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卒業パーティー
しおりを挟む遂に卒業パーティーの日。
今日、私は婚約破棄される。
しかも、婚約破棄された女なんてもう使い物にならないから、家も追い出されるでしょうね。
いや、追い出されるで済むのかな。
あの当主様のことだから死刑にされるかもしれない。
まあ、いいか。
それぐらい何ともないや。
どうせ生きていても何も出来やしないし。
幸せになんてなれないよ。
華やかなファンファーレと共に、国王陛下が登場なさる。
「これより卒業パーティーを開始する。」
陛下のこの言葉で、皆がざわざわし始める。
始まってしまった…
帰りたい………。
「シュリエル・ミルネシアル!!!貴様にはほとほと愛想が尽きた!!貴様の愚行は目に余る!!貴様のような性悪女は、この国の王妃に相応しくない!よって今ここに婚約破棄を宣言する!そして、ここにいるミリアと婚約させていただく!」
ああ、私は見世物になるのね。
小説で読んだことがあります。
私の立ち位置は、ヒーローとヒロインを邪魔する当て馬ですかね。
「承知致しました。では「ちょっとお待ちください。」」
え?
私の発言を遮ったのはリースレイ様。
「殿下。今の発言、撤回してはいただけないでしょうか?」
「何を言っている?何も間違ったことを言っていやしない。それよりも、無礼だ。まさかお前、シュリエルの差し金か?本当に悪女だな!
生粋の悪魔め!」
え、ええ?
話が飛躍しすぎてついていけません。
「いい加減にしないか!!!!」
国王陛下が声をあげる。
まさか、陛下まであの子の味方をなさるの?
「ほら!父上も仰っておるぞ!!!」
「いい加減にするのはお前だ!ヴァンノエル。」
「なっ!父上!何故ソイツの味方をなさるのですか!?」
「…数日前、王家で保管していた宝石が盗まれた。犯人は探す間もなく見つかった。だが、捕まえずに泳がせておいた。何かボロを出すだろうと踏んでいたからだ。今日、その犯人を今ここで断罪する!」
「ち…父上?何を…………?」
「ヴァンノエル。身分で騎士を脅し、金庫を開けさせ、宝石を盗み出した犯人はお前だな?」
「な、何を根拠に!!!!そ、そんな訳あるわけない!!」
わかりやすく動揺し始める婚約者様。
いや………元婚約者様?
「証拠はある。決定的な証拠がな。お前の隣にいるご令嬢がつけているものは、王家で保管されていた宝石に違いない。おおかた、誰かに唆されでもしたのだろう。愚かな者よ。」
「ぐぅ!で、でも、王家で保管されていた物は王家の物ではないですか!!王家の物ということは私の物ではありませんか!!!」
「そうよ!ノエルは国王になるのよ!?アンタたち、頭が高いわよ!!!!」
今まで空気だったミリア様が金切り声で応戦する。
ええ?もう言葉が見つからないよ。
「この、大馬鹿者!!!!!!王家の物は王国の物なのだ!!私利私欲のために使うものでは無い!!!!それぐらいも分からぬというのか!!…………………まあ良い。時にヴァンノエル。その宝石が王家で保管されていた理由を知っておるか?いや、知らぬから持ち出すのじゃろう。」
「理由……………?」
覇気のない声で問う。
「その宝石はな、魔石なのだ。身に付けた者の心と身体の美醜を同じにする効果がある、な。そして、身に付けた者が手で触れた相手にも効果が感染する。恐ろしい魔石じゃ。そろそろ効果が出る頃であろう。」
「…………………ぎゃああああああああああああああ!!!!!!痛い!いだい!!!!だずげで!!!!!!!!!」
「み、ミリア?」
突然痛がりだしたミリア様。
「どうした?っ!?ぎゃああああ!ば、化け物だ!!!!!!!!」
「っひ!」
「っきゃああああああ!!!!!!」
誰かが悲鳴を上げた。
ミリア様のお可愛らしい容貌が、今では見る影もない。やけ爛れた皮膚に、くぼんだ目。緑色の肌。程よく肉がついていた豊満な身体はやせ細り、骨が見えている。
「ば、化け物め!!おい!!!誰か!!!!コイツを殺せ!!!!!」
「いやあああああああ!!!何よコレ!?こんなのアタシじゃない!!!!こんなの認めないわ!!!何でこんなことに!?そうだ、ヴァンノエルのせいだ!!アンタがもっと上手くやれば!!!!!!」
ミリア様がヴァンノエル様を殴る。
「ぎ、ぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ああ、ヴァンノエル様もミリア様のような姿に。
怖いですね。
正に地獄絵図!!
「騎士よ!この者達を捕らえよ!手には触れるでない!!!」
「「「「「はっ!」」」」」
騎士様達があの人達を運んでいく。
一件落着………?
陛下がこちらを向かれる。
「シュリエル嬢、本当に申し訳なかった。我の教育が至らなかった。」
「へ、陛下!?私は気にしておりませんので、頭をお上げくださいませ!!」
「いや、これは1人の親としての頭だ。国王としてではない。」
ど、どうしよう。
「陛下。シュリエルちゃんが困っていますよ。」
リースレイ様が助け舟をだしてくださった。
ありがたい。
「でもね、シュリエルちゃん。もう、一人で悩まなくていいんだよ。」
優しい笑顔を向けてくる。
や、やめてよ。
そんな顔で見られる資格なんて、捻くれ者の私には無い!!!
「あ、ありがとうございます…!」
大丈夫、ちゃんと喜んでるように見えてるはず。
涙を流して頬を上気させればいいよね?
これで、悲劇から救われた可憐な令嬢の出来上がり。
「皆様も、迷惑をおかけいたしましたわ。もう、大丈夫でございます。どうぞ、お楽しみくださいませ。」
皆の意識が他に移る。
はあ、大丈夫、まだ大丈夫。
さて、収拾が着いたところで、気分が悪い。退出させて頂こう。
「ごめんなさい。気分が優れないので、夜風にあたってきてもよろしいかしら?」
大丈夫、私はまだやれる。
平静を装って礼をする。
ちょっと不自然なタイミングだったけど、仕方ないよね。
早く…逃げたい……!
この世界からいなくなってしまいたい…!
気持ち悪い!気持ち悪い………………!
少し駆け足で、でも優雅に見える程度で急ぐ。
今はヴァンピィア様にも会いたくない。
何処か遠くへ行きたい。
確か…森があったはず…!
夜空に浮かぶ綺麗な満月を見ると、焦燥感が胸を支配する。
森に入って、全速力で走る。
気がつくと、崖の上にいた。
崖の上にはちょうど座れるぐらいの石があったから、座って一人静かに空を見上げる。
どれぐらいそうしていたのだろう。
寒くなってきた気がする。
ふと、崖の下を見てみる。
正に断崖絶壁。
底が見えない。
落ちたら一溜りもないよね。
「落ちたら楽になれるかな………。」
呟きは夜の空気に紛れた。
「エル?」
そう、思いたかったのにな。
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