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ⅳ
しおりを挟むあの日と同じ布団に重なるが、今夜はむさぼり合うように接吻をした。はじめてのことに対する恐怖心は消えぬが、蓮太郎は抵抗せずに平八に身をゆだねている。『その場所』を舌で舐め指で慣らそうとしても、まだ開かれたことのないつぼみは固く、眉間に縦筋を浮かべながら指の圧迫感をこらえている。かわいそうになるが、興奮は冷めやらない。しかし先ほど、その『つくり』をはじめて目にした平八は、しばらくきょとんとしてそれを眺めていた。
ー「はて……お前、これはいったい……」
蓮太郎の股のあいだにあったのは、"女と同じ"裂け目であった。その肉色をまんなかにして、両側には肉襞のようなものがわずかに膨れ、梅でいうなら青梅のごとくに未熟な様相を呈していた。しかしその上には、当然オスの象徴も備わっている。
まじまじと眺められていることに羞恥しながら、蓮太郎はか細い声で打ち明けた。
「……私にもわかりません。父には奇形だと言われました」
「奇形?」
平八が顔をさらに近づける。
「ああ、恥ずかしい……」
思わず脚を閉じようとするが、膝がしらをつかまれ阻止された。誰にも見せたことがなく、なおかつ人とは違う奇異なものをさらし、耐えがたい羞恥がこみ上げ、脚が震える。こんなにも真剣に見られていると、この生まれもった肉体に対する罪悪感すら湧いてくる。しかし平八の中には物珍しさとは違う、ある衝撃があった。
「お蓮……ひとつ聞くが、お前は陰花島と何かゆかりはあるかい?」
「……え?」
「話に聞いたことしかないが……男の肉体でコレというのは……陰花の血統に特有の構造だ」
股を開かれたままのクロが、困惑顔で平八を見やる。
「お前の命はキツネとヒトの混紡であるといったな」
「はい」
「……キツネは梅岡のとっつぁんだとして、それじゃあヒトというのはいったい何者であろう。いや、そのキツネとて、はたして本当にとっつぁんだろうか」
「…………」
梅岡とは違い、クロのしっぽは墨のついた筆先のように、先の方が黒くなっている。だから簡素に『黒』と名付けられたのだ。シロは『白咲』という名の妖狼であり、毛色は銀だがアダ名としてシロと呼ばれているだけである。
キツネならキツネ、オオカミならオオカミ、白なら白、黒ならば、黒。
血はつながっていなくとも、梅岡に狐火を吹き込まれたなら、それと同じ真っ白な尾になるのではないだろうか。そもそもこのような模様の入った尾のキツネを見たことがない。
「うっ……」
フゥ、と吐いた息が蓮太郎の薄桃の皮膚にかかり、思わず身をすくめた。
「おう、悪りいな」
「いえ……」
「……いや、すまん。身体にケチをつけたわけじゃない。とっつぁんが奇形というのならそうなのだろう。俺は細かいことがいちいち気になるタチなんだ」
「そうですか……それよりも、あの……もう、そうして眺められるのは、本当に恥ずかしいです……」
「何を言うか」
ニヤリと笑い、腿に軽く歯を立てる。
「やっ……」
それだけで鳥肌が立つが、間髪入れず粘膜に舌を這わされ、蓮太郎はビクリと身体を震わせた。
「とんだ据え膳だ。……俺で悔やむなよ」
指を抜かれたあとの穴に、亀頭があてがわれる。ふたりの粘膜は潤み、平八のモノは一刻も早くその中に種を撒きに入り込みたいと訴えるが、クロはやはりまだ怖いままであった。
だが、平八だから受け入れたいと感じている。そうすれば、この人はもうカンタンに離れたりしないはずだと、根拠のない期待まで抱いて。
「あなたが僕を捨てたりしない限り、悔やみません」
「捨てたらどうする」
「次は殺します」
「殺すか」
「殺します」
クロの手が平八の両肩にかけられ、ぐいと引き寄せられた。
「ああ、でもやっぱり、とても怖い」
