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最強天使、まさかのちゃんこ準備
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『サミュエル様。ご旅行をお楽しみのようでなによりでございます。さて、ご疑問の点でございますが、基準は異なりますが、五重塔の標高とスカイツリーの全高は、ほぼ同じ高さでございます。遊様がお見せ下さった画像にも記載はございましたが、サミュエル様がすぐに拡大なさったゆえ、見落とされたのかと存じます。浅草で迷子になられたことを懐かしみ美化していらっしゃるご様子ですが私の怒りの稲妻をお忘れでしょうかそれでは良い夜を』
文末が非常に読みづらい件。
文字数制限で、句読点を省略したのだろうか。バレットは二通に分ける手間を省きたかったらしい。
玄関でメッセージを確認した俺は、いい匂いに誘われて台所へ戻った。寸胴鍋がぐつぐつと煮え、その隣のコンロでは、きつね色のいもフライを遊が次々と揚げている。油と共に、俺の期待も弾けそうだ!
おや。蒼くんが、冷蔵庫の扉を開けて魚を取り出したぞ。……む!鮎では!?
「蒼くん。鮎の塩焼きを作るのか?」
「はい。和室の隣の部屋に、囲炉裏があるので」
「なにっ!?」
まさか、あのふすまの向こうにそんな驚きが隠されていたとは!
和食レストランで初めて鮎の塩焼きを味わったときは、その繊細な風味に思わず感嘆した。俺もバレットも、メニューにあれば必ず注文するほど大好物だ。
「にーちゃん、続きはやるよ!」
「オッケー」
遊はテキパキと鮎の下処理を進めつつ、茶色い瞳を輝かせて俺を見上げた。
「サミュエルさんもさ、鮎が好きなんだね!?」
「ああ。いまから楽しみだ」
「よかったあ! 焼きたてをさ、デザートにしようねっ!」
…………。
え?
思考が追いつかぬ俺のそばで、蒼くんが再び冷蔵庫の扉を開けた。今度は巨大なステーキ肉を数枚取り出している。ちょっと待て、それも焼くというのか?
「蒼くん。立派な肉だが——」
「ばーちゃんが、栃木のブランド牛も食べてって用意してくれたみたいです」
感謝に堪えぬ。どうりで霜降り具合が美しいわけだ。ははは。
笑ってる場合ではない。いったん落ち着こうではないか。
寸胴鍋の中には、大量のばっとう汁。加えて、これから仕上げる宇都宮餃子。力也くんは菜箸で卵を溶いており、だし巻き卵を作るらしい。
さらに、いもフライ、和牛ステーキ、デザートの鮎(合ってるのか?)、七合の米。先ほど蒼くんが取り出したパスタの袋は、テーブルの上に乗ったままである。俺が切ったピーマンとマッシュルーム、そしてスライスした玉ねぎもそのままだ。
「遊よ、こんなに作ってだいじか……?」
「だいじ! しのぶさんが、『民宿の食料を食べ尽くしましょう』って言ってたから!」
嘘だろ。本気で食べ尽くそうとしてるんか。
「ケチャップ、ケチャップ……あった」
ソーセージを適度な大きさに切り、蒼くんがナポリタンを作ろうとしている。沸騰した鍋に入れるパスタの量は、大容量一袋分だ。
いつ、相撲部屋を興したんだ。後ずさりしそうになりながらも、俺は遊に小声で助言した。
「遊よ。男六人で食べるわけではないのだぞ」
「えっ、そうだよ? 久美ちゃんとしのぶさんもいるよ?」
そういうことではなく。いや、そういうことなのだが。日本語とは、こうも読解が難しい言語だっただろうか。
「ばーちゃんがさ、冷凍に足利シュウマイがあるよって。あと、かんぴょう巻き十本と、ゆばの刺身も用意してくれたみたい! ほかには何を作ろうかなあ!」
ホ
ワ
ッ
ト
初耳の足利シュウマイも気になるところだが、ちゃんこを囲む力士ではあるまい!俺は両手をクロスさせ、換気扇の音に負けじと声を張り上げた。
「遊よ! ストップだ、ストーップ!!」
「えっ? なんで?」
「いやほら、あれだ! その、ショートケーキが待ってるぞ!」
「あっ、そうだったや!」
最後は甘いもので釣り、ようやく遊のエンジンは停止した。
そこからは、四人で黙々と餃子を包む。騒がしかった台所が途端に静かになり、そこに届いたのは、風呂場から響くレディたちのはしゃぎの声だ。
「えーっ! しのぶさん、あしかがフラワーランドで告られたんですか!?」
——ガタンッッ!!
