遥か彼方にいる君は尊し

humi

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神住山の御利益

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 戸谷は美智恵達と登山サークルに加入しており、美智恵に相談と言われた時点で困惑をしてしまった。普段から押しが強く、我も強い美智恵はまた無理難題を押し付けてくるのは分かっていた。
「冬山って上るの初めてだけど、体力使うよね」
 戸谷達は今年の冬に神住山を登る事にしていた。半年前から同じサークル仲間の吉岡と共に綿密な計画を立てていた。
「当たり前だろ。その為に今、計画を詰めてるんだ」
「体力ある人知ってるんだけど、連れてっていい?」
「他校はダメだぞ。責任が持てない」
 美智恵が誰を連れて行きたいかを言う前に、戸谷は美智恵ならそれぐらいの事は提案してきそうだと予め断るが、美智恵の提案はまさしく戸谷の読み通りだった。
「早政大の飯原君って知ってる?」
 飯原は早政実高校時代に甲子園で活躍したプロ注目の選手だった。
「飯原と知り合いなのか?」
 野球に興味の無い無い戸谷ですら聞いた事のある名前だっただけに、戸谷は驚きを隠せなかった。
しかし、美智恵は会話をした事がある程度で、勝手な片思いでしか無かった。
「三ノ泉のブロッケンって知ってる?」
「えっ⁉︎」
「そこで飯原君に告白するの」
 三ノ泉は霧の中で太陽を背に向けると、ブロッケン現象という虹の輪を作り出す事で有名だった。更に三ノ泉を有名にしたのは、太陽の光と泉がタイミング良く重なると、光が屈折し虹の輪の上部が少し凹みハート型になる。霧で神秘的な泉にハートが重なり、それを背に告白すると恋愛が成就すると言われている。一時ブームになり、連日神住山に登山客が訪れていた。
「それって俺達が小学生の頃だろ?しかも、殆ど奇跡的な確率って聞いた事があるぞ」
「だから御利益があるんでしょ」
 戸谷は面倒くさがりな美智恵が、今回の登山に乗り気だった理由を理解できた。久し振りに聞くパワースポットの名前に、鞄から地図を取り出し、三ノ泉の場所を調べたが、戸谷の立てた予定のルート上には無かった。
「俺達のルートには入ってないから行けないぞ」
「じゃぁ、ルートを変えればいいじゃん」
 即答でルート変更を求める美智恵は安全に帰って来られる様に必死に情報を集めた戸谷の苦労などお構い無しで、飯原を同行させたいと強く望まれて、
その余りの熱量に苦労を伝えるのを諦めた。
「確かタカの友達に野球部の推薦で早政大に進んだ奴がいるって聞いた気がする。相談するならタカにしてみろ」
「流石、戸谷は話がわかる。頭が良いのに融通も効くよね」
 上機嫌に目を輝かせて、颯爽と戸谷から走り去っていった。
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