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第二章 Ambush
混迷―⑧―
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――まあ、怒っているよね……。
河上サキは、ロックを見て考える。
隣にいる親友の一平が、なぜ“命導巧”を持っているかについては気にしたらキリがないので黙殺することにした。
どちらかと言えば、
「一平……大人しく投降して? そうじゃないと、リンカさんにあのこと言うよ?」
前髪を明るい橙色に染めた、硬骨漢の同級生の顔が真っ青になり、
「……おい、少しは抵抗しろ、な?」
ロックの抗議も空しく、一平は両手を上げて、サキの立っている場所から見て、右にそれる。
そうして、サキの真ん前にロックだけが残った。
「全く……って、一平、少し待て!! リンカって――」
ロックの一平への詰問は、一筋の光が遮る。
ロックの顔を焼きかねない一撃は、彼女の短髪の守護者――ライラ――が放った。
ロックの顔に悔しさの色が、どこか苦虫を食い潰したような顔に染まる。
「ロック、投降して?」
「しなきゃどうするってんだ……?」
ロックの相貌に映るのは、サキと彼女の命熱波――“フェイス”。
さらに、彼女の守護者である、“命熱波”――ライラとヴァージニアの二体。
『無論……』
『ボコでしょ!!』
鶏冠の兜を被ったヴァージニアに、短髪のライラが続く。
「口が達者になりやがったな……お前のペット。この喧嘩、安くねぇぜ?」
「そう言うのも『想定通り』……ブルースからね」
サキは校門を背に立つ。
彼女はロックの眼にそう映っていた。
しかし、ロックの目に映るサキと背後にある校門。
その向こうに立つ男。
上質な狐の毛皮を思わせる髪に、茶色のジャケットを着たブルースというロックの保護者だった。
「じゃあ……ブルースの知らない言葉だ。サキ……選べ、道を開けるか、くたばるか!!」
口の両端を歪めた、猛禽か猛獣の笑みを浮かべたロックはサキの前から消える。
土を蹴る音と共に、サキの目の前の空間が爆ぜた。
ロックが左腕で頭を傾け、精一杯伸ばした右腕から放たれた拳打。
それが、サキの寸前で止まる。
ライラとヴァージニアの出した“磁向防”がロックの猛攻からサキを守ったのだ。
ライラとヴァージニアの背後から見える、ロック。
ロックの双眸は、苦悶に満ちた二人のサキの守護者を捉える。
サキは、彼の獰猛な笑みを見て、
「来るよ!!」
サキの声と共に、三つの衝撃。
ロックの左拳から始まる連撃が、ライラとヴァージニアを大きく振るわせた。
『“リア・ファイル”で身体能力を強化しているだけなのに、こんなにも強い!!』
『全く、この脳筋ゴリラ!!』
ヴァージニアとライラが口々に言い、
「テメェら……好き放題言ってくれるな……なら、もう一つ食らってみるか?」
サキの視界からロックが一瞬消える。
刹那、サキの顎の下から風が吹き、
『サキ、離れて!!』
ヴァージニアの声と共に、サキが後ろに下がる。
サキの前に移動したヴァージニアに不可視の爆撃が炸裂。
ロックの突き上げた右拳が、鶏冠の兜の守護者の前面を大きく抉ったのだ。
満月を映す湖面の様な右眼が、苦悶に消えるヴァージニアを見送る。
夜の湖面の眼がサキを捉えると、そこに一筋の光が疾走った。
『サキから離れろ、この脳筋金髪ゴリラ!!』
短髪の守護者の右手が煌く。
右手は細身の光の剣となって、斬撃がロックに放たれた。
ライラの右手の剣は、ロックの残像を切り裂いた。
ロックが十一時の方向へ移動すると、サキは“フェイス”を向ける。
