十で神童、十五で天才、二十歳過ぎれば今際の際【完結】

藤好

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短気と無神経

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「……お前何故魔力封じのローブを着ていない」

「誰かさんが溢れるくらい魔力を注いでくれたおかげで必要無くなったのさ」


俺のその言葉にヴァルターが激しく噎せ出した。飯はゆっくり食えよ。


「ッゲホ、お前何で武官の連中と仲良くしてるんだ」

「質問ばかりだな。別に仲良くしてるつもりはないが」

「前のお前は己以外誰も寄せ付けなかった。自分以外をまるで虫ケラを見るような目で見て拒絶してただろ」

「ほーそうだったか?」


言われてみれば。俺は俺以外を全員馬鹿と思っていたし信用していなかった。余命も見えていたし日毎悪化する体調に、具合も機嫌も常に最悪だった。

だけど今日からは違う。なんてったって体調が良い。体調がいいと気分までいい。世界の全てが愛おしい。それは大袈裟だが。


「あんなに無防備に愛想振りまきやがって……」

「何か言ったか?」

「……別に」

「? もういつ死ぬかと気にしなくて良くなったからかな。俺の命、お前が繋いでくれるんだろう?」


一晩中の性行為はキツイが俺が今生きてるのはまあヴァルターのおかげであることに間違いはない。不遜でムカつく男だが有難いという気持ちに嘘はない。

俺の言葉にヴァルターが信じられないものでも見たかのように目を瞬かせた。

何だ、素直な俺が気色悪いか。奇遇だな、俺も俺自身に寒気がする。


「ところでお前は仕事に行かなくて大丈夫なのか」

「問題ない。俺に割り振られた仕事は全て終えてるし引き継ぎもあらかた済んでいる。後は僅かな荷物を引き上げるだけだ」

「……あ?」

「死ぬ予定だったからな。俺はもうすぐここを去る。幸い一生遊んで暮らして余る程の貯えはあるし早めの隠居だな。旅にでも出るか」


ヴァルターが切れ長の目をかっ開いて俺の顔を凝視している。こいつ意外と表情が豊かだな。



「おま、魔力が、なくなる、死ぬ、」

「何故カタコトなんだ?まあいい。……感覚からいってお前の魔力は一度の供給で二、三ヶ月は保つと思う。ヴァルターには悪いが二ヶ月毎に王都に帰って来るからその時に魔力の供給をして欲しいんだが」

「……俺は都合のいい保有石かよ」


元々低いヴァルターの声が更に低くなり強過ぎる魔力のオーラが迸る。めちゃめちゃ怒ってるな。まあそうだろう。随分勝手なことを言っている自覚がある。

(因みに保有石とは魔力が弱い人間が己の魔力を少しずつ蓄積して貯めておくことが出来る石である)


「なら仕方ないな。余命が二ヶ月伸びたと思って最後の旅にでも出ることにしよう。ヴァルター、今回のことは本当に助かった。おかげで体調が良い。もう会うことはないかもしれないが対価に何を渡せばいい?金……、はお前も死ぬ程持ってるだろうが言い値を支払おう。そうだ、エインズワースに伝わる秘宝でも持ち出して来ようか?」

「ッ、テメェは何でそんなに極端なんだ!!」


凄まじい剣幕で恫喝されて首を傾げる。何だ?他に欲しいものがあるのか?って言ったら更にキレそうだな。


「……と言っても後数日で俺の職は解かれるしな。恥ずかしい話俺は外のことをよく知らん。エインズワースに帰る気もない。今後の身の振り方も住居もどうするか迷っている。そうだ、ヴァルターならどうする?」


必殺話を逸らす作戦。

俺の唐突な質問にヴァルターの怒りが急速に萎んでいくのが見て取れた。意外にもこの策は有効だったようだ。


「お前、もっと喰えない奴だと思っていたがひょっとしてただの天然なのか?」

「天然?俺がか?それはお前の勘違いだな。俺はちゃんと色々考えている。家は狭くてもいいんだが風呂だけはちゃんとした場所に住みたい」

「なるほど段々お前のことが解って来たぜ。お前の無神経な発言に一々切れるのも馬鹿馬鹿しい」

「無神経?俺がか?それはそうかもしれんな。何しろ俺には友人らしい友人がいないからな。他人の心の機微が分からん。あ、明日お前の部下に街に連れて行ってもらう約束をしたんだ。友人になってくれるだろうか」

「ああ?!」


何だ?またブチ切れ出した。こいつの怒りのスイッチがわからん。俺もおかしいのかもしれないがヴァルターも十分おかしいだろ。


「そいつの名前と所属を教えろ。殺、いや日程を確認する」

「?明日は休みだと言っていたぞ」

「武官は勤務が変わりやすいからな」

「所属は知らんが名前はアレクと言っていた」

「残念だったな。そいつは明日一日中警備の予定が詰まっている(今決めた)」

「ほお、部下のスケジュールまで把握してるのか」

「まあな(嘘)代わりに街には俺が行こう。明日は一日休みだ(今決めた)」

「お前貴族の坊ちゃんなのに街の案内なんて出来るのか?」

「士官学校時代は庶民と同じような生活をしていた。お前よりよっぽど生活能力はある」

「そうなのか。じゃあよろしく頼む」


なんだかおかしなことになった。エインズワース家とガルド家の人間が共に出掛けたことが過去あっただろうか。多分ない。

しかし意外にもそこまで嫌な感じがしないのは俺の体にたっぷりヴァルターの魔力が充填されてるからか?きも。


「しかし何で街に行くんだよ。お前人混み嫌いだろ」

「何で知ってる。まあいい、今話しながら考えたがやはり家を買おうと思ってな」

「……家?」

「死ぬ予定もなくなったし仕事も辞めるんなら一先ず暮らしていく場所を整える」

「……仕事辞める云々は一先ず置いといて、それなら俺に心当たりがある」

「ほぅ」

「王宮から程近くだが周りには何もない静かな場所だ」


ヴァルターが真剣な顔で俺の話を聞いてるのが不思議だが何も裏はないのだろうか。

虫が死ぬ程出るとか足を踏み入れた瞬間爆発するとか。


「とにかく一度見てみないとな。悪いが明日はよろしく頼む。昼前にお前の部屋を訪ねて構わないな?」

「文官の寮に帰るのは手間だろ。今日も俺の部屋に帰れ」

「はい~~?意味不明なことを言うな馬鹿。第一着替えがないだろ」

「転移術で俺の部屋に移動させておく」

「俺の前で高位術をホイホイ発動させるな。嫌味か?」

「別にお前も使えばいいだろ。まあ元は俺の魔力だが?」

「死ねばーかばーか」


と言いつつ文官の寮まで帰るのは確かに怠かったので俺は食堂を後にして結局ヴァルターの部屋に帰った。そして勝手にバスタブにお湯を溜めて風呂に入り、いつの間にか変えられていた清潔なシーツにダイブして昼寝までしてやった。起きたら帰ってきたヴァルターと並んで再び食堂に足を運び向かい合わせで飯を食い、そんで寝る前にしょーもないことで口論になり何故かそのまま性交に発展したがこの話はどうでもいいので割愛。





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