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71 討伐終了
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『あちらの2頭だ!囲め!町に行かすな!!』
火矢が尽きるとナッシュ兵士長率いる町兵たちは、騎馬たちが他の2頭から離れたバルミラを攻撃するのを横目に槍を持って2頭の周りを囲んだ。
『無理に攻撃しなくてもいい!注意を引き付けるんだ!』
火矢班以外の兵士長率いる町兵達は、グレイル達騎馬の後で門を出て街道を進み、火矢が尽きるのを待っていた。バルミラから離れて街道を行くのは火矢を避ける為である。
街道の、バルミラに近いところで火達磨になっていくバルミラを見守り、作戦通りに1頭を騎馬の4人がボコり始めると他の2頭の注意を引き、町に近付けないように囲む。
しかし、ナッシュを入れて10人しかいない兵ではバルミラを完全にその場に留めることは難しい。グレイル達が1頭を片付けて2頭目を相手にし始めるまでは囲むこともろくに出来ない。
だが、町に行かせるわけにはいかないというのは全員が分かっていた。
無理をしてバルミラに槍を深く刺し、蹴り飛ばされる者が出てくる。
転がった兵士が踏み潰されそうになった時、転がった兵士の前に騎馬が躍り出て来て燃えるバルミラの足に体当たりした。
『こっちの奴は引き受けた!あっちの奴を頼む!』
火矢班のロイだった。同じく騎馬で駆け付けたシアとマールと共に1頭をその場から引き離していく。
その後すぐに眼を射られたバルミラが倒れ、騎馬達が休みなく次に兵士の囲むバルミラを倒すと、残りの1頭は総勢7人もの騎馬兵に切り付けられ、あっという間に倒された。
魔蜂の被害も町の被害もなく、こうして恙無くバルミラ3頭の討伐が終了した。
大変なのは後始末である。
最後の1頭を倒す頃にはナッシュ兵士長の指示で兵士達による消火作業が始まっていた。
数本の木や辺りの草地等はそれなりの範囲で焼けてしまったが、町に被害が無かったことを考えると些細な事で、問題は。
『こいつらどうする?』
バルミラ3頭の死体の処理である。
馬と比べても10倍以上の大きさだが放置も出来ない。
このままここに埋めるにしてももう少しこの巨体を何とかしたい。
『焼いてしまったから皮を剥いでも使えないだろう。牙と角だけ取って後はーー』
グレイルは町兵達の一部をバルミラ討伐に沸く町に戻らせ、野次馬だけではなく、町全体に討伐成功の報と共に、直接取りに来た者は好きに肉を持って行って良いと触れ回させた。
もちろん討伐を見物していた野次馬がいの一番に駆け付けたが、刃物も容れ物も持たずにやって来るので、あえて大きめに兵士が切り出した肉を手に持たせ、せめて皿なりの容器は持って来いと触れ回るように言い含めて帰らせたのだった。
『叔父さん助かったよ。あと久しぶりただいま』
『ああ、よく帰ったな。お前達もタイミングが良かったのか悪かったのか…』
手伝った商会の護衛チームは後始末まで手伝う義理は無いと解散させるが、グレイルとアランは着任前とはいえ既に町兵の指揮官である。最後まで現場に残るが、礼と別れの挨拶を、の前に再会の挨拶もまだだったアランとアレックスだった。
『一度商会に戻るだろう。お祖父様やお祖母様に会ったらよろしく言っておいてくれ』
『ああ、わかった。別件で報告もあるからな』
アレックスがグレイルとアランの後ろを見るので何かと思えば、シアがもう暗くてろくに見えない町の方へ手を振っている。こちらはバルミラがまだ燃えているので明るいが。
(いや、門の周辺だけは篝火で明るいな…。!?)
