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第二章 Ambush
混迷―⑨―
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サキが火球の放たれた方向を見ると、赤、白、青緑の人型を従えた五人の“政声隊”が並ぶ。
「野郎!!」
彼らに反応した一平が、“命導巧”を構える。
彼の両拳から放たれた橙の火球が、“政声隊”の列を崩した。
放たれた三発目で、“政声隊”はそれぞれ、二人、三人に分かれる。
二人組は、炎と氷の人型を伴い、一平に応戦した。
しかし、ロックとサキの前の三人組は炎と雷だった。
しかも、雷を携えたのが女二人。
二つの青緑の人型が右手に帯電し始める。
二人の狙いはロック。
サキが二人の女性のうち、一人へ“フェイス”を構える。
――もう一人は!!
サキが戸惑うと、底から震えるような声が響いた。
声の主はロック。
彼は、先ほどの“政市会”の会員で残った四十代女性の首根っこを掴む。
サキが姿を捉えたのはそこまでだった。
雷を撃とうとした“政声隊”女性に“政市会”女性がぶつかる。
“政市会”会員と“政声隊”隊員の距離としては、100m弱。
『うわ、エグッ!!』
ロックの投擲距離に、消えたライラが叫ぶ。
そして、サキはそんなライラに、
「ライラ、彼女を攻撃して!!」
短髪の守護者は驚きつつも、行動は早い。
二人目の雷の担い手へ、刃を振るうライラ。
その剣圧に、青白い人型と担い手が吹き飛ぶ。
「おっし、一丁上がり!!」
そういう明るい声の方を向くと、一平がいた。
彼の足元には、二人の“政声隊”隊員が倒れている。
「ったく、お前ら……色々積もる話はあるだろうけど、落ち着こうぜ?」
一平に言われて、サキは周囲を見る。
何人かはロックと一平によって倒された者たちだ。
“政市会”と“政声隊”の戦う者たちの中で、ロックとサキへ狙いを定めている。
「……俺は構わない」
ロックの一言に、サキは頷かない。
「……お前ら、何者だ……」
その声は、ロックを狙おうとした“政声隊”二人組の女の間にいた青年だった。
ロックとサキの攻撃に突如晒されたのか、腰を抜かせている。
彼の視線は不安定ながらも、ロック、一平に向けながら、
「デンウヨばかりか俺たちまで叩きのめしやがって……お前ら、誰の味方なんだよ!?」
男は顔を歪ませ、サキも糾弾する。
「どっちの味方……だと?」
ロックはサキに糾弾した男に向かう。
一歩ずつ力強く歩みながら、
「電脳右翼だろうが、電脳左翼だろうが……なんで、俺がテメェらの力になる前提で語ってんだよ?」
ロックの鋭い視線が、腰を抜かせた“政声隊”青年に刺さる。
距離は20mくらいだが、男の顔はまるでロックに首を絞めつけられているかのように、真っ青になっていた。
「“紅き外套の守護者”とはよく言うぜ……その名前と力、どっから来たのか考えたことがあるのか?」
ロックの男に向けた一言に、サキは息が詰まる。
『あなたという……物語は……終わらせない』
どこか、懐かしい声がサキの頭の中に響く。
そして、目の前で“政声隊”の男に、力強く一歩ずつ距離を縮めるロック。
そんな彼が血まみれで瀕死となっていた姿と重なる。
――これは……?
サキが戸惑いつつ、ロックから視線を逸らさない。
サキに頭痛が走る。
痛みと共に浮かんだのは血まみれのロックを優しく抱く、少女。
少女は、どこかロックに似ている雰囲気だが、儚さも持ち合わせている。
『私は……私の命を……あなたに』
少女の一言がサキの頭に響くと、
「漫画読むか? なら、全てのヒーローに起源があるよな……なら、俺にもあると思わないのか……この力と名を得た経緯がな……?」
ロックが笑みを浮かべるたびに、迫られた男から血色が失せていく。
しかし、ロックの笑みを見たサキは、
――涙?
