でだけだ。単独で公務に出る際は、キチンとしているぞ。虫ケラにもキチンと社交辞令の笑顔を振り撒いているしな。まあそれでよけいに群がられて、殺虫剤を撒き散らしてくるが……」
リーダー……殺虫剤ってなによ。しかしエドってばなにをしちゃってるの?嫌なら笑顔を振り撒きすぎなければ良いじゃない。
「皇太子さまも結婚すれば落ち着くだろ。まさしてや子どもでも出来れば、エリーだけでなく他にも目がいくさ。恋は盲目ってな」
「なんで私のせいみたいになるのよ」
「カリスマがどうのと言うからだ! たしかに皇太子さまは、エリー以外に興味がない。だから視察や慰問でも、他人に関わろうとしないんだ。だが違う面から考えてみろよ。私情を挟まずキチンと悪は裁き、国の発展のために尽くす。まあエリーに良く見られたいことが根本に有るみたいだが、それが活力になるなら良いじゃないか。国をより良く采配するのが王の一番の仕事だろ? 市政のことはエリーが教えてやれば良い」
それはそうかもしれないけど……
「国民に興味のない国王ってどうなのよ? 」
「王には柔軟な考えも必要だ。周囲に優秀な側近たちがいるならば、国王は全面に出る必要はない。市政のことなどは、側近たちが進言してくれるだろう。大切なのは他国や自国の高位貴族との駆け引きだ。皇太子さまはその点は優秀みたいではないか。裏の顔もある様だしな」
「そうそう。皇太子さまの裏の顔は凄いぞ。悪人には待ったなしだからな。ヘタレなだけじゃない。だから正しい貴族たちからは、多大な信用を得ているんだ。側近もそんな奴らばかりどからな。だから心配するな。エリーは弟くんのためにも、違う方面で頑張ってくれ! 」
……リーダー?最後の一言はよけいなお世話よ。どうやって頑張れと言うのよ!それを言うならリーダーだって!
「あら? そういえばリーダーは、男爵さまになられたんでしたっけ? しかも来月には結婚式だとか?さらには私たちが結婚したら、子爵さまになるのよね? しかも一代限りではない世襲貴族よ。違う方面で頑張るのは、リーダーも同じなのではないのかしら? 」
「くっ……そうだよ! だから皇太子さまは策士だから大丈夫だと言ってるんだ! まさかエリスが伯爵家の令嬢だったなんて! 誘われて気軽に遊びに行ったら、家族総出で大歓迎だ! 完璧に外堀を埋められたわ! しかも爵位を一代で返上なんてならぬように、必ず後継を残せだと! まあ考えてみたら当然だよな。公爵家の侍女が、庶民のはずがないよな……」
「しかも惚れてしまったのはリーダーもだからね」
「くっ……」
皇太子さまはリーダーを、皇太子妃予定の私の護衛に推挙した。しかしリーダーの実家は伯爵家ではあるが、嫡男ではないため爵位は継げない。まあ実家の後ろ楯が有るからそれでも構わないけど、出来れば己で爵位を持って欲しい。爵位持ちしか入れない場所も有るので、私の護衛をするならやはりそうなるわよね。そんなわけでまんまと皇太子さまからの、ハニートラップにかかったの。もちろんローズマリーみたいなアバズレではないわよ。我が家に侍女として仕えるくらいだから、身分も後ろ楯もしっかりとしている。
しかもエリス嬢本人が、我が家に出入りするリーダーに惚れてしまったと言うじゃない。私には事後承諾だったけど、こればかりはエドの采配に感謝だわ。あちらのご両親も四女ともなれば、裕福な商会辺りへ嫁げれば良いと思っていたそうなの。だからリーダーは嫡子ではなくともやがて爵位を貰え、将来的にはさらに上を確定されている。将来性のある優良物件だと、諸手をあげて大賛成しているそうよ。
なにせ皇太子さまのお墨付きですから!
