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カインがそこにいたと知った姫の切り替えは早かった。
詰所で姫の話ばかり。
転んだ日も熱を出した日も姫を案じてカインは動いた。
おまけに酔うと姫の話ばかり……は即否定されてしまったが、ともかく!
(嫌われてなんていなかった……!)
どころか、すわ両想いと言わんばかりの内容を聞かされてしまったようなものである。ミレナシアは今までがんばった分も含めて空回りのつらさを熱く語った。
無論、号泣しながら。
「何で言ってくださらないんですか!」
泣きじゃくりながら、姫は顔を赤くして訴えた。
「全然笑ってくださらないしいつもいつも避けられるし、わたくしはもうわたくしはもう」
ぐうう、などと言う、人前ではとても聞かせられないような呻きを上げる。
こぶしで涙を拭うありさまで、後半はすでに人情もののような響きだ。
その姿にカインは焦る。
こんなふうに感情をあらわにする彼女を見るのは初めてだ。
それも自分の、正確にはユリウスの暴露が発端である。どうしたらいいかわからず、ただ狼狽えた。
「いや、ですから姫の耳にお入れするまでも」
「わたくしの耳にそちらを突っ込まないでどうしろと!?」
「というかユリウスお前簡易結界をこんなことにだな!」
「いやあ国の一大事だよ、……実際、別に冗談でもなくね」
分が悪いと見て矛先を副団長へと流してみるが、ユリウスにはやんわりと受けられる。彼は涼しい顔で紅茶をかき混ぜていた。
「そうです一大事です、一国の姫がこんなことになっているなんて……」
さめざめと泣きぬれて言葉の後を追うミレナシア。カインは「ぐっ……」と言葉に詰まった。
それでも彼は懸念を上げる。
「しかし、身分が」
→「わたくしのおばあさまも平民からのご成婚ですわ!」
「聖女でいらしたからね、カインと似たようなものだ」
「出自が」
→「数世代上のおじいさまは異世界からいらしてよ!? あなたこちらの生まれでしょう!」
「逆に言ったら異世界生まれでもいけるんだ……」
「戦場で血ばかりを」
→「政治犯でもあるまいし! ご存知かしら〇〇の◯◯様はわたくしが五歳の頃外敵を率いれて国家転覆を企てあわやこの国の名が喪われる寸前まで」
「まってまって姫様それガチめの箝口令出てるやつ」
カインの二敗一引き分け。最後の暴露に至っては血の気が引いたため実質負けカウントかもしれなかった。
いつも飄々としているユリウスの頬に珍しく冷や汗が浮かぶのを見て、カインは心の中で(聞かなかったことにしよう)とひっそり目を伏せた。
詰所で姫の話ばかり。
転んだ日も熱を出した日も姫を案じてカインは動いた。
おまけに酔うと姫の話ばかり……は即否定されてしまったが、ともかく!
(嫌われてなんていなかった……!)
どころか、すわ両想いと言わんばかりの内容を聞かされてしまったようなものである。ミレナシアは今までがんばった分も含めて空回りのつらさを熱く語った。
無論、号泣しながら。
「何で言ってくださらないんですか!」
泣きじゃくりながら、姫は顔を赤くして訴えた。
「全然笑ってくださらないしいつもいつも避けられるし、わたくしはもうわたくしはもう」
ぐうう、などと言う、人前ではとても聞かせられないような呻きを上げる。
こぶしで涙を拭うありさまで、後半はすでに人情もののような響きだ。
その姿にカインは焦る。
こんなふうに感情をあらわにする彼女を見るのは初めてだ。
それも自分の、正確にはユリウスの暴露が発端である。どうしたらいいかわからず、ただ狼狽えた。
「いや、ですから姫の耳にお入れするまでも」
「わたくしの耳にそちらを突っ込まないでどうしろと!?」
「というかユリウスお前簡易結界をこんなことにだな!」
「いやあ国の一大事だよ、……実際、別に冗談でもなくね」
分が悪いと見て矛先を副団長へと流してみるが、ユリウスにはやんわりと受けられる。彼は涼しい顔で紅茶をかき混ぜていた。
「そうです一大事です、一国の姫がこんなことになっているなんて……」
さめざめと泣きぬれて言葉の後を追うミレナシア。カインは「ぐっ……」と言葉に詰まった。
それでも彼は懸念を上げる。
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