ロックに似た雰囲気の少女が抱きしめ、涙を浮かべている。
『誰の為でもない、あなた自身が……この世界で――』
彼女の一言。
それが意味することを、サキは理解してしまった。
「俺は死にかけた……いや、もう死んでた。しかし、アイツに助けられた……アイツが、アイツの命と引き換えに!!」
“政市会”と“政声隊”の争いの声が、静まりつつあった。
しかし、サキはそれが誤りだと気づく。
静まるというよりは、ロックの戦叫とも言える慟哭によって沈黙に追いやられたのだ。
“政市会”、“政声隊”だけでなく、所在なさげに見つめる秋津や、彼女を守る堀川も、ロックの異様な雰囲気に引き付けられている。
「テメェらがありがたがっている力や名は……俺と共に、生きたいと願ったアイツの命なんだよ!! それをテメェらの勝手な美辞麗句のために、使えっていうのかよ!!」
ロックの目の前の“政声隊”隊員の男。
彼の目から焦点は消えていた。
涙や涎が流れ、股間が濡れている。
ロックが生気のない男に、右手を振り上げ、
「サキ!!」
一平が叫ぶ。
彼の叫びで、ロックは訝し気な顔を作るが、
「もう、十分だよ?」
サキは、ロックの目に映る自分の顔を直視できなかった。
「どけよ?」
「どかない!!」
ロックの前に立ちはだかるサキ。
「殴るぞ?」
「殴れば良いでしょ!?」
カナダのバンクーバーで、自らの力を利用されたサキ。
彼女はロックに助けられた。
それなら、
「私はあなたを止める。あの時のあなたと同じように……ライラやヴァージニアと一緒に……ファンさんと、あなたも悲しませたくないから!!」
ロックと初めて会った時から、彼はサキを誰かと重ねている。
その名前を初めて聞いた時、サキは確信した。
ロックは、彼女を失った。
その罪悪感に、今も縛られている。
「あなたを助けられるのは、あなたしかいない……でも、あなたのために出来ることはある……それは、あなたと戦うこと!!」
“フェイス”を構え、サキはロックと対峙する。
「……上等だ、アイツの名を出したなら、覚悟はできているんだろうな?」
ロックは“政声隊”の男に興味を失っていた。
しかし、ロックの奥底にあった名前を出したサキを敵と認識したようである。
ロックが地を蹴った時、サキとの間に影が疾走った。
ロックがサキに飛び掛かろうとしたが、彼は地に伏せられている。
『サキ、構えて!!』
ヴァージニアの声と共に、ライラがサキの前に出現。
命熱波による力場の衝突が、サキを震わせる。
「十分なのは、ロックと……サキ、あんたもだ?」
ハスキーな声の女性にサキは驚いた。
「和泉守先生!?」
サキは、ベリーショートの女性――和泉守 杏菜――の闖入に声を上げた。
彼女の両拳は、水色で銃口を思わせる装飾のついたグラブを装着。
彼女の右拳は曲線を描き、サキの顔面の寸前で止まる。
和泉守の曲線突きは、サキの二体の命熱波が防いでいた。
「クソッタレ……命導巧“ハンズ・クリーン”、そして、“水妖”まで出すかよ……」
ロックが苦し紛れに声を出す。
彼の周りは、水が覆っているが、どこかゼリーかスライムの様な粘体染みていた。
水の様な粘体は、ロックの首を中心に覆われている。
「あんたら、頭を冷やせ……みんな怖がっている中で、ぎゃあぎゃあしたら、更に人が離れるよ?」
和泉守 杏菜の眼は、サキの呆然とした顔を映す。
自分の敵意のない顔を見て、和泉守 杏菜はため息交じりで構えを解いた。
「それに、頭を冷やせ……一言一言嚙みしめると……相当な痴話喧嘩にしか聞こえないよ?」
和泉守 杏菜に促され、サキは自分の行動を思い出す。
込み上げて来たモノに思わず、ロックを見ると、
「そこで俺を見るな、バカ!」
「あ、ごめん」
サキは思わず謝ってしまう。
ロックがバツの悪そうな顔を作ると、
「アンナ……俺への拘束は――」
ロックの言葉がそこで途切れる。
「よく考えろ……お前が始めたことだ。あいつらが来たら解くから」
和泉守 杏菜に促されて、サキは周囲を見る。
警察と“ワールド・シェパード社”の犬耳装甲の兵士の姿が見え始めた。
その中には救急車も数台交じる。
騒ぎを聞きつけて、来たのだろう。
“ワールド・シェパード社”の社員が“政声隊”の隊員たちに駆け寄る。
救急隊員も加わり、ケガ人の手当てを始めた。
救急隊員は、“政市会”と“政声隊”に関係なく、重傷者は搬送していく。
警察は、軽傷者や無傷な人を対象に聞き取りをしていた。
「取り敢えず……ロック、河上……あんたらは、生徒指導室に来い。もう学校はこの騒ぎだったら、休校になるだろうね。あと、斎藤……逃げるな?」
“ワールド・シェパード社”と警察が集まる方へ行こうとした一平は、和泉守 杏菜に指摘されて足を止める。
項垂れた彼を横目に、サキはロックを見た。
ロックから“水妖”の拘束が解かれている。
彼は拘束されていた首や関節を回して、痛みを確認していた。
彼の双眸にもはや敵意はない。
しかし、ロックの隣にサキは目を引いた。
彼の隣には、白の服を着た少女。
彼女の眼が、どこか青緑色じみていたから。
「野郎!!」
彼らに反応した一平が、“命導巧”を構える。
彼の両拳から放たれた橙の火球が、“政声隊”の列を崩した。
放たれた三発目で、“政声隊”はそれぞれ、二人、三人に分かれる。
二人組は、炎と氷の人型を伴い、一平に応戦した。
しかし、ロックとサキの前の三人組は炎と雷だった。
しかも、雷を携えたのが女二人。
二つの青緑の人型が右手に帯電し始める。
二人の狙いはロック。
サキが二人の女性のうち、一人へ“フェイス”を構える。
――もう一人は!!
