コード・エデン

かりん

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第一章 邂逅

決着

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EMPの閃光がバシルの足元を揺らがせたその瞬間、レイナの体は疾風のごとくマルゴの懐に迫っていた。

マルゴが義腕を振りかざすが。

キィィィン――ッ!

レイナのブレードが義腕の肘関節部を正確に斬り裂いた。

電気火花が散り、義腕がギシギシと異音を立てて動きを止める。

「チッ……!」

マルゴが即座に後退する。

その肩から先、義腕の指先がかすかに痙攣し、動作不全を起こしていた。

レイナは追撃に転じようと一歩踏み出す。

だが、次の瞬間。

ブォンッ!!

マルゴの腕がとてつもないスピードで殴りかかってきた。

レイナは避けきれず、腕の一撃を腹部に受けて吹き飛ぶ。

「……ッ、ぐ……っ!!」

ドガァッ!

背中からコンソールに激突し、吐息が漏れる。

「壊されたのは表だけだ。甘ぇな」

マルゴが不敵に笑う。

義腕の内部から、新たな義腕が起動する。

ゴオオオッ……と低い音を立てながら、義腕が再び動き出す。

「いいじゃねぇか……やっとウォーミングアップが終わったぜ」

レイナは苦悶の表情を浮かべながら立ち上がる。

「……っ」

その間に、バシルが再び接近してくる。

重力ハンマーが再び構えられ、今度は横薙ぎに艦橋を切り裂くような軌道で襲いかかる!

レイナは床を転がって回避するが、艦橋の片壁が粉砕され、火花が飛び散る。

「バシル!戦闘不能に追い込むだけで十分だ。殺すつもりはねぇ。この女よく見たら可愛い顔してやがる。生きたまま引きずり出して、レグザの借金代わりに売ってやるぜ!」

「うるさい……」

レイナの目に、静かな怒りが灯る。

だが息が荒い。

すでにダメージが蓄積し、動きにわずかな遅れが出始めていた。

マルゴとバシルの連携が徐々に本来の形を取り戻し、二人の包囲の輪がレイナを締め上げていく。

それでもレイナは満身創痍のままブレードを構え、再び前へと踏み出す。

前へ踏み出したレイナにマルゴの義腕が高速で突き出され、レイナは寸前でブレードを斜めに構え、刃の腹で衝撃を受け流す。

「チッ……まだこんなに動けるのかよ」

マルゴが舌打ちをするのと同時に、背後から。

ゴオオォォン!!

バシルの重力ハンマーが振り下ろされる。

レイナは直前にバク宙で後方に跳び、衝撃波をギリギリで回避。

だが、着地のタイミングを見計らったように、マルゴが襲いかかる。

「逃がさねぇぞッ!」

ガッ!!

レイナはブレードで受けたが、電磁装置の衝撃が再び体を貫く。

「っ……あ、あああっ……!」

地面に転がるように倒れ、コートの肩口が焼け焦げていた。

(……まずい、反応が鈍ってる…)

痛みで指先が震える。

それでもレイナは、膝を突いたままブレードを離さなかった。

「今度はもっと吹き飛ばす!」

バシルが両腕でハンマーを持ち直し、真上からの一撃を構える。

その瞬間、マルゴがレイナの前方へと踏み込み、義腕で押しとどめる形を取る。

「動けねぇなら、そのまま潰されろ」

連携だった。

バシルの一撃は、マルゴの背後越しに狙っていた。

レイナの動ける範囲をマルゴが塞ぎ、その一点に絞った攻撃を。

(……完全に、読まれてる……!)

咄嗟にレイナは身を沈め、足元にあった破損コンソールを蹴ってバシルの射線からわずかに外れる。

ゴゴォォン!!!

ハンマーが着弾した床は完全に抜け落ち、艦橋の一角が煙と火花に包まれる。

だがその衝撃波は逃げきったレイナにも届き、吹き飛ばされた彼女は床を転がるように滑っていった。

「ぐっ……は、っ……!」

血が口元から垂れる。

ブレードを支えに、レイナはなんとか片膝をつく。

息は乱れ、視界が揺れる。

(ダメージの蓄積が……今のままじゃ耐えるだけで潰される…)

マルゴが不敵な笑みを浮かべたまま、じりじりと距離を詰めてくる。

「なぁお嬢ちゃん?確かにお前は強い。だが、それが一人で戦える限界なんじゃねぇか?」

「……黙れ」

レイナの声は、かすれていたが、確かだった。

「……まだ、終わってない」

レイナの声が艦橋にかすかに響いた直後。

「誰が一人だって?」

艦内全体に、低く響く男の声が。

マルゴの眉が動く。バシルがぴくりと反応を見せた。

直後、艦橋の前方スクリーンが強制的に起動し、宇宙空間の映像が映し出される。

映るのは、黒く鋭い船体、その艦影は、砲撃を振り切って突入してくるレグザ号。

その艦首には、焦げた装甲と傷跡が刻まれながらもなお、堂々と突き進む。

「回避行動を取れ!!あの馬鹿突っ込んできてるぞ!?」

通信が入る。

『やっほーう、レイナ元気か~?あれ、死にそう? だったら今行くわ』

操縦席から聞こえるのは、レグザのいつもの軽口混じりの声。

マルゴが歯を食いしばった。

「ふざけやがって……!」

「バシル! 迎撃命令を出せ!」

「クルーのみんな!!早く撃ち落とせ!」

バシルが叫ぶが、時既に遅し。

艦橋全体が揺れる。

ドォォォン!!

