信長座☆座付作家 太田又助  《火起請の巻》

亜月文具

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第二話 天正三年蹴鞠ノ会の巻 その七

京の泥濘   古今伝授継承者

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   京の泥濘ぬかるみ  

 相国寺の近習ノ間で、牛一は清蔵と酒を飲んでいた。
「長松どのの様子が妙なのだ。……先ほど別れて帰ってきたら、珍しくお主が一人酒を喰らっておった」
「それで、その謎を肴に拙者と酒を飲もうと言う腹か」
 清蔵は喉を鳴らして酒を飲み干すと、
「長松が、すずを見ていたとな……その上、いかにも女子が喜びそうな鈴を持っていた」
 想像して楽しそうに清蔵は笑った。
「ふふふ、やはりわからぬ御仁じゃな」
「今日一日は、変な気合を感じるほどだった」
 牛一は一日を振り返り、言経のいろいろな顔を思い出した。
「予定通り進んでいた証人に見込み違いが出て焦ったのか? 急ぎ新たな証人を調達に走ったか」
 清蔵は楽しそうに茶碗に酒を注いだ。
「すずは丸薬を飲んでおったらしい」
「その薬は確実に怪しいぞ」
「ほう? 何故そう思う」
「いやなに、そのほうが大捕り物になって面白かろう」
 呆れ顔の牛一は清蔵を睨んだ。所詮この話は、清蔵には酒の肴にすぎないのだ。入り組むほど美味くなるのか……。
「その……薬だが、山科秘伝の薬は皆、丸薬だったな……」
 牛一は躊躇いがちに口にした。
「ああ、とっつぁんが自慢していた。持ち運びを考えておるのじゃと。……うん? なんだか拙者が申す通りになってきたではないか」
「いや、たまたまだ。考え過ぎかも知れぬ」
「そうかな? 公家は狸だと言うからな、もうちょっと考えてみりゃええがや」
 狸か、牛一は胸の内で繰り返すと、言継の澄ました笑い顔が頭の隅を過った。
「権大納言さまが相国寺へ蹴鞠会招請の直談判に来たとき、清蔵は本当に心配しておったな」
「ああ、お屋形さまのお怒りで、ばっさりといかぬか心配しておったわ」
「お主は読みが甘いのだ。お屋形さまと権大納言さまは似た者同士よ、お主の心配するところではない。六年前の二条御所の城普請を覚えておるか」
 