サキが戸惑うと、底から震えるような声が響いた。
声の主はロック。
彼は、先ほどの“政市会”の会員で残った四十代女性の首根っこを掴む。
サキが姿を捉えたのはそこまでだった。
雷を撃とうとした“政声隊”女性に“政市会”女性がぶつかる。
“政市会”会員と“政声隊”隊員の距離としては、100m弱。
『うわ、エグッ!!』
ロックの投擲距離に、消えたライラが叫ぶ。
そして、サキはそんなライラに、
「ライラ、彼女を攻撃して!!」
短髪の守護者は驚きつつも、行動は早い。
二人目の雷の担い手へ、刃を振るうライラ。
その剣圧に、青白い人型と担い手が吹き飛ぶ。
「おっし、一丁上がり!!」
そういう明るい声の方を向くと、一平がいた。
彼の足元には、二人の“政声隊”隊員が倒れている。
「ったく、お前ら……色々積もる話はあるだろうけど、落ち着こうぜ?」
一平に言われて、サキは周囲を見る。
何人かはロックと一平によって倒された者たちだ。
“政市会”と“政声隊”の戦う者たちの中で、ロックとサキへ狙いを定めている。
「……俺は構わない」
ロックの一言に、サキは頷かない。
「……お前ら、何者だ……」
その声は、ロックを狙おうとした“政声隊”二人組の女の間にいた青年だった。
ロックとサキの攻撃に突如晒されたのか、腰を抜かせている。
彼の視線は不安定ながらも、ロック、一平に向けながら、
「デンウヨばかりか俺たちまで叩きのめしやがって……お前ら、誰の味方なんだよ!?」
男は顔を歪ませ、サキも糾弾する。
「どっちの味方……だと?」
ロックはサキに糾弾した男に向かう。
一歩ずつ力強く歩みながら、
「電脳右翼だろうが、電脳左翼だろうが……なんで、俺がテメェらの力になる前提で語ってんだよ?」
ロックの鋭い視線が、腰を抜かせた“政声隊”青年に刺さる。
距離は20mくらいだが、男の顔はまるでロックに首を絞めつけられているかのように、真っ青になっていた。
「“紅き外套の守護者”とはよく言うぜ……その名前と力、どっから来たのか考えたことがあるのか?」
ロックの男に向けた一言に、サキは息が詰まる。
『あなたという……物語は……終わらせない』
どこか、懐かしい声がサキの頭の中に響く。
そして、目の前で“政声隊”の男に、力強く一歩ずつ距離を縮めるロック。
そんな彼が血まみれで瀕死となっていた姿と重なる。
――これは……?
サキが戸惑いつつ、ロックから視線を逸らさない。
サキに頭痛が走る。
痛みと共に浮かんだのは血まみれのロックを優しく抱く、少女。
少女は、どこかロックに似ている雰囲気だが、儚さも持ち合わせている。
『私は……私の命を……あなたに』
少女の一言がサキの頭に響くと、
「漫画読むか? なら、全てのヒーローに起源があるよな……なら、俺にもあると思わないのか……この力と名を得た経緯がな……?」
ロックが笑みを浮かべるたびに、迫られた男から血色が失せていく。
しかし、ロックの笑みを見たサキは、
――涙?
