【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第二章 Ambush

混迷―⑦―

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 肥満太りをした“政市会”の男が両腕を突き出し、“スウィート・サクリファイス”の銃撃をロックに見舞う。

 ロックは、“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を展開しつつ、両腕を頭に交差させる。

 銃撃をかい潜りながら、“政市会”員である肥満男の間合いに到達。

 ロックは右肘を上から振り下ろし、肥満男の左腕を下す。

 胴への守りを開けた後、頭に向け肘の迫撃砲を放った。

 肥満男は仰向けで倒れようとするが、ロックは男の丸々とした胴から伸びる右手で左腕を掴む。

 すかさず、ロックは肥満男の背後に回り込んだ。

 左腕をねじりながら肥満男の後頭部を鷲掴みにして、

「少しを仕立ててやるぜ!!」

 ロックはそう言って、肥満男を盾に突進。

 前方には“政市会”員たちが、“スウィート・サクリファイス”を構えている。

 肥満男が拒絶の声を上げるが、“政市会”員たちは

 間もなく、“スウィート・サクリファイス”の一斉射撃の弾幕が展開。

 弾雨が肥満男に降りかかる。

 肥満男の盾を構えロックは、“スウィート・サクリファイス”の弾幕を張る第一陣に突入。

 射手の一人と衝突すると、ロックを避けるために他の”政市会”員は蜘蛛の子を散らす様に避ける。

 ロックはすかさず、右側へ肥満男の盾を大きく振った。

 間合いを取ったと思い込んだ20代の量販店のライトダウンベストの男の顔面と、ロックの拘束する肥満男の顔面が命中。

 互いの歯片と血を散らしながら、ライトダウンベストの男を弾き飛ばす。

 ロックは時計回りに肥満男を振り回した。

周囲から放たれた“スウィート・サクリファイス”の銃撃を防ぎきる。

左手にいた、白身がかったデニムを履いた20代の女と薄手のニットを着た40代の女に、血まみれの顔となった肥満男を左足で蹴り飛ばす。

足蹴にされた肥満男が、女性二人を押しつぶした。

間合いを詰め切られ、20代の若い男二人がロックに肉弾戦で勝負に出ることを選ぶ。

 手前の男が左足を前に、右拳を振りかぶった。

 ロックは前傾姿勢で、男の拳よりも素早く潜り込む。

 鉄板を仕込んだ右足で、支柱としていた男の左膝を蹴り潰した。

 一人目の男が膝を抱え、体全体を使って叫ぶ。

二人目の男がその声に驚いた隙を突いて、ロックの右拳の突風が吹いた。

顎を抉らんばかりの一撃が、慣性の法則に従い男の身体を吹っ飛ばす。

背後の“政市会”会員も大の字に宙を舞う男に巻き込まれる形で、倒される。

 倒された”政市会”員の眼に、のロックが映った。

会員たちは――男女問わず――重くなった腰を上げ、背を向ける。

 そこに、炎が“政市会”会員に続く。

 ロックは炎の出所にすかさず移動。

 赤い人型とトルクを着た背広の男性に、ロックは両肘を前にした突進を仕掛ける。

 男は衝撃で盛大に体幹を揺らした。

 前後に揺れ、顔がロックに迫ると、右肘の迫撃砲で突き上げた。

 ロックの攻撃で倒れる男。

 その背後にいた、“政声隊”の隊員にロックは攻撃の手を止める。

 ロックの目の前にいたのは、少女だが呆然としている。

 そして、立つことすらもやっとの状態に思えた。

ロックが、彼女が“S.P.E.A.R.スピア”の代表である二つ結びの少女、秋津 澄香と認識するのに時間がかかった。

 S.P.E.A.R.スピアの代表と言われる、秋津 澄香という二つ結びの少女には人型は愚か、首元のトルクすらない。

 しかし、彼女は言葉にできない何かに息を詰まらせている様な顔をして、彼女全体学問の色を帯びている。

 ロックが一歩踏み出すと、土瀝青アスファルトが弾けた。

 “スウィート・サクリファイス”の弾丸と分かると、ロックは飛んできた方向を見据える。

 視線の先にいたのは、上万作あまんさく学園のブレザーを着た青年――堀川 一――だった。

 彼の腕に付けた羊の頭蓋の眼は、震えながらもロックを見つめ返す。

「……なんで?」

 呆然と聞き返したのは、秋津の方だった。

 彼女はまるで、自分の記憶全てを消され、荒地に放り出されたような顔を堀川に向ける。

 “政市会”と“政声隊”。

 二つの団体は、対立する。

 そして、ロックに立ちはだかる“政市会”の堀川は、秋津の問いに答えない。

 いや、

 まるで、答えたら、自分がここから消えかねない。

 彼の蒼白な顔に汗が出始め、不規則な呼吸が出ていた。

 それでいて、堀川のロックを見据える鋭い視線は、彼が秋津へ接触するのを拒んでいる。

「ロック……どうするつもりだ?」

 後ろから問いかける一平の声にふと驚き、振り向いた。

 “政市会”と“政声隊”――厳密に言うと、S.P.E.A.R.スピアも含まれているのだろうが――が、“スウィート・サクリファイス”と“コーリング・フロム・ヘヴン”の応酬をしている。

 しかし、そんな雑音にまみれ、闘争心の渦の中心にいたロックの中で、一平の声が一際、澄んでいた。

「……掛かって来ないなら、何もしない」

 ロックはぶっきらぼうに答える。

 ロックとしては、秋津は愚か堀川も攻撃対象には含めるつもりはなかった。

 ロックの目の前の堀川は、“スウィート・サクリファイス”を構えつつも、どこか安堵した表情を浮かべる。

 しかし、堀川と秋津の眼が強張った。

 彼らの目に映る、ロック。

その背後にいた、“スウィート・サクリファイス”を構える“

“スウィート・サクリファイス”の狙いは、秋津を捉えていた。

「ちょっと待って!!」

 堀川の目に映るのは、秋津を狙う“政市会”会員の迎撃を試みる一平。

 しかし、彼が“ライオンハート”を構えた時には、“スウィート・サクリファイス”に既に青白い光が宿っていた。

 ロックは青白く光る羊の頭蓋へ駆ける。

 青白い敵意の光が放たれる寸前。

「ロック!!」

 凛とした声が響き、“政市会”会員を無数の光が包み込む。

 それから、煌きと爆轟が炸裂。

 “政市会”会員の男は、意識を刈り取られて、その場に倒れた。

 ロックは、倒れた“政市会”会員の背後に立つ少女を見た。

「サキ」

 女子用ブレザーを着た、黒い髪と眼の少女の名を呼ぶ。

「サキ、それ何?」

 一平が素っ頓狂な声を上げる。

一平の興奮は、まるで新しい玩具を目にする子供のようだが、サキは手にしている得物について答えない。

「“プロジェクト:信念フェイス”……こんなところにまで持ち込むかよ……」

 サキが手にするのは、蒼く大きな片刃に、軽機関銃の把手の付いた“命導巧ウェイル・ベオ”。

「ロック、止めて。そして、投降して」

 サキの持つ“命導巧ウェイル・ベオ”、“フェイス”と同じくらい鋭い眼差しが舌打ちするロックを捉えた。
 
 

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