  ○

 永禄十二年(一五六九)の一月。
 京に降り続く雪も止み、山間の白さを残して街筋は黒く泥濘ぬかるみはじめた頃合いだった。
 普請場に馬乗りの信長が近づくと、静かに剣を抜いた。人混みの先に女を揶揄う不良人足がいる。実のところは内偵していた六角じょうていの間者だ。馬を早足で進めると即座に人足の首を断ち斬った。牛一と清蔵は普請やぐらからその様子を眼前に見下ろしていたのだ。
 首から昇る血潮は生き物のように波打ち、信長の顔を赤く染めた。目が白く浮き出て、舌先が血を舐める様はとても人とは思えなかった。
「不埒な振る舞いを織田家は許さず」
 信長は静かに宣言した。
 だれも逆らわぬが、人足、女、子供らの抑えきれぬ悲鳴が起こると、人波がじわじわっと信長から離れた。
 そのときだ。水干に指貫袴と立烏帽子の老人が近づいた。清蔵は神人じにんだと思った。が、牛一の遠目が言継を認めた。
「ほほほ、さすがは弾正忠さま。ご家中に綱紀の乱れなど、露もございますまいな」
 言継は豪気に笑って近づいた。
「おお、権大納言どの、息災であるか」
 隙のない表情で信長は応えた。
「弾正忠さまの果断な仕置きに、京の民も安寧に過ごせるというもの。しかし……小倉山の紅葉にはちと早すぎますな」
 言経は笑いながら、白い布を赤く染まった信長の面前に差し出した。
「うわ! 思い出した。お手打になるかと思ったわ」
清蔵は手に持つ杯から酒を零した。
「それで、此度もお手打を心配した訳だな」
 清蔵は黙って頷いている。
「だが、無事であったではないか」
 牛一は片目を瞑って清蔵を睨んだ。
「お主は見落としておるのだ。そのときの振る舞いのお陰で、凍りついた普請場の空気を戻した。その気づかい、動じぬ肝がお屋形さまも感服するところ。お二人は馬が合うのじゃ」
 信長は笑みを残し馬首を返した。
「なるほどー、そういうことか」
 冬枯れの桜の根元にへばりついた残雪に、飛び散った血の斑紋が汚した様は生々しく、人々の心の隅に針刺す怖気おぞけを残した。すると、言継はすぐさま烏皮履うひり(革の履物)の底で丁寧に雪を崩し不浄な汚れを消していた。牛一は深く感心したものだ。清蔵など決して気づかぬ小さな景色に過ぎなかった。
 清蔵は納得顔で頷きながら、「では、やはり狸ということではないか」と手を打った。
「うっ、まあな」
 牛一は目を瞬くと頭が混乱する思いだった。
「そういえば、目も合わせぬ高貴な掌侍が、帰り際に嫌味を残していった……」
「ほう、何と申した」
清蔵は手酌で盃に酒を注ぎながら訊いてきた。
「山科権大納言さまのお声がかりなれば出向きましたが、いらぬ詮索は返り血を浴びることもございましょうに。……とこうだ」 
「禁裏の女とはそのように強いものか」
 清蔵は妙な感心をしている。
 牛一は何かに気が付き、目と口をぱっくりと開けた。
「良かれと引き受けた調べも、もしや権大納言さまを苦しめることになりはしないか?」
「いや、とっつぁんのことだ、すべて知っておるのかもしれぬぞ」
「なに? どういう意味じゃ」
「我らを利用しておるのかもしれぬ。ということよ」
 言継の困っているのか、その実、楽しんでいるのかわからない顔が、牛一の脳裏にまた浮かんだ。そのうえ最近は牛一の前に顔を見せない。
「いやはや、困りましたぞ~」
 言継の繰り返す口癖を清蔵が口にした。そのまま清蔵は腹を抱えて笑っている。
「笑いごとではない」
「そう、熱り立つな。それならそれで利用されれば良いのじゃ。それも一興だろ」
「他人事だと思うて……。いや、止そう。考え過ぎなのじゃ」
 牛一は、清蔵のせいで悪い方へ考えが傾き、混乱したのだと思うと、必死に清蔵の口車に乗るまいと自分に言い聞かせた。
「では何も考えずに一騎駆けだ! 当たって砕ければよいではないか」
「なんだ、偉そうに。ふざけている場合ではない」
「しかし、皆がその若公家を嫌いとは恐れ入る」
「たしかに、皆、嫌いじゃ……」
 牛一は突然顔を上げた。
「なら反対に、……その若公家を好きな御仁から聞いてみるか」

 
  