「皇太子さまが早く結婚しろとせっつくんだよ! エリーの周囲に独身者がいるのが気に食わないらしい。俺以外の護衛の選択肢の一番は既婚者だぞ。俺はエリーなんかに惚れたりしないわ! 」
「エリーなんかってなによ! 失礼ね! 」
あら?この蒲焼き丼は、ご飯の間にも蒲焼きが挟まっているのね。でもこのタレが絶妙よね。白いご飯に絡んで本当に美味しいわ。蒲焼き丼を頬張りながら、カップにされた蓋を外しお吸い物という汁物をすすう。
「このお吸い物ってのも美味しいわね。香りが良くて優しい味がするわ。中に入っているのは茸みたいね」
「いきなり話を変えるな! まったく仕方がないな。それは松茸という茸のスープだそうだ。本物のウナギの場合は、肝を使い作るらしい。だが今回の素材は肝が使えなかった。本来は串焼きにも使うそうだが、急遽松茸に変更したそうだぞ」
まあ本物のウナギとは違う素材だもの。まったく同じに料理はできないわよね。でも蒲焼きもお吸い物も本当に美味しい。本来とは違う魔物の素材でも、これだけ美味しい料理にしてしまう、アリーは本当に凄い料理人よね。
「ほらそれからこちらが茶碗蒸しで、これらの串焼きは松茸ところ茸だ。こちらの串は焼き鳥というそうだ。鶏肉に鶏皮、レバーに軟骨。照焼より少々あっさり目のタレで焼いてある。色がついていないのが塩を振って焼いたもの。帝国の庶民の屋台料理だと。素材は魔物の鶏モドキだがな」
養殖の鳥は高価だもの。庶民にはやはり魔物の肉がポピュラーよね。しかし美味だわー。
「リーダー。長い説明をありがとう。取りあえず先に食べましょう。王子さまはもう食べ終わってしまったのですか? なら良ければ……」
私はマジックバックより、マリエンヌの作ってくれたフルーツ大福を取り出す。ついでに茶器をだし、緑茶を淹れ王子に差し出した。
「これは……帝国の和菓子に似ているな……たしか苺の入ったものは有ったような? あれはアリーさんが提案したのだったか? 」
「ええ。私も話を聞いて帝国に興味を持ちました。我が国には前世の記憶持ちという、転生者が存在します。私の妹もその一人ですが、その妹が前世の記憶を頼りに作り上げたものです。その文化が、帝国とかなり類似しているそうです。美味しいので是非食べてみてくださいな」
第二王子さまは興味深そうに眺めたのち、苺の大福を口にした。さらに私はカレーパンを追加した。これはアリーさんが作ってお土産に持たせてくれたものを、マリエンヌが再現してくれたものよ。さすがにこのカレーは、帝国にはないみたいね。カレーはまだアリーの食堂でも試作段階で、王子もまだスープした味見したことがないという。第二王子さまは私が指輪に魔法を付加したことを含め、我が国にかなり興味を持ってくれたようね。
「ふう。ご馳走さまでした。王子さま、お待たせしてしまい、申し訳ございません。招待状の件、楽しみにしております」
「いやいや。こちらこそ有意義な時間をいただいたよ。しかし前世持ちか……興味深いね。妹さんにも、美味しかったと伝えて欲しい。皇太子さまには……そちらの都合にお任せしよう。ではクリスマスには、是非王宮に泊まって下さい」
第二王子さまをお城まで転移で送ろうかと申し出たが、馬車を待たせているからといわれて別れた。転移の魔法を使えることにも驚かれてしまった。
帰り際に食堂を覗くと、まだまだかなり混雑していた。アリーに会えないのは残念だけど、今日は諦めましょう。邪魔になってしまうわね。
「おい! 今並んでたお客さんたちが話していたんだが、アリーさん妊娠したらしいぞ。どうやらハネムーンベイビーらしいな。シーグリンダンジョンで気付いたそうだ。めでたいな」
アリー……やはり当たっていたのね。まさかダンジョンで無理したのかしら?でめ元気そうに働いているから大丈夫よね。
その後私たちは国に戻った。エドワードにはもちろん、なにも喋らなかった。リーダーにもしっかりと口止めをした。
しかし……
「なぜキャラウェイ王国から、クリスマス晩餐会の招待状が来たんだ? しかも第二王子からの招待状だ。親交があったのか? エリザベート? 」
まったく疑り深いわよね!
「第二王子さまはキャラウェイ王国代表で、アリー夫妻とともに諸外国を回っています。私は正国の復興支援で、何度かお会いし話もしております。もちろんアリーも一緒です。私がアリーと懇意にしているので、ご招待してくれたのでしょう。エドは行きたくないのですか?」
「……いや……王宮の客間を使わせてくれるそうだ。ぜひとも参加させて貰おう」
やったー!なんだな邪な気を感じるけど、行けるのは嬉しいわね。
「実はその招待状とともに、かの国の王直々から、ブライアンへの釣書が同封されていてな。王国の侯爵家と伯爵家の女性がお相手だ。先々の友好のためにも、側室にどうかとの話だ」
はて?なぜブライアンに?ブライアンには姫君の婚約者がいるのよ?
「まあ強制ではないが、一応渡しておいてくれ。もちろん見合いは、姫君と正式に婚姻してからだ。あちらもそれで構わないと言っている」
「でもなぜブライアンなのかしら? 」
「私が側室を拒否しているのは有名だからな。だがブライアンの婚約者は、側室を認めている王家の姫君だ。その心構えもキチンと教育されているはずだ。だからだろうな。キチンと正妻の立場を立て、王家の血の入らない家の令嬢を選んでいる。後々要らぬ問題を起こさぬ対策だろう」
それは……考えてくれるのはありがたいけど、私がその釣書を手渡すの?絶対に嫌みを言われるじゃない。
「ブライアンに悪いが、私はエリーにしか欲情しないんだ。だからエリー……」
こら!こんなところで顔を寄せないで!あー!リーダーが逃げた!もう仕方ないなぁ……
少しだけよ……
ブライアンごめんなさい。悪いとは思うのだけど、側室を拒否するエドを、内心では嬉しいと感じてしまう私もいるの。でも無理なら断っても良いのよ……
「はいストーップ! これ以上のオイタは駄目です。この手は何ですか? 」
「……もう少しくらい進んでも良いのではないのか? 」
「こんな場所では嫌です! 」
「なら場所を変えよう! 」
いきなり私を横抱きにすると、護衛を蹴散らし客間に運ばれてしまいました。
返事を間違えたわね……
でも最近は昔の様に嫌悪感は無くなったから……
「エド? 節度は厳守よ……んっ……んんぅ……」
私たちは少し仲良くなりました。
こうして年末のクリスマスの日、私とエドは正式に、キャラウェイ王国を訪問することとなったのです。
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この続きは……
【コラボ中♪専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。&相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)】
になります。こちらは、【専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。】側からの視点となります。アリー視点です。
エリーとエドの視点からも書く予定でしたが、少々無理の様ですみません。
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穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
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