【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

文字の大きさ
242 / 257
第十章 Pedal to the Metal

祭禍—⑩—

しおりを挟む
「……ブルース、これって――」

「サキ、だよ……」

 サキの戸惑った目線が、両膝を突いた“ケンティガン”に向く。

 彼女自身も自分の考えた方法の有効性を、信じられないようだった。

 上手くいったことに。

「要は、杖型の“命導巧ウェイル・ベオ”:“スペルバウンド”だ……アイツがあったときは、ちゃんと“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を使えていた」

 ロックの目に映る、膝を突いている大柄な男の背。

 彼は強敵かもしれなかった。

 しかし、

「あらゆる生物は“電気的特性エレクトロ―ム”を持つと言われている。身体全てに電気が流れ、信号を各部分に送られる……それが、子宮の中で決まった姿形になり、成長して、自己治癒力を働かせるのも生体電気のおかげだ」

 ロックは“ケンティガン”の違和感の正体が、“命熱波アナーシュト・ベハ”使いの戦い方をしていないこと。

 その言語化に一役を買ったのがサキだった。

「……“ケンティガン”、その体内電気を――!?」

「そう、使える。ただ……同時に

 ブルースの言い回しに、サキが振り向く。

 訳が分からず、首を傾げるが、

「人間を覆う皮膚は損傷すると電気が流れる。上皮と呼ばれる組織の三層構造の中で“表皮”が外側を向いている。上皮全体で全体に電圧が発生するが、皮膚が傷を負っていない時は、電位を上皮。傷を負った時は内側の皮膚層に負の電位が発生する」

 ロックの一言で、サキの中で何かが繋がったのか、

「つまり、体内電気がそれを異常として全身に伝える」

「表皮の上層部が切断されると、電解質の“ナトリウムイオン”と“カリウムイオン”が漏れ出す――いわば、になり、電界が身体の異常を伝える防犯アラームの役割となる」

 ブルースが補足する。

「本題はここからだ……“ケンティガン”の。他の“リア・ファイル”にも。傷を負った電界への治癒の再生も早い。しかし、それが意味することは――」

「そうか!! “スペルバウンド”で、体内電気を調整していた……だから、あの時は“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を出せたけど、今は――」

 ブルースの言葉を引き継いだロックに、サキが声を上げた。

「杖が壊れ、、“が“!! “磁向防スキーアフ・ヴェイクター”も!!」

「しかも、は、くらい!!」

 ブルースが右手の“ヘヴンズ・ドライヴ”の鍔の銃口を、“ケンティガン”の頭部に固定する。

 彼の詰問する視線に、“ケンティガン”は沈黙を保っていた。

ということは……“ケンティガン”の体内電気が、“使。特に、ブルースの“命熱波アナーシュト・ベハ”と“命導巧ウェイル・ベオ”による“疑似物理現象”をから体内電気と“リア・ファイル”で防御をしていた」

 一平の“命熱波アナーシュト・ベハ”と“命導巧ウェイル・ベオ”の戦い方を、ロックは言葉と共に思い出す。

 彼は“命導巧ウェイル・ベオ”による攻撃は出来ていたが、“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”という防御を使えていなかった。

 その際に“爆衝烈拳ドーン・ナ・セーイジェ”というで、どうにか対処をしていた。

 一平は、まだ“命熱波アナーシュト・ベハ”使いとして、素人だから分かる。

 だが、最強の“命熱波アナーシュト・ベハ”使いである“”という“にしては、

「だから、ロックとサキに“ケンティガン”のを攻撃させた……“真名”まで解放していたら、体内電気や攻撃で溜めた指向性熱力エネルギー向いていないからな!!」

 “ケンティガン”の眼が、ブルースの見下ろす視線を捉える。

 彼は――ロックから見て――沈黙を保っている様に見えたが、歯を食いしばっていた。

 口元から涎を出し、身体が奮えている。

 損傷ダメージを回復しながら、攻撃をしていたのだろう。

 、まだ、相手をねじ伏せられた。

 しかし、攻撃に全部を割り振っていた中、背後からのロックとサキ、それぞれの攻撃の回復のために熱力エネルギーを全身へ送った。

 全身を回復させる為の行為が――皮肉なことに、“ケンティガン”を過熱オーバーヒートに追い込んだのだ。

「確かに、……」

 ロックは肩を竦めて言うと、サキに眼を向ける。

――また、助けられたか……。

 サキの機転の早さには、ロックも感嘆している。

 しかし、彼女に賛辞を贈る気にはなれなかった。

 “死神へルター・スケルター”の降臨。

 原田 龍之助の“愛されし者の右眼ザ・アイ・オブ・ジ・ビラブド”で、食い止めているとはいえ、その復活も時間の問題だった。

 その為に使われた、堀川と秋津も助けなくてはいけない。

 彼らは未だに、“祭壇”の両端に、“死神へルター・スケルター”の不可視の力で、宙に張り付けられている。

 極めつけは、

「コイツ等、止まんねぇよ!!」

「一平、近距離は得策じゃない!! 特に“芝打”を使っていた“政市会”連中を媒介に、“命熱波アナーシュト・ベハ”封じが来るかもしれない!!! 距離を取ろう!!」

 両手甲に付けた“命導巧ウェイル・ベオ”:“ライオンハート”の炎混じりの拳撃を放っていると、サミュエルに言われて、後退。

 “爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ”による炎の榴弾を両手から放ちながら、“死神へルター・スケルター”の手足と化した元政治団体の構成員を数人単位で吹っ飛ばしていく。

 一平と背中合わせにサミュエルが、散弾銃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“パラダイス”から“金剛風波スプレア・ガイエッフ”で、を蹴散らした。

 彼らの背後にいるのは、原田 龍之助。

 彼の右眼の力を止めようとする“死神へルター・スケルター”の軍勢を、シャロン、“バイス”と“ライト”も、サミュエルと一平から外側を中心に近づけない様にしていた。

「さて、こいつはどうする――」

 ロックは“ケンティガン”から、離れた。

 ブルースとサキも同じく、“ケンティガン”を囲う様に見ていたが、ロックに合わせて後退する。

 俯き、身体の治癒能力が発動して動けない“ケンティガン”の身体が、ロック達の眼の前で上昇した。

 銀の鎧の戦鬼の顔が強張る。

 彼の身体を覆うのは、だった。

「これは、“”!?」

 ロックは、“ケンティガン”を掴む右手が、青白い炎に覆われた扁桃頭の巨人――“スターマン”――のものと気づく。

 巨大な人型“ウィッカー・マン”の右腕に掴まれた“ケンティガン”の身体が、ロックの眼の前で青白い炎に包まれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

処理中です...