サキは引き金を引くと、片刃が青白く煌いた。
“フェイス”から蒼白の弾丸が放たれ、空を灼く。
ロックが右掌を突き出した。
金髪碧眼の青年の前で、蒼白い爆炎が上る。
遅れて衝撃が駆け巡り、周囲を震わせた。
震動によりロックは苦悶と共に、後ろに押される。
土瀝青を両踵で抉るほどの衝撃はロックの体幹を震わせ、顔に苦悶が宿った。
ロックの痛みに堪え、吊り上がる眼は“フェイス”を構えるサキを見据える。
ロックの目に映るサキの黒い髪と黒曜石の瞳は蒼い炎の残滓をまとう。
闘志に満ちた彼の眼の中のサキに一切の揺らぎはない。
サキの眼は、ロックの背後を覆う三対の“スウィート・サクリファイス”を捉えた。
顔を破壊された肥満男を中心に、二十代と四十代の女性がロックの背後を捉える。
ロックの苦悶、サキの出現に、彼ら“政市会”会員は好機を見たのかもしれない。
しかし、サキの眼に映る“彼ら”を見たロックに隙は無い。
ロックが即座に屈む。
時計回りに上半身をねじり上げたロックは、右の肘鉄砲で肥満男の右側にいた二十代女性の右顎を砕いた。
顎を砕かれた女性は歯と流血をまき散らす。
ロックの攻撃は、肥満男と中年女性に向いた。
そして、サキはその隙を逃さない。
サキはロックに向けて、“フェイス”を構える。
“フェイス”の刃を下に据えた下段の構えで、彼女は駆けた。
サキの間合いにロックが入ると、下から上へ“命導巧”を斬り上げる。
サキの刃は、ロックの胴を切り裂かなかった。
切り裂いたのは、“政市会”の肥満男。
彼の胴の下から上を蒼白い刃が疾走る。
再度盾に使われた男の背後にロックはいない。
今度は一時の方向にいたロックから、サキの胴に向けて左直蹴りが放たれる。
サキの苦悶の表情を、会心の笑みを浮かべるロックが捉える。
二人の交差する視線に、ライラが乱入。
ロックの左蹴りを直にうけ、熱力の波紋がライラを覆う。
そんなライラをかき消す様に、火球が降り注いだ。
河上サキは、ロックを見て考える。
隣にいる親友の一平が、なぜ“命導巧”を持っているかについては気にしたらキリがないので黙殺することにした。
どちらかと言えば、
「一平……大人しく投降して? そうじゃないと、リンカさんにあのこと言うよ?」
前髪を明るい橙色に染めた、硬骨漢の同級生の顔が真っ青になり、
「……おい、少しは抵抗しろ、な?」
ロックの抗議も空しく、一平は両手を上げて、サキの立っている場所から見て、右にそれる。
そうして、サキの真ん前にロックだけが残った。
「全く……って、一平、少し待て!! リンカって――」
ロックの一平への詰問は、一筋の光が遮る。
ロックの顔を焼きかねない一撃は、彼女の短髪の守護者――ライラ――が放った。
ロックの顔に悔しさの色が、どこか苦虫を食い潰したような顔に染まる。
「ロック、投降して?」
「しなきゃどうするってんだ……?」
ロックの相貌に映るのは、サキと彼女の命熱波――“フェイス”。
さらに、彼女の守護者である、“命熱波”――ライラとヴァージニアの二体。
『無論……』
『ボコでしょ!!』
鶏冠の兜を被ったヴァージニアに、短髪のライラが続く。
「口が達者になりやがったな……お前のペット。この喧嘩、安くねぇぜ?」
「そう言うのも『想定通り』……ブルースからね」
サキは校門を背に立つ。
彼女はロックの眼にそう映っていた。
しかし、ロックの目に映るサキと背後にある校門。
その向こうに立つ男。
上質な狐の毛皮を思わせる髪に、茶色のジャケットを着たブルースというロックの保護者だった。
「じゃあ……ブルースの知らない言葉だ。サキ……選べ、道を開けるか、くたばるか!!」
口の両端を歪めた、猛禽か猛獣の笑みを浮かべたロックはサキの前から消える。