テーブル脇のまな板を、蒼くんが肘に引っ掛けて落とした。この民宿は、どうやら台所と風呂場の距離が近いようである。
「蒼くん、だいじか?」
「あ、はい……」
まな板を拾うと、蒼くんは暖簾の向こうに視線を向けた。冷静沈着な彼も、どうやらしのぶちゃんには適わぬらしい。
「イルミネーションを見ながらとか、ロマンチックですね!?」
「『青い薔薇は、永遠を意味するんだよ』って、ローズイルミネーションのエリアで告ってくれたの!」
「キャーッ! おにーさあーんッ!!」
シンクでまな板を洗う蒼くんは、背中を丸めて小さくなっている。キザなセリフを家族と友人に聞かれる……これほどまでに、恥ずかしいことはないだろう。
だが、ここにやんやと蒼くんをからかう者は当然いない。むしろ、遊は動かしていた指先を止め、耳を大きくして真剣な表情で聞いている。
「久美ちゃんも、ロマンチックなのがいいのかな……」
つぶやく遊の隣に、蒼くんが腰を下ろした。気まずそうに頭を掻くと、はあと軽くため息をついている。
「……盛り上がってるってことは、そうかもね」
「にーちゃんさ、青の薔薇って永遠って意味なの? なんでそれ知ってるの? 告白するために調べたの?」
「……」
傷口に塩を塗る遊は、やはりバレットと似ているかもしれぬ。
——続く——
読んでくださりありがとうございます!遊とバレットの共通点が見つかりました(笑)明日も変わらず更新しますので、引き続き応援よろしくお願いします!^^
文末が非常に読みづらい件。
文字数制限で、句読点を省略したのだろうか。バレットは二通に分ける手間を省きたかったらしい。
玄関でメッセージを確認した俺は、いい匂いに誘われて台所へ戻った。寸胴鍋がぐつぐつと煮え、その隣のコンロでは、きつね色のいもフライを遊が次々と揚げている。油と共に、俺の期待も弾けそうだ!
おや。蒼くんが、冷蔵庫の扉を開けて魚を取り出したぞ。……む!鮎では!?
「蒼くん。鮎の塩焼きを作るのか?」
「はい。和室の隣の部屋に、囲炉裏があるので」
「なにっ!?」
まさか、あのふすまの向こうにそんな驚きが隠されていたとは!
和食レストランで初めて鮎の塩焼きを味わったときは、その繊細な風味に思わず感嘆した。俺もバレットも、メニューにあれば必ず注文するほど大好物だ。
「にーちゃん、続きはやるよ!」
「オッケー」
遊はテキパキと鮎の下処理を進めつつ、茶色い瞳を輝かせて俺を見上げた。
「サミュエルさんもさ、鮎が好きなんだね!?」
「ああ。いまから楽しみだ」
「よかったあ! 焼きたてをさ、デザートにしようねっ!」
…………。
え?
思考が追いつかぬ俺のそばで、蒼くんが再び冷蔵庫の扉を開けた。今度は巨大なステーキ肉を数枚取り出している。ちょっと待て、それも焼くというのか?