直後、レグザ号が突き破るように艦橋近くに船体を接触させた。

火花、煙、警報。全システムが錯乱する中で、開かれるレグザ号の側面ハッチ。

煙の中から、いつもの軽薄な笑みを浮かべてレグザが現れた。

「遅ぇって思ったろ?俺もそう思う」

レイナがわずかに目を細める。

「……ばか」

「はいはい、褒め言葉として受け取っとくわ」

レグザはレイナのそばに歩み寄り、彼女の肩に軽く手を置いた。

「ちょっと休んでろ。あとはお師匠様がまとめて片付けてやるよ」

レグザはゆっくりとレイナの前に立ち、コートの裾をはためかせながら艦橋中央へ歩を進める。

「さてと……まとめて片付けてやるって言ったからには手加減なしでいかせてもらうぜ」

マルゴが義眼をぎらつかせながら睨みつける。

「てめぇ……! 逃げてばかりだった腰抜け野郎が今さらヒーロー気取りかよ!」

「違ぇねえ。俺は逃げてばっかだった腰抜け野郎だよ」

レグザはふっと笑いながら、額の包帯に手をかける。

「けどよ……弟子が泣く姿は見たくねぇんだわ」

包帯がほどけて落ちる。

第三の眼が、静かに開いた。

その瞳は、冷静に敵の動きと殺気、空間の歪みすら捉えている。

「行くぞ」

マルゴが吼えるように指示を飛ばす。

「バシルッ! 同時に潰せ!」

「レグザ、排除!ぶっ潰す!」

ドンッ!!

バシルが重力ハンマーを振り上げ、マルゴが義腕を加速させる!

だが、

レグザの姿が消えた。

ズガンッ!!

バシルの装甲が一部弾け飛び、巨体が仰け反る。

「なっ…」

「まずはお前からな」

レグザの声が風のように滑り込む。

次の瞬間、マルゴの義腕が空を切る。

「……っのやろう!!」

マルゴが叫ぶが、レグザの回し蹴りが義腕の接合部に直撃。

ギギッ――バチッ!

ショート音と共に義腕が沈黙。マルゴはよろけながら下がる。

「おいおい、こんなんで俺の弟子一人に手こずってたのか?」

バシルが吼えるように突撃する。

「ぶっ潰してやる……!!」

「はいはい、ぶっ潰されるのはどっちかな」

レグザが背を向けたかと思った瞬間。

素早く飛び上がったレグザがクルッと一回転して、踵落としがバシルの頭部装甲にめり込んだ!

ガギィン!!

衝撃で地面にヒビが走る。巨体がバランスを崩し、レグザがその隙を逃さず拳を打ち込む。

「重いだけの武器はな、俺の速さには勝てねぇんだよ」

ドゴォォッ!!

バシルが沈黙する。

その光景を目の当たりにし、マルゴの顔色が明らかに変わる。

「……くそが……!」

レグザは肩を鳴らしながらゆっくりと歩く。

マルゴの拳が震える。

だが、レグザは手を振り、挑発するように言った。

「ほら、来いよ。次はお前の番だ」

マルゴの義眼が赤く輝く。

「……なめやがって……!!」

怒号と共に、マルゴの義腕が唸りを上げて加速する。

高速回転する拳が、空気を裂きながらレグザに迫った。

「てめぇがッ……この俺をッ!」

ドガンッ!!

レグザは体を半歩ひねり、回避。

義腕が通過した瞬間、レグザの手刀がカウンターで義腕の肘裏に突き刺さるようにめり込む。

「無駄が多いんだよ、お前の動き」

マルゴが歯を食いしばりながら、もう一撃。

しかし、レグザの第三の眼がうっすらと輝き、軌道を完全に先読みしていた。

「その義腕、軸が甘くなってるな。焦って打ちすぎだ」

バシュン!

レグザの左肘がマルゴの側頭部に突き刺さる。

マルゴがよろける。だが倒れない。

「ふざけるなあああッ!!」

雄叫びと共に、義腕が高出力の電磁パルスモードに切り替わる。

装甲ごと焼き潰すような一撃。

「食らいやがれえええッ!!」

ズガアアアッ!!!

マルゴの拳が直撃したかに見えた瞬間。

レグザの姿が、かき消える。

「……なッ!?」

直後、背後から声が響いた。

「狙った場所に俺がいると思った時点で、負けなんだよな」

ドゴッ!!

振り返ったマルゴの腹部に、レグザの膝蹴りが突き刺さる。

呼吸が止まり、マルゴが膝をつく。

「……くそ、が…」

レグザは一歩引いて、最後の一撃を構える。

ズドンッ!!

回し蹴りがマルゴの義眼を砕き、男の巨体が艦橋の床を引き裂くように倒れ込んだ。

静寂。

火花が散る艦橋の中心に、ゆっくりと立ち尽くすレグザの影。

レグザは息をひとつ吐き、振り返る。

レイナが、床に手をついて立ち上がろうとしていた。

「……」

「一丁上がり~」

レイナはしばしレグザを見つめ、ぽつりとつぶやいた。

「…やっぱり師匠は…強い……」

レグザは肩をすくめて笑う。

「師匠が師匠らしくしねぇと、弟子にナメられるだろ?」

そして彼は、レイナに向かって手を差し伸べた。
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