   古今伝授継承者
 
 あくる日、牛一は山科邸へ顔を出した。
 牛一は書院の文机に蹴鞠ノ会の書付を広げ、見直しをしていた。言経は静かに向かいに座りその様子を見ている。
「長松どの、ここらで思い切った手を打ちますか」
 指先でトントンと書付を叩きながら、牛一は探るように言経の顔色を窺った。
「な、何をなさいます」言経の頬が揺れた。
三条西さんじょうにしの大御所さまに、面談をお願い申し上げる」
「あの、おおごっさんに……。歌と古典学の大家。源氏物語の注釈書を代々に亘って書き続けている三条西家の総帥ではありませぬか」
 言経は驚きで目を丸くしている。
 書付の名簿筆頭は東宮。その隣に実枝さねきの名がある。盛んに動く牛一の指先の下に名があったが、言経は気がつかなかった。
 三条西家とは和歌の古今伝授継承者の家として知られ、源氏物語注釈書では、実隆の「源氏物語系図」、公条きんえだの「明星抄みょうじょうしょう」、当代の実枝の「山下水やましたみず」までの三条西三代は特に有名だ。高弟に織田家の細川藤孝(のちの幽斎)がおり、中院通勝は甥に当たる。家格は大臣家だが、清華家と同等かそれ以上に見られていた。その当主は敬意を込めて三条西のおおごっさん(大御所様)と呼ばれていた。
「正二位、今や内大臣に推されるおおごっさんこそ、夜叉松麿の歌の師であり、庇護者だと権大納言様も仰っておりました」
「反対です大物過ぎます。……大事になるに違いありませぬ」
 牛一も、言経の懸念がわからない訳ではなかった。
「いえ、話のわからぬ方ではないそうです。それに、夜叉松麿の才を愛でておりますのも事実。さすればこそ、思い切ってぶつかってみましょう」
「ですが、どうせ悪くなど言いませんよ。庇うに決まっております」
「それも一考ですな。どんな理屈があるか聞いてみませんと」
 言経には悪いが、そこが眼目だ。言経の思惑の中に留まる訳にはいかなかった。
 牛一は気色ばむ言経の顔を見た。その向こう側に違う顔があるのだろうか。
「なにか……困ることでもございましょうか? 長松どのに、あるいは権大納言さまに……」
「な、何をおっしゃいますやら……」
「それでは、お手配よしなにお願いいたします」
 牛一は力強く念を押した。
 重要な案件を言経に伝えて牛一は人心地ついた。言継もいないし、珍しく茶の一杯のみで明るいうちに腰を上げた。玄関まで来ると表から喧騒が聞こえた。
「これは好かった。又助どのがいらっしゃるとは」
 禁裏から戻った言継が顔を出した。 
「これはご無沙汰しております」敢えて大仰な返答をした。
 言継は目を細めて微笑むばかり。
「会わせたい御仁がおりまする。明日、我が屋敷に御足労願いますかな」
 牛一は、明日の面談を約して、叩頭した。
(おや?)
 てっきり「では、一盞」と酒席に誘われるものと身構えたが、顔を上げると言継は背を見せ奥に向かって歩いていた。珍しいこともある。
 
