前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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2章

38話:番人との死闘

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 「ここに触れてと」

 俺が触れたその瞬間周りの逃げ道が塞がるように光の壁が出現。そして首なしの剣をもった魔物が目の前に現れた。

 「これはヤバいんじゃ……」
 「ああ。バリアを貼っておくから隅っこにいてくれ」

 カゲロウを隅っこに行ってもらい結界を貼る。現れたデュラハンはデュラハンの外見をしているが、ただのデュラハンではないのは一目瞭然だった。不気味に黒く光る体に首からでるモヤはデュラハン系統の魔物の残忍度を示す大きな指標だったはず。赤黒いということは確か最上級だ。

 ダークアヴェンジャー
レベル300
種族:魔法生物
攻撃:100000
防御:100000
魔法攻撃:100000
魔法防御:100000
素早さ:100000
魔力:100000
固有スキル:狂剣アヴェンジャー、暗黒回帰

 少しは骨のあるやつがでてきたな。迷宮にいたレジェンドドラゴンと同等ぐらいかな。

 「ちょいと本気出すか……」

 魔法もありの本気の態勢をとり戦闘に臨む。

 ちょいとばかし不死鳥のスキルで試したいことが……

 獣種系の異能は覚醒というものがある。これは身体を極限まで鍛え限界を超えた時に覚醒する。その場合異能のランクが上がり、だいたいB以下のやつはAに。AのやつはAAになるが、古代種系統のAAと幻獣種系統のSのやつは覚醒してもランクは上がらない。ただ一つある希少種は例外であるが……

 パーフェクトメモリーに加えて、魔神の力によって得られる身体能力は、俺を覚醒段階まで持っていくのに時間はかからなかった。覚醒すると普通種と古代種は水、火、風、土、氷、雷の六属性のどれか一つを習得。幻獣種はもともとどれか一つが習得されていて、さらに光と闇の属性が付与される。希少種は未知だ。

 迷宮では忘れてて使わなかったが今回は使わせてもらおうか。

 「光炎撃!」

 アヴェンジャーにまず一発当ててから、体を不死鳥の炎で身を包み、炎の翼で飛び回る。スピードはこちらほうが上みたいなので、攻撃を当てるのは容易だ。

 「光炎槍!」

 光の炎の槍を受け、アヴェンジャーは攻撃を受けよろける。この程度に遅れをとる俺ではない。

 「いいね~この感触昔を思い出すぜ」

 宝物庫シャッカンマーから武器を具現化させ落とす。しかし敵も雑魚ではないので、それを剣で薙ぎ払いこちらに向かってくる。

 「デザートクラッシュ!」

 不死鳥化に加えて砂を発生させる。しかし敵もガードせず、剣を振り闇属性の無数の斬撃を繰り出すので、予想外で攻撃を受けてしまった。こいつクラスの攻撃をモロ喰らえば、流石に無傷というわけにはいかないからな。

 「ぐっ……」

 周平は後方に下がり態勢を立て直す。血を少し出したが不死鳥の能力で傷口を一瞬で塞ぐ。魔神の力も再生の力が備わっているが、そちらの再生スキルは不死鳥の力以上に強いのであえて使わない。というかこの程度の敵に必要はない。

 「少し血をだしちまったか……にゃろ」

 宝物庫から剣を一つ具現化させる。

 「轟覇剣ヴォルティジュール!」

 大きなこの大剣は、伝説級の武器で、昔魔大陸の方にあった独裁国家を滅ぼした時の戦利品だ。

 「黒天流剣術……覇剣!」

 大剣を扱う剣術の一派がおり、それが黒天流だ。実際にそこで習い習得し、大剣でなくても使えるが、大剣を使う為の流派だけに大剣でこそ真価を発揮する。アヴェンジャーはそれを受け止めようとするが耐えきれず体を貫通する。

 「口ほどにもないな。とどめのヘルフレアだ!」

 黒炎で対象を包み込み燃やし尽くす第八位階魔法だ。アヴェンジャーは炎に包み込み消滅、手元に落ちたアヴェンジャーを拾い宝物庫へ入れる。宝物庫は級の高い武器や防具を入れると自動的に解析してくれる。

