最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

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最強天使、兆しを受け取る

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「非公開エリアは見られないみたい」
「そうか……。残念だが、仕方あるまい」

 限定で解放される日もあるそうだが、今日はその日ではないようだ。オオヤ歴史資料館はミュージックビデオだけでなく、映画やドラマ、さらには結婚式でも使用されているらしい。
 光、影、音、匂い……。ここは何時間でも滞在していたくなるほど、心惹かれる空間だったが——。

「へっくしょん!」

 くしゃみをする力也くんが、そろそろ凍りそうである。

「力也くん、だいじか?」
「はい。ダウンを持ってくればよかったですね……」
「力也せんぱあーい! 俺のポロシャツも着ますか?」

 半袖である。そこはパーカーでは。
 ワンダー遊はさておき、オレンジ色のライトに照らされた力也くんの唇が紫がかっている。体調を崩させてはならん!回復魔法で瞬時に治せるとて、寒さの中で無理をするよりも、良き思い出を残すことこそ最善だろう。

「一通り見終わったはずだ。そろそろランチにしよう」
「……でも。サミュエルさん、ここすごく気に入ってますよね? もっと見なくて大丈夫ですか?」

 自分よりも相手を優先とは、優しい青年だ。俺は力也くんの黒い瞳を見つめて微笑んだ。

「だいじだ。カフェでは力也くんのバースデーを祝いたい。好きなものを自由に頼んでくれ」 
 
 予想外の事態に出会うことは、未来へと続く小さな兆しでもある。後ろ髪を引かれる思いで地下神殿を去るこの状況も、ただの偶然ではないだろう。きっと、深い意味が潜んでいるはずだ——。

 * * *
 
 地上へ戻った瞬間、うだるような暑さとセミの大合唱が我々を包み込んだ。遊が話していたカフェに移動したが、店内は土産コーナーも充実しており、マーケットのようである。入口付近には食器やコースター、バッグなどが並び、観光客が手に取っては吟味している。

「なんと……オムライスだけではなかったのか!」

 驚くのは、レジ上の看板に表示されたメニューの多さだ。カラフルなドリンク類から始まり、ポークソテー、パスタ、ハンバーグ、カレー、具が溢れそうなホットドッグ。さらに、かき氷やジェラートなどデザートも充実し、目移りしてしまうぞ。
 
 何を頼むか迷ったが、我々は予定通りオムライスをチョイス。外の景色を眺めるのも悪くはないが、テラス席では暑さに耐えられそうにない。三人では、カウンター席も会話向きとは言えないだろう。
 結局、小さな階段を上がった中二階を選んだ。ピスタチオ色の横長のソファーが置かれたテーブル席。いい雰囲気である。

 遊と力也くんは向かいのソファに並んで座った。遊は壁に取り付けられた冷房を見ている。

「力也先輩、寒くないですか?」
「うん、平気だよ。ありがとう」
「寒かったら、俺のポロシャツがありますからね!?」

 ここでポロシャツを脱いだら、宇都宮県警のお世話になるだろう。

 さて、目の前のトロトロオムライスに意識を向けよう。半熟のふんわりとした卵の上に、ホワイトとブラウンの二種のソース。仕上げにパセリが散らされている。このビジュアルは、どう見ても挑発されているとしか思えん……!
 スプーンで一口サイズにし、そのまま口へ運ぶと——?

「これは!」
「うっま!」
「ふふふ。美味しい」

 三人とも、昨日から断食していたのではというペースで食べ進めている。

「日光の旅行さ、楽しみだね?」

 口いっぱいにオムライスを頬張る遊。ムニムニほっぺで旨さをアピールしている。

「ああ。しのぶちゃんにも、ばーちゃんにも感謝だな」
「そう言えば、サミュエルさん。僕、八月三十一日は東京にいる予定なんです」

 紙ナプキンで口元を拭いた力也くんが、スマホで予定を確認する。

「おや。夏祭りは行かぬのか?」
「はい」

 遊はすでに食べ終わり、首を伸ばして一階の土産コーナーを覗いている。こうして比べて見ても、力也くんは華奢だ。遊より多少背は高いが、全体的に線が細い。

「力也くん、このあとどこかにケーキを食べに行くのはどうだろうか?」

 たんとお食べと、まるで寮母のような気持ちになる最強天使である。

「ありがとうございます。僕、旅行のあとにもう一度サミュエルさんと出かけたいなって思ってて。それを誕生日プレゼントにして頂いてもよろしいでしょうか?」
「ははは。もちろんだ。遊よ、場所はお前に任せてよいか?」
「……えっ? オッケー!」

 絶対に話を聞いていなかっただろうに、なぜ快諾できるのか不明である。

 祝いの魔法は使えなかったが、力也くんが希望するギフトを送るのが一番だ。こうなれば、彼の笑顔をさらに増やそうではないか。

 バディの遊よ、協力を頼んだぞ!
 

 
 ——続く——

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