  ○
 
 翌日、山科邸に来てみると言経はいなかった。急な呼び出しで参内したという。
 案内された奥座敷に、言継ともう一人の公家が座っていた。
ひだり大臣のおとど西園寺さいおんじさまである……」
 言継が敬意をこめて紹介した。
 西園寺公朝きんともは清華家の家格で、長らく左大臣として君臨していた。位階は言継の一つ下の従二位だが官職は高い。歳は還暦を越えたばかりで言継より八つの歳若だ。二人の顔合わせに牛一は身構えた。
「織田家近習、太田又助にござる」
「これはよしなに」
 薄い表情の公朝の口角がきゅっと上がった。極官に立つ者の笑顔らしい。
 静まる風気を撹拌するような明るさで言継が場を繋いだ。
「蹴鞠ノ会当日は、儂もお主も、庭ばかり見ておったのう」
 記録を取るのに必死だったから、確かに清涼殿の内部や裏廊下など気にすることもなかった。
左府さふ(左大臣=公朝)さまは東宮さまのお近くにずっとおった。この……騒動のおりも」
言継は言い難そうに口籠った。
 どうも新たな証人という訳らしい。
「当日、何か変わったことがありましたか」
 と、言継は段取りを踏まえたように問いを公朝に向けた。
「特に何もなかったと記憶するが、権大納言さまから話を聞いて逆に驚いた次第なのじゃ」
 言継がその後の問いを二つ三つと訊ねた。香鈴というに女孺は見たことがある。可愛らしい子で、幾人いくたりもの若公家が気を引こうとしているなどの噂を耳にしたことがある。と公朝はにかわで張りつけたような笑みを見せた。
 結局、言継の尽力には頭が下がるが無駄骨だったようだ。
 公朝は世間話に、ときおり織田家の動向を探りつつ、信長にへつらうような称賛を口にした。
 煎じ茶一杯で半時を過ごすと、牛一はいとまの構えを見せた。
 すると、思いがけずに公朝が自ら口を開いた。
「今、若公家といえば、女子がほうっておけないと名が挙がるのは夜叉松麿……」
 牛一の瞼が跳ね上がった。あまりに不意打ちで直截な話だ。
「中院参議は見目麗しゅう……」公朝は表情を変えることもなく、声を上げて笑った。
「……庭で鞠足として鞠を蹴るほかは、東宮さまに召されてずうっと傍におったぞよ。夜叉松麿は東宮さまのお気に入りじゃでな」
「ああ、そういえば、東宮さまが、お声を上げられたことがありましたな」
 牛一もすぐに思いついた。あの時の様子を急いで記憶の中から探し出す。
「そうじゃよ、夜叉松麿の見事な蹴鞠にお褒めの言葉を与えたのじゃ」
 公朝は言継へ、次に牛一と順に笑みと頷きを寄越した。
「ああ、然様でございましたか。うしろで何やら動きがございましたな。しかし我らは弾正忠さまから記録の依頼があり、すっかり庭に気を取られておりましたので……、のう又助どの」
「さようでございます」
 話を振られた牛一は、記憶を辿りながら相槌を入れた。
 けっして褒められた鞠足ではなかったはずだ。牛一は脳裏に浮かんだ場面を刹那思い返して言継の顔を見た。すぐに奥歯を噛み締め硬い表情を返してくる言継とて、左大臣には遠慮がある。
「見目が良いだけで……、人のやっかみは恐ろしいものよ」
 公朝は初めて顔を歪めて、厭わしさを吐き出すように呟いた。
「それは夜叉松麿も可愛そうじゃな」
 言継は笑ってお追従を入れた。
 
