遥か彼方にいる君は尊し

humi

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飯原と上本

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 「悪かったな」
吉岡が上本に手を上げて、関係の無い上本を呼び出した事を謝った。そんな吉岡を余所に美智恵は上本の事などお構いなしだった。目の前に狙いを付けた飯原が座っている。普段は男子と然程背の高さが変わらない美智恵は座っていても存在感があるが、今は少し前屈みになり、少しでも背を低く、可愛く見せる事に躍起になっていた。トーマスは席を立ち上がり、飯原に握手を求めた。
「来てくれると思ったよ。ありがとう」
 そう挨拶すると飯原と握手をした。
元々吉岡はダメ元のつもりで頼み込んでいた。プロ注目の大学野球選手が、いくらリーグ戦が終わった後とは言え参加してくれる訳がないとタカを括り相談をしていた。しかし、返事は存外にOKだった。理由は山登りがトレーニングの一環につながるかも知れない事と、四年生になるとプロの事しか考えられなくなり、三年生の間にやりたいと思った事はやると決めていたからだった。
「但し、条件が2つある。その日以外は都合がつかない事と、上本も一緒に連れて行く」
「えっ⁉︎」
 付き添いの為についてきていた上本が驚いたように飯原を二度見した。
「全員が東都大生の中、俺一人が参加するのは面白くない。それに見た目と違って上本は体力がある。高校時代の上本はチーム一の持久力があった」
 飯原の言う見た目とは、上本は見るからに臆病さが前面に出ており、体格に勝る飯原に言われるがまま、断りもせずにモジモジとしている。
「でっ、でも」
 嫌という表情を全開にしている上本の肩を飯原が叩いた。上本の肩を飯原の大きな手が覆い、一瞬上本の体がソファーに沈み込んだ。
「お前も参加決定な!」
こうなってしまえば断る事が出来ない上本は力無く返事をした。
「やったぁ。ねぇねぇ飯原くん!」
さっきまで体をこれでもかと縮めていた美智恵が突然テンションを上げ始めて飯原を質問攻めにした。
「登山の練習なんて運動神経いいから要らないよねぇ」
「あぁ。当日必要な物だけ揃えるから後で教えてくれれば良い」
 普通に考えれば甘い考えにも程があるが、飯原にはそれでいけるのでは無いかと思える体格と逞しさがあった。
「私が大事な事はメモって届けるね」
 いつの間にか隣に座っていた上本を押し退けて飯原の隣に座り腕を組んで精一杯媚びてみせた。
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