ロックに似た雰囲気の少女が抱きしめ、涙を浮かべている。
『誰の為でもない、あなた自身が……この世界で――』
彼女の一言。
それが意味することを、サキは理解してしまった。
「俺は死にかけた……いや、もう死んでた。しかし、アイツに助けられた……アイツが、アイツの命と引き換えに!!」
“政市会”と“政声隊”の争いの声が、静まりつつあった。
しかし、サキはそれが誤りだと気づく。
静まるというよりは、ロックの戦叫とも言える慟哭によって沈黙に追いやられたのだ。
“政市会”、“政声隊”だけでなく、所在なさげに見つめる秋津や、彼女を守る堀川も、ロックの異様な雰囲気に引き付けられている。
「テメェらがありがたがっている力や名は……俺と共に、生きたいと願ったアイツの命なんだよ!! それをテメェらの勝手な美辞麗句のために、使えっていうのかよ!!」
ロックの目の前の“政声隊”隊員の男。
彼の目から焦点は消えていた。
涙や涎が流れ、股間が濡れている。
ロックが生気のない男に、右手を振り上げ、
「サキ!!」
一平が叫ぶ。
彼の叫びで、ロックは訝し気な顔を作るが、
「もう、十分だよ?」
サキは、ロックの目に映る自分の顔を直視できなかった。
「どけよ?」
「どかない!!」
ロックの前に立ちはだかるサキ。
「殴るぞ?」
「殴れば良いでしょ!?」
カナダのバンクーバーで、自らの力を利用されたサキ。
彼女はロックに助けられた。
それなら、
「私はあなたを止める。あの時のあなたと同じように……ライラやヴァージニアと一緒に……ファンさんと、あなたも悲しませたくないから!!」
ロックと初めて会った時から、彼はサキを誰かと重ねている。
その名前を初めて聞いた時、サキは確信した。
ロックは、彼女を失った。
その罪悪感に、今も縛られている。
「あなたを助けられるのは、あなたしかいない……でも、あなたのために出来ることはある……それは、あなたと戦うこと!!」
“フェイス”を構え、サキはロックと対峙する。
「……上等だ、アイツの名を出したなら、覚悟はできているんだろうな?」
ロックは“政声隊”の男に興味を失っていた。
しかし、ロックの奥底にあった名前を出したサキを敵と認識したようである。
ロックが地を蹴った時、サキとの間に影が疾走った。
ロックがサキに飛び掛かろうとしたが、彼は地に伏せられている。
『サキ、構えて!!』
ヴァージニアの声と共に、ライラがサキの前に出現。
命熱波による力場の衝突が、サキを震わせる。
「十分なのは、ロックと……サキ、あんたもだ?」
ハスキーな声の女性にサキは驚いた。
「和泉守先生!?」
サキは、ベリーショートの女性――和泉守 杏菜――の闖入に声を上げた。
彼女の両拳は、水色で銃口を思わせる装飾のついたグラブを装着。
彼女の右拳は曲線を描き、サキの顔面の寸前で止まる。
和泉守の曲線突きは、サキの二体の命熱波が防いでいた。
「クソッタレ……命導巧“ハンズ・クリーン”、そして、“水妖”まで出すかよ……」
ロックが苦し紛れに声を出す。
彼の周りは、水が覆っているが、どこかゼリーかスライムの様な粘体染みていた。
水の様な粘体は、ロックの首を中心に覆われている。
「あんたら、頭を冷やせ……みんな怖がっている中で、ぎゃあぎゃあしたら、更に人が離れるよ?」
和泉守 杏菜の眼は、サキの呆然とした顔を映す。
自分の敵意のない顔を見て、和泉守 杏菜はため息交じりで構えを解いた。
「それに、頭を冷やせ……一言一言嚙みしめると……相当な痴話喧嘩にしか聞こえないよ?」
和泉守 杏菜に促され、サキは自分の行動を思い出す。
込み上げて来たモノに思わず、ロックを見ると、
「そこで俺を見るな、バカ!」
「あ、ごめん」
サキは思わず謝ってしまう。
ロックがバツの悪そうな顔を作ると、
「アンナ……俺への拘束は――」
ロックの言葉がそこで途切れる。
「よく考えろ……お前が始めたことだ。あいつらが来たら解くから」
和泉守 杏菜に促されて、サキは周囲を見る。
警察と“ワールド・シェパード社”の犬耳装甲の兵士の姿が見え始めた。
その中には救急車も数台交じる。
騒ぎを聞きつけて、来たのだろう。
“ワールド・シェパード社”の社員が“政声隊”の隊員たちに駆け寄る。
救急隊員も加わり、ケガ人の手当てを始めた。
救急隊員は、“政市会”と“政声隊”に関係なく、重傷者は搬送していく。
警察は、軽傷者や無傷な人を対象に聞き取りをしていた。
「取り敢えず……ロック、河上……あんたらは、生徒指導室に来い。もう学校はこの騒ぎだったら、休校になるだろうね。あと、斎藤……逃げるな?」
“ワールド・シェパード社”と警察が集まる方へ行こうとした一平は、和泉守 杏菜に指摘されて足を止める。
項垂れた彼を横目に、サキはロックを見た。
ロックから“水妖”の拘束が解かれている。
彼は拘束されていた首や関節を回して、痛みを確認していた。
彼の双眸にもはや敵意はない。
しかし、ロックの隣にサキは目を引いた。
彼の隣には、白の服を着た少女。
彼女の眼が、どこか青緑色じみていたから。
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