土を蹴る音と共に、サキの目の前の空間が爆ぜた。
ロックが左腕で頭を傾け、精一杯伸ばした右腕から放たれた拳打。
それが、サキの寸前で止まる。
ライラとヴァージニアの出した“磁向防”がロックの猛攻からサキを守ったのだ。
ライラとヴァージニアの背後から見える、ロック。
ロックの双眸は、苦悶に満ちた二人のサキの守護者を捉える。
サキは、彼の獰猛な笑みを見て、
「来るよ!!」
サキの声と共に、三つの衝撃。
ロックの左拳から始まる連撃が、ライラとヴァージニアを大きく振るわせた。
『“リア・ファイル”で身体能力を強化しているだけなのに、こんなにも強い!!』
『全く、この脳筋ゴリラ!!』
ヴァージニアとライラが口々に言い、
「テメェら……好き放題言ってくれるな……なら、もう一つ食らってみるか?」
サキの視界からロックが一瞬消える。
刹那、サキの顎の下から風が吹き、
『サキ、離れて!!』
ヴァージニアの声と共に、サキが後ろに下がる。
サキの前に移動したヴァージニアに不可視の爆撃が炸裂。
ロックの突き上げた右拳が、鶏冠の兜の守護者の前面を大きく抉ったのだ。
満月を映す湖面の様な右眼が、苦悶に消えるヴァージニアを見送る。
夜の湖面の眼がサキを捉えると、そこに一筋の光が疾走った。
『サキから離れろ、この脳筋金髪ゴリラ!!』
短髪の守護者の右手が煌く。
右手は細身の光の剣となって、斬撃がロックに放たれた。
ライラの右手の剣は、ロックの残像を切り裂いた。
ロックが十一時の方向へ移動すると、サキは“フェイス”を向ける。
サキは引き金を引くと、片刃が青白く煌いた。
“フェイス”から蒼白の弾丸が放たれ、空を灼く。
ロックが右掌を突き出した。
金髪碧眼の青年の前で、蒼白い爆炎が上る。
遅れて衝撃が駆け巡り、周囲を震わせた。
震動によりロックは苦悶と共に、後ろに押される。
土瀝青を両踵で抉るほどの衝撃はロックの体幹を震わせ、顔に苦悶が宿った。
ロックの痛みに堪え、吊り上がる眼は“フェイス”を構えるサキを見据える。
ロックの目に映るサキの黒い髪と黒曜石の瞳は蒼い炎の残滓をまとう。
闘志に満ちた彼の眼の中のサキに一切の揺らぎはない。
サキの眼は、ロックの背後を覆う三対の“スウィート・サクリファイス”を捉えた。
顔を破壊された肥満男を中心に、二十代と四十代の女性がロックの背後を捉える。
ロックの苦悶、サキの出現に、彼ら“政市会”会員は好機を見たのかもしれない。
しかし、サキの眼に映る“彼ら”を見たロックに隙は無い。
ロックが即座に屈む。
時計回りに上半身をねじり上げたロックは、右の肘鉄砲で肥満男の右側にいた二十代女性の右顎を砕いた。
顎を砕かれた女性は歯と流血をまき散らす。
ロックの攻撃は、肥満男と中年女性に向いた。
そして、サキはその隙を逃さない。
サキはロックに向けて、“フェイス”を構える。
“フェイス”の刃を下に据えた下段の構えで、彼女は駆けた。
サキの間合いにロックが入ると、下から上へ“命導巧”を斬り上げる。
サキの刃は、ロックの胴を切り裂かなかった。
切り裂いたのは、“政市会”の肥満男。
彼の胴の下から上を蒼白い刃が疾走る。
再度盾に使われた男の背後にロックはいない。
今度は一時の方向にいたロックから、サキの胴に向けて左直蹴りが放たれる。
サキの苦悶の表情を、会心の笑みを浮かべるロックが捉える。
二人の交差する視線に、ライラが乱入。
ロックの左蹴りを直にうけ、熱力の波紋がライラを覆う。
そんなライラをかき消す様に、火球が降り注いだ。
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