「蒼くん。立派な肉だが——」
「ばーちゃんが、栃木のブランド牛も食べてって用意してくれたみたいです」
感謝に堪えぬ。どうりで霜降り具合が美しいわけだ。ははは。
笑ってる場合ではない。いったん落ち着こうではないか。
寸胴鍋の中には、大量のばっとう汁。加えて、これから仕上げる宇都宮餃子。力也くんは菜箸で卵を溶いており、だし巻き卵を作るらしい。
さらに、いもフライ、和牛ステーキ、デザートの鮎(合ってるのか?)、七合の米。先ほど蒼くんが取り出したパスタの袋は、テーブルの上に乗ったままである。俺が切ったピーマンとマッシュルーム、そしてスライスした玉ねぎもそのままだ。
「遊よ、こんなに作ってだいじか……?」
「だいじ! しのぶさんが、『民宿の食料を食べ尽くしましょう』って言ってたから!」
嘘だろ。本気で食べ尽くそうとしてるんか。
「ケチャップ、ケチャップ……あった」
ソーセージを適度な大きさに切り、蒼くんがナポリタンを作ろうとしている。沸騰した鍋に入れるパスタの量は、大容量一袋分だ。
いつ、相撲部屋を興したんだ。後ずさりしそうになりながらも、俺は遊に小声で助言した。
「遊よ。男六人で食べるわけではないのだぞ」
「えっ、そうだよ? 久美ちゃんとしのぶさんもいるよ?」
そういうことではなく。いや、そういうことなのだが。日本語とは、こうも読解が難しい言語だっただろうか。
「ばーちゃんがさ、冷凍に足利シュウマイがあるよって。あと、かんぴょう巻き十本と、ゆばの刺身も用意してくれたみたい! ほかには何を作ろうかなあ!」
ホ
ワ
ッ
ト
初耳の足利シュウマイも気になるところだが、ちゃんこを囲む力士ではあるまい!俺は両手をクロスさせ、換気扇の音に負けじと声を張り上げた。
「遊よ! ストップだ、ストーップ!!」
「えっ? なんで?」
「いやほら、あれだ! その、ショートケーキが待ってるぞ!」
「あっ、そうだったや!」
最後は甘いもので釣り、ようやく遊のエンジンは停止した。
そこからは、四人で黙々と餃子を包む。騒がしかった台所が途端に静かになり、そこに届いたのは、風呂場から響くレディたちのはしゃぎの声だ。
「えーっ! しのぶさん、あしかがフラワーランドで告られたんですか!?」
——ガタンッッ!!
テーブル脇のまな板を、蒼くんが肘に引っ掛けて落とした。この民宿は、どうやら台所と風呂場の距離が近いようである。
「蒼くん、だいじか?」
「あ、はい……」
まな板を拾うと、蒼くんは暖簾の向こうに視線を向けた。冷静沈着な彼も、どうやらしのぶちゃんには適わぬらしい。
「イルミネーションを見ながらとか、ロマンチックですね!?」
「『青い薔薇は、永遠を意味するんだよ』って、ローズイルミネーションのエリアで告ってくれたの!」
「キャーッ! おにーさあーんッ!!」
シンクでまな板を洗う蒼くんは、背中を丸めて小さくなっている。キザなセリフを家族と友人に聞かれる……これほどまでに、恥ずかしいことはないだろう。
だが、ここにやんやと蒼くんをからかう者は当然いない。むしろ、遊は動かしていた指先を止め、耳を大きくして真剣な表情で聞いている。
「久美ちゃんも、ロマンチックなのがいいのかな……」
つぶやく遊の隣に、蒼くんが腰を下ろした。気まずそうに頭を掻くと、はあと軽くため息をついている。
「……盛り上がってるってことは、そうかもね」
「にーちゃんさ、青の薔薇って永遠って意味なの? なんでそれ知ってるの? 告白するために調べたの?」
「……」
傷口に塩を塗る遊は、やはりバレットと似ているかもしれぬ。
——続く——
読んでくださりありがとうございます!遊とバレットの共通点が見つかりました(笑)明日も変わらず更新しますので、引き続き応援よろしくお願いします!^^
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