 狂剣アヴェンジャー
ランク;伝説級。
かつて復讐のために狂気に走った男が魔力を込めて作った武器。その男は復讐を果たし武器を完成させるとともに剣に食われた。

 「へへっ、ありがたく頂戴するぜ」

 宝物庫にしまい登録をした。

 「さて奥へ……」
 「周平まだだ!」

 その瞬間カゲロウの声と共に不吉な声が俺の耳に入る。

 「アンコクカイキ……」

 ダークアヴェンジャーは姿を変え、首をはやした該骨の姿になりローブを纏う。

 レベル300
エルダーリッチ(闇貴族ダークロナルド)
種族:アンデット
攻撃:200000
防御:200000
魔法攻撃:200000
魔法防御:200000
素早さ:200000
魔力:200000
固有スキル:神破魔軸空間、物理攻撃無効、消滅の奥義

 「ハマジク……」

 空間全体を大きな光が囲う。

 ハマジクとは任意の空間でも魔法の使用を不可とする、魔術師殺しの第十位階魔法だ。本来なら第十位階魔法である、魔力の海を使えば第十位階魔法や神魔法の行使を可能にできる。しかしこいつは固有スキルで、それをこの空間全体に作用させるかつ、神魔法が付与されているので創生魔法以外はこの空間では使うことができないだろう。

 ハマジクや神魔法も、もちろん俺は習得はしているが当然無意味だ。

 「うわぁ……物理無効に強化版のハマジクかよ……面倒な……」

 昔魔法しか能のない高位魔導士にこれをしたらみんな涙目だったな。

 「しかしこいつはどうすんだ?物理攻撃は得意そうには見えんが……」

 エルダーリッチは呪文を唱えた。

 「アプソリュートエクスターミネーション……」

 周平の周りに黒い爆発が発生する。呪いの効果が付与される攻撃なので耐性がない人間がくらえばひとたまりもないだろう。

 「これは呪術か……しかも最上級のやつ……」

 呪術とは魔族やリッチなんかが使う呪いに特化した術だ。エルダーリッチなら使えて当然か……ならこっちも呪術で応戦かな。魔神となれば希少な特殊術の大半は習得している。呪術は人が使うには難しい術で、安易に使い呪いを受ければ死ぬ可能性もある危険な術だ。

 「黒呪天!」

 リッチの足元に魔方陣が発生し黒い波動で包み込むがあまり効果はないようだ。物理攻撃無効に魔法なしで呪術も聞かんとは……

 「さらに呪術耐性もありか……」
 「ソンナンジャワタシハタオセンナマジンヨ……」

 ダークロナルドはさらに呪術を唱えた。

 「アブソリュートゼロ……」

 俺の体を不気味に光る蒼黒い何かが包み込み、包み込まれた部分は自由を奪われる。普通の人間なら体が一生呪われる悪魔の術だ。

 「くっ……」

 無理やり黒い何かを振り払うがその隙を見逃さない。

 「クロノサン……オンネンのヤリ……」

 凄まじい数の黒槍が俺の体を貫く。

 「うっ……」
 「周平!」

 体を激痛が襲う……痛みを我慢し後ろに下がって槍を抜いた。

 「クソが……」

 槍を抜き傷口は再生させたが痛みが多少残っている。痛みの呪詛の槍とか処刑でも使わねぇっての。魔神だから付与された呪い効果を全部レジストしてるけど、常人ならあれ刺さった時点で呪いだけで即死だ。

 「しかし楽しませてくれるなおい……これだよ……俺が望む死闘は!」

 血がたぎり本能が俺を動かす……ぶっ潰しがいがある……こんな戦いに俺は飢えているのだ。やはりこれぐらいでないとつまらないな。

 さてどうするか……

 ただ倒す為には、冷静になって頭も上手く使わんとだがな。物理攻撃は効かないし、魔法も無理となると魔神モードになるしかないが……だがそれだと負けた気分だな。

 「いでよ!聖剣カラドボルグ!」

 剣を手に近づき斬りつける。これでどうなるか検証だな。

 「ムッ……ヤッカイナケンダ……」

 斬りつけた感じでこの反応、少しはダメージが通る。つまり物理攻撃は無効にしても、聖剣に付与された光属性の攻撃は通るという事だ。

 「これならやれるな……」

 これで駄目なら大人しく魔神モードになるが、これでいけるはずだ。

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