遥か彼方にいる君は尊し

humi

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中村圭佑

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登山サークルが神住山に冬山登山する事を学校に報告すると同窓生の中村圭佑が参加を求めて来た。中村は好奇心旺盛で、将来は新聞記者になる事を目指しており、行事には全て参加し写真を撮り校内新聞として学校に張り出す変わり者だったが東都大に中村を知らない人間はいなかった。その理由は学生ながらに独自で取材していい、一年前に起きた東都大裏口入学を調べ上げ世間に公表したからだった。その取材方法は下劣極まりなく、盗撮に脅迫まがいの事を平気で行うと噂されていた。それでも中村が収めた写真はどれも証拠に足る物ばかりで世間を賑わせた。
「登山をした事はあるのか?」
メンバーをこれ以上増やす事に戸惑っていた戸谷はなるべく参加させたく無く、会話の中で断る口実を探そうとしていた。
「何度も登った。神住山も三度登っている」
登山経験者というだけで周りの見る目が変わるが、おおよそ団体行動の出来そうにない中村を参加させるのに戸谷は躊躇した。しかし、そこでも参加を決定したのは美智恵だった。
「参加決定!」
美智恵は最初から中村が参加するのに賛成しており、理由は目的地の三ノ泉で告白した後ブロッケン現象を背に飯原とのツーショット写真を撮ってもらう。それだけが理由だった。その美智恵の強引さに戸谷は押し切られてしまった。
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