グレイルは目を見張った。
武具店で会った少女が宿の二階の窓からグレイルに大きく手を振っている。もちろんグレイルも手を振り返した。
『グ、グレイル?』
アランを始め、その場の全員が満面の笑みで手を振り出したグレイルにぎょっとする。シアも手を振るのを止めてグレイルを見る。
『お、おい!グレイル!』
『何やってんだ』
『グレイル、もしかしてハナを知っているの?』
アランやアレックスの呼び掛けに反応しなかったグレイルが、シアの言葉に振り向き勢いよくその肩を掴んだ。
『ハナ!?そう、そうだ!ハナって言ってた!!』
武具店で薙刀を注文の折りに華は名乗っていたのだが、華の顔を見るのに全神経を使っていて全ての会話がうろ覚えなグレイルだった。
『ハナ…ハナか。…ハナ…ハナ』
火矢が尽きるとナッシュ兵士長率いる町兵たちは、騎馬たちが他の2頭から離れたバルミラを攻撃するのを横目に槍を持って2頭の周りを囲んだ。
『無理に攻撃しなくてもいい!注意を引き付けるんだ!』
火矢班以外の兵士長率いる町兵達は、グレイル達騎馬の後で門を出て街道を進み、火矢が尽きるのを待っていた。バルミラから離れて街道を行くのは火矢を避ける為である。
街道の、バルミラに近いところで火達磨になっていくバルミラを見守り、作戦通りに1頭を騎馬の4人がボコり始めると他の2頭の注意を引き、町に近付けないように囲む。
しかし、ナッシュを入れて10人しかいない兵ではバルミラを完全にその場に留めることは難しい。グレイル達が1頭を片付けて2頭目を相手にし始めるまでは囲むこともろくに出来ない。
だが、町に行かせるわけにはいかないというのは全員が分かっていた。
無理をしてバルミラに槍を深く刺し、蹴り飛ばされる者が出てくる。
転がった兵士が踏み潰されそうになった時、転がった兵士の前に騎馬が躍り出て来て燃えるバルミラの足に体当たりした。
『こっちの奴は引き受けた!あっちの奴を頼む!』
火矢班のロイだった。同じく騎馬で駆け付けたシアとマールと共に1頭をその場から引き離していく。
その後すぐに眼を射られたバルミラが倒れ、騎馬達が休みなく次に兵士の囲むバルミラを倒すと、残りの1頭は総勢7人もの騎馬兵に切り付けられ、あっという間に倒された。
魔蜂の被害も町の被害もなく、こうして恙無くバルミラ3頭の討伐が終了した。
大変なのは後始末である。
最後の1頭を倒す頃にはナッシュ兵士長の指示で兵士達による消火作業が始まっていた。
数本の木や辺りの草地等はそれなりの範囲で焼けてしまったが、町に被害が無かったことを考えると些細な事で、問題は。
『こいつらどうする?』
バルミラ3頭の死体の処理である。
馬と比べても10倍以上の大きさだが放置も出来ない。
このままここに埋めるにしてももう少しこの巨体を何とかしたい。
『焼いてしまったから皮を剥いでも使えないだろう。牙と角だけ取って後はーー』
グレイルは町兵達の一部をバルミラ討伐に沸く町に戻らせ、野次馬だけではなく、町全体に討伐成功の報と共に、直接取りに来た者は好きに肉を持って行って良いと触れ回させた。
もちろん討伐を見物していた野次馬がいの一番に駆け付けたが、刃物も容れ物も持たずにやって来るので、あえて大きめに兵士が切り出した肉を手に持たせ、せめて皿なりの容器は持って来いと触れ回るように言い含めて帰らせたのだった。
『叔父さん助かったよ。あと久しぶりただいま』
『ああ、よく帰ったな。お前達もタイミングが良かったのか悪かったのか…』
手伝った商会の護衛チームは後始末まで手伝う義理は無いと解散させるが、グレイルとアランは着任前とはいえ既に町兵の指揮官である。最後まで現場に残るが、礼と別れの挨拶を、の前に再会の挨拶もまだだったアランとアレックスだった。
『一度商会に戻るだろう。お祖父様やお祖母様に会ったらよろしく言っておいてくれ』
『ああ、わかった。別件で報告もあるからな』
アレックスがグレイルとアランの後ろを見るので何かと思えば、シアがもう暗くてろくに見えない町の方へ手を振っている。こちらはバルミラがまだ燃えているので明るいが。
(いや、門の周辺だけは篝火で明るいな…。!?)
グレイルは目を見張った。
武具店で会った少女が宿の二階の窓からグレイルに大きく手を振っている。もちろんグレイルも手を振り返した。
『グ、グレイル?』
アランを始め、その場の全員が満面の笑みで手を振り出したグレイルにぎょっとする。シアも手を振るのを止めてグレイルを見る。
『お、おい!グレイル!』
『何やってんだ』
『グレイル、もしかしてハナを知っているの?』
アランやアレックスの呼び掛けに反応しなかったグレイルが、シアの言葉に振り向き勢いよくその肩を掴んだ。
『ハナ!?そう、そうだ!ハナって言ってた!!』
武具店で薙刀を注文の折りに華は名乗っていたのだが、華の顔を見るのに全神経を使っていて全ての会話がうろ覚えなグレイルだった。
『ハナ…ハナか。…ハナ…ハナ』
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