  ○
 
 牛一は山科邸を出ると相国寺へ戻った。
 清蔵が玄関脇の供待ちの間で、中間ちゅうげん足軽を相手に戯言に熱を入れている。関わりを避けてそっと通り過ぎようとした。
「おお~又助どの、そろそろ帰るころかと待っておったのじゃ」
「なんじゃ、油を売っておったのではないのか?」
「客人がもう半刻ほど待っておるのだ」
「客だと、誰じゃ?」
「誰だと思う。細川兵部ひょうぶ大輔のたいふ(藤孝、後の幽斎)どのだ。知り合いか?」
「いやぜんぜん知り人などではない」
「お屋形さまの覚えも宜しく、ゆくゆくは織田家の中核に登る武将に間違いないと拙者は見ておる」
 牛一も清蔵の見立てに同意した。
 三年前に幕臣から信長麾下に入った由緒正しき血筋の武将で、天下に名の知れた教養人だ。和歌、茶道ばかりではなく、剣は塚原卜伝に学んだというから只者ではない。知り人ではないが、知遇を得たいとは常々思っていた。
 寺の小僧の後に従って客待ちの座敷へ向かった。清蔵が当たり前のように従いてくるのが気になった。
「お待たせ申しました。太田又助にござる」
「細川兵部大輔と申します」
 藤孝は丁寧にお辞儀をすると不思議そうに牛一の肩越しを見た。
「伊東清蔵にござる」
(――えっ! なにゆえ、おる?) 
「これは失礼仕りました。なにかと二人で勤めを命じられることが多ござって……」
 やむなく牛一は、平静を装って誤魔化しの言葉を絞り出す。
「何、邪魔はしませぬ。端で静かにしておりますから」
 動じる風もなく清蔵はしらっと応えた。
 清蔵の好奇心にも困ったものだが、かかずらうといっそう恥ずかしさが募る。
 落ち着いて藤孝を見ると色白の細面に皺傷の一つなく、数多あまたの戦功を上げた武将と言うよりは、詩歌を詠ずる公家の趣を見て取った。 
「なるほど、此度の件では又助どのと清蔵どのの二人で調べにあたっておる訳ですか」
 藤孝は勝手に解釈して頷いた。
「此度の件? はて、どこからお聞きになりましたか」
 藤孝は応えなかった。かといって横柄な素ぶりも見せず、丁重な挨拶の流れで京に生まれ育った生い立ちと、文武に親しんだ過去を嫌味なく語った。和歌、茶道はもとより連歌、蹴鞠、囲碁、料理、猿楽と極め、剣ばかりでなく、吉田雪荷から弓術の印可を得、弓馬故実を武田信豊から相伝したという話に、牛一ばかりでなく清蔵も引き込まれた。
「兵部大輔どのは、京の大路を突進してきた牛を組み伏せたとの噂は本当でござるか」
 話を聞いて黙っていられず清蔵が口を挟んだ。牛一もその噂は耳にしたことがある。
「体術を少々身につけ申した。なぁに、角を掴んで足を掛けて転ばしただけでござる」
 藤孝は小袖から腕を剥きだし宙で構えを取った。その前腕の筋が幾条にも絡まる盛り上がりを見せた。見かけで計れぬ並外れた膂力を身につけている。
 四方山話に花が咲き、落ち着くと改めて藤孝が口を開いた。
「そして今は、連歌に心血を注いでおります」
 師は三条西実枝で、同門の弟弟子に通勝がいると口にした。その名を耳にすると頬を動かす筋の力が抜け、瞼が重くなった。牛一の顔は勝手に動いて藤孝と視線が重なった。
「夜叉松麿どのは若くして才気煥発、礼を心得て信義に厚い稀有な若人だと思っております」
 藤孝の動く口を見ていた。何を聞かせてくれるのだろう。呆けっと半開きの己が口に気がつくと牛一は咄嗟に力を入れた。
「ほう。最近よく耳にする若公家ですな。それが何か」
 牛一は興味なさげに応えたが、自ずと眉間に力が入り藤孝を凝視する形になった。 
「娘を、娶らそうと考えておりまする」
「夜叉松麿どのに? ですか」
「然様でござる。この兵部大輔が見込んだ男でござる。……ただ、それをお伝えしておくことが、又助どのとの向後の交誼には都合が好かろうと存じただけにござる」
 半刻ほどで藤孝は山城長岡の城へ帰って行った。
 
  ○

「いや~、中々の人物じゃないか」
 清蔵はすっかり感服していた。
「某もそうは思うが……、中院参議のことはどう見る」
「あれほどの人物が見込んだのだ、咎人ではあるまいよ。なあに、たとえそうであっても禁裏の中の話じゃ、お茶を濁せ、角を立てる必要などなかろう」
 清蔵の言はよくわかる。だが何かが腑に落ちなかった。
「戻る前に山科邸に顔を出していたのだが……」
 山科邸で、極官である左大臣の西園寺公朝に会った事実を清蔵に話した。公朝が述べた通勝の行動は犯行現場への不在の証だった。今思えば、その一点のみを伝えに来たようにさえ思えた。
「なおさら、咎人ではないな」
 案の定、清蔵は暢気な声で応えた。
「左府(公朝)さまの話では、他に真の咎人がいそうではないか、見目の良さをやっかむ輩が」
「話の流れが、あまりにも都合よく通勝を遠ざけておる」
「だから、目に見えぬ力が働いているのなら、力に逆らわなければ良いではないか」
「お主はそれでも織田軍団の武将か」
「んな大袈裟な。――あっ、やっかむ輩とは長松どのではないのか」
「戯けたことを。そもそも権大納言さまのお引き合わせだぞ」
 牛一は声を荒げた。避けていた落とし穴にスポンと嵌ったばつの悪さからだ。自身の喉元に出かかった名前を他人ひとの口から聞きたくなかったのだ。
「う~む、とっつぁんも狸だからな」

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