耳元に吐息が当たる。
「大丈夫」
髪を撫で、頬に口付けをし、優しく抱きすくめながら腿を撫でる。その流れで腰にぐっと力を入れた。その挿入は不意打ちで、クロは驚いて平八の肩を押したが、あのときのように微動だにしない。
「やだ、待って、やだ……平八さ……」
蓮太郎にぎゅっと手を握られ、その力は思いのほか強くて骨が少し痛む。
「息を止めるな、怪我などせんから安心しろ」
指による反応でクロの中は濡れていたが、潤滑油も仕込んでおいてよかった、と平八は思った。指二本以上の直径のものを受け入れる余地はない。そこにどうにか潜り込もうというのだから、もうこのぬめりに頼るしかすべはないのだ。
クロにはもう、声を出すことへの恥ずかしさなどを気にする余裕はなかった。言葉にはならない声で、その痛みを訴えるように苦しげに鳴いた。癒着していたものを無理やり引き剥がされるように、音は聞こえずともめりめりという体感したこのとのない苦痛が、触れられたことのない場所を軸にして、全身の神経を侵されている。
「んっ…痛っ、あぁ、やっぱり嫌、怖いよぅ」
座敷で見させられてきた数々の光景がよみがえる。ねえさんたちはこんなふうに泣き濡れた声をあげながら、しかし痛がってなどはいなかった。はじめては痛いわよ、と聞いたけれど、痛いのはそのときだけよ、とも言っていた。けれどこれが痛くなくなる日など想像がつかない。よく考えればこれは内臓の痛みだ。ただの怪我とは種類が違う。
「お蓮、もうちっとヘソの下の力を抜いてごらん。お前の痛がるのはそこだ。だがな、慣れればいちばんよくなるところさ」
「できない、ああやだ、や……できないよ……」
「よしよし、それならここまでにしような」
「うん………」
ふぅーと弱々しく息を吐き、瞳を濡らして平八の顔を見つめた。顔を見て安心を得ようとし、そのため無意識に強く手首や手を握ったままだ。まだ半分以下しか入っていないと知ったら、いよいよ逃げ出しそうだ。だがこれ以上はもう酷だ。入るところまでを少しだけ突くように動き、そのたびビクビクと痙攣する細い身体をなだめるように抱いたり、脇腹から腰にかけてをなでさすった。
浅くしか入らずとも、まだ硬い肉のしめつけで充分に刺激を得られている。平八の目に映るクロは、今まで見たことのない顔をしている。はじめて彼を見かけたときとは違うこの綺麗さは、クロ自身の変貌の過程によるものか、それとも自分自身のクロに対する心情の変化か。
かたくなだった子供のクロはもう消えかけている。裸なのは身体だけではない。粘膜のあわい香りが、ふたりの結び付いた確たる証のように生々しく匂いたつ。
平八はその舌を吸い、頬や耳にも舌を這わせるような口付けをして、汗をかいたクロの髪の匂いをすんすんと嗅ぎ、興奮を最大限に高めていった。腰の動きが活発になっていくと、クロは背中にしがみついて声をあげ、いよいよ自分は、もうこの見世の女とまったく同じに変わっていくのを感じていた。しかし彼女たちと決定的に違うのは、自分を抱くこの男のことを愛しているということだ。恥ずかしさは確かにあるのに、全部を知ってほしいと思っている。それからもう二度と、他の人にこのようなやさしい接吻をしないでほしい。
長い時間をかけてじわじわと絡めとられていた心は、慕情を越えてもはや平八への執念にまで変わっていた。この男を離したくない。捨てられたくもない。できることならずっと共にありたい。
吐息交じりに少しだけ唸り、平八がクロを抱く腕に力を込めた。そして二回ほど緩慢な力強い突き上げを喰らい、クロは小さな悲鳴をあげた。そのすぐあとにずるりと引き抜かれる感覚にも身をすくめ、腹の上になまぬるいものを感じた瞬間、あの白いものを出されたのだと察した。
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