【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第二章 Ambush

混迷―⑥―

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 “政声隊”側の眼鏡の男の強襲に、ロックは右に跳躍する。

 眼鏡の男は口が大きく、肌のきれいなガマガエルの様だ。

 ついでに言うと彼の得物は、である。

 それに乗って、ロックを撥ねようとしたのだ。

 しかも、白い人型――“コーリング・フロム・ヘヴン”の“フロスト”――を召喚し、氷で自転車を覆う。

 ガマガエル男の駆る氷の装甲車が、ロックと一平の間に割り込む形で乱入したのだ。

 しかし、ロックは宙に浮いている間に、右の腰を反時計周りに入れた回し蹴りで応戦。

 右脚が、氷に覆われていないガマガエル顔の男の胴にめり込むと、盛大に自転車から横転する。

 横転した先には、“政市会”のスポーツ刈りの男が“スウィート・サクリファイス”を構えていた。

 ガマガエル顔の眼鏡男がスポーツ刈りの男を押しつぶす形で倒れる。

自転車のフレームと土瀝青アスファルトが削り合う音が響いた。

 ガマガエル顔の男の盗んだ自転車。

ロックは、後方部に貼ってあったラミネート加工のステッカーが貼ってあることに気づく。

 これが上万作あまんさく学園の生徒と一年生を表す、赤色。

 

“コーリング・フロム・ヘヴン”の“アンペア”による電撃。

 それが、ガマガエル顔の男の盗んだ自転車を反射したのだ。

 疾走はしる電撃が狙うのは、ロック。

 その電撃は一筋だけではない。

 十二時の正面だけでなく、十一時、一時、二時からも襲来。

 四つの雷鞭が、鎌首をもたげてロックに飛び掛かる。

――畜生が!!

 ロックは右掌を突き出す。

 歯を食いしばると、雷撃はロックの寸前で止まる。

 否、四つとも

 ロックの目の前に展開された方陣が、電撃を防ぐ。

 命熱波アナーシュト・ベハ熱力エネルギーを励起した磁向防スキーアフ・ヴェイクターだ。

 命熱波アナーシュト・ベハの際の余剰熱力エネルギーによる結界である。

 政市会会員による指向性熱力エネルギーを使った、“スウィート・サクリファイス”の弾丸。

 そして、“コーリング・フロム・ヘヴン”の三つの人型による攻撃。

これらを防ぐ上では、命導巧ウェイル・ベオでなくても命熱波アナーシュト・ベハの励起させた熱力エネルギーの障壁でも事が足りる。

 しかし、ロックの額から脂汗が流れた。

 ロックは右腕に走る痛みに、口を歪める。

 磁向防スキーアフ・ヴェイクターは、銃弾や炎、氷に雷を防ぐことは出来た。

 しかし、

 衝撃による熱力エネルギーがロックの腕を伝い、痛みが生じたのだ。

 炸裂した雷撃の輝きが落ち着き、四人の襲撃者の姿が現れる。

 30代の男女が四人。

 内訳は男が三人と女が一人で、何れも黒革の上下をまとっていた。

 多少小綺麗ではあるが――先ほど、ロックに色々こき下ろされたためか――

「……景気悪そうなツラだけど、バンドやってんならオーディション行って魂をシャウトして来いよ……誰かと吊るんで喧嘩よりは面構えがマシになるぜ?」

「そうね……を作って、やってみるわ?」

「抜かせ、ホダッドかぶれ……」

 ロックの吐き捨てた言葉に、黒革の女がシニカルな笑み――目元を鋭角に吊り上げながら――で応える。

 周りの男たちもロックへの嗜虐心を隠さず、青緑の“コーリング・フロム・ヘヴン”――“アンペア”――に攻撃の合図を送った。

 しかし、三体の“アンペア”が突如として

 三人の黒革男たちに、爆炎が炸裂した。

 黒革の女が驚愕する中、彼女の双眸が一人の青年を映す。

「そういうのウケねぇぞー?」

 双眸の青年――斎藤 一平――の言葉と共に、ロックの横を爆轟が駆ける。

 爆発の衝撃が女を覆い、彼女の意識を奪った。

「だって……そういうのって、こんなところに来る暇もないほどの特権だからな……」

 一平が呆れながら言うと、

「じゃなきゃ、ライブの合間に政治を語るレベル」

「同意。見る目は確かなようだ……」

 背後からの一平に振り返りながら、

「結構、倒したな」

 ロックが見た、一平の背後には“政市会”会員が男女問わず倒れていた。

 しかし、一平の顔は曇っている。

「もう少し、と撃つよりは、で殴り合いしたかったけどな……」

「そう言うな……これでも助かっている」

 ロックが正面を見ながら言うと、

「やっぱり、必要だったろ?」

 どこか誇った顔の一平にうんざりして、ロックは周囲を見る。

 “政市会”と“政声隊”の乱闘は続いていた。

 三色のトルクから出ていた人工命熱波アナーシュト・ベハを後援にして、腕っぷしの強い奴を前衛に出す政声隊。

それに対し、横一列に広がり“スウィート・サクリファイス”の銃撃で応戦する“政市会”。

 しかし、その中に含まれていないのは、

「やっぱり……狙ってくるよね?」

 一平の言葉にロックはため息で応える。

 両団体の交戦からあぶれた者は、同床異夢か呉越同舟と言わんばかりに、ロックと一平を視界に捉えていた。

「一平……俺は、“政市会”をメインにやるから――」

「わかってる!」

 一平の両腕の命導巧ウェイル・ベオ“ライオンハート”の咆哮が、“政声隊”の集団に轟く。
 一平の攻撃は、“政声隊”メンバーと青緑の人型のペアを倒していく。

 爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ

 物の燃焼は、可燃物、酸素の様な助燃材、点火源の三様素で成り立つ。

 一平の“疑似物理現象”は、“リア・ファイル”によって三要素を一まとめにしたものを撃つ。爆轟現象の衝撃で相手を打ち倒す。

 “コーリング・フロム・ヘヴン”の攻撃は、炎、氷に雷の三種。

 最も、厄介なのが電撃。

これは純粋に

 命導巧ウェイル・ベオのあるロックが遅れを取ることはない。

しかし、今、手元にない。

 一平が、青緑色の人型と組んでいる“政声隊”を撃ちつつ、

「ロック……お前、大丈夫なのか?」

 一平は余裕の笑みを浮かべている。

 しかし、目の奥には、ロックの舌打ちした顔を映していた。

「“リア・ファイル”を、ある程度はこっちで対応できる」

「よくわからんけど、『を使っているってのがわかった』……で良いんだよな?」

――お察しの通りだ!!

 ロックは心の中に留める。

 しかも、先ほどの黒革の四人組の攻撃から、“政市会”と“政声隊”が負傷したロックを見逃すはずもない。

 一平はその状況を読み、援護という形で攻撃していた。

 ロックはそう考えながら、“政市会”の一人に迫る。
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