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15さい
78話 気付いた時には②sideライオネル
しおりを挟む「リツ……兄さんは?」
「え?……え~っと、どこだろ~」
「はぁ、また何も言わずに部屋を出てきたの?」
「そっ……そんな事よりラオ!!」
「ん?なに?」
「……えと、その喋り方の方が良いよ」
「……は?なんの事?」
「だから!ラオの話し方!!毎回毎回あんな変な言い回しされると……恥ずかしいんだよ!……だから、今みたいな話し方のほうがいい」
照れてそっぽを向くリツ。
ドキッと胸が高鳴る。
「へぇ~、リツは俺にドキドキしてるんだ?」
「どっ……ドキドキなんて、してない!!!」
意地悪にリツを覗き込むと、ビクッと肩が跳ね俺を睨みつける。
そんなリツが可愛くて俺は睨みつけるリツに微笑む。
ーーーーーーきっとリツのその言葉に深い意味は無い。
だってリツは兄さんの事がーーーー。
「ねぇ、リツ……兄さんとは、いつから付き合っているの?」
「え?あ、えーっと……半年前……とか?」
「半年前!?……父様と母様は?」
「……うん、知ってる」
「はぁ……マジかー、知らなかったの俺だけ……?」
「い、いや!バセスさん達にも言ってないよ!!」
……でも、それは絶対気付いているだろ……。
そう思い、はぁと深いため息を吐き、ベンチで膝を抱え俯く。
「……ねぇ、リツ……俺の事好き?」
弱々しくなってしまった俺の声に、リツが呆れたように返事をする。
「んぁ?そんなの当たり前だろ!ラオのこと好きだよ」
……でもそれは、家族として……友人としてって事でしょ?
「じゃあさ、もし兄さんと俺が深い海で溺れていて……どちらか1人しか助けられないってなったら、リツは俺か兄さん……どっちを助ける?」
「ーーーーーーーーえ?」
我ながら最低な質問だと思う。
リツは優しいから……きっと何も答えられない…。
……1人を選ぶって事は、1人を犠牲にするって事だから。
俺を見つめながら固まるリツ。
そんなリツを見てはっと我に返り、すぐさま笑顔を作って口を開く。
「ご、ごめんリツ……変な事聞いてーーーーーーーー」
「もし……もしそんな事があって1人しか助けられないんならーーーーーー俺はどっちも助けない」
「……え?」
酷い質問をして申し訳なかったと謝ろうとした時にリツから出たその言葉は予想だにしなかった答えで、今度は俺がぽかんと口を開いたまま固まってしまった。
だが、リツは強い意志すら窺える表情で俺を見つめ言葉を紡ぐ。
「俺は…ラディもラオも助けない……そんでーーーーーー俺も飛び込むっ!!!!!!!!!」
「ーーーーーーーはい?」
力強くそう告げる、リツの輝くブロンドの瞳は自信に満ち溢れていて俺は拍子抜けしてしまう。
「……な、なんで?」
「だって!!俺にとってラディもラオも大切なんだもん!もしそんな状況になったら俺も一緒に溺れて、3人で仲良く天国へ行こーなっ!!!」
にへへと無邪気に笑うリツ。
……あぁ、やっぱり……リツには叶わないなぁ。
暗闇にだって優しく照らしつけるお日様のように……明るく笑うリツを見ていると、俺の悩みがちっぽけな事の様に思えてきて、落ち込んでいたのが馬鹿馬鹿しいとさえ思えてくる。
「ぷっ……あははははははっ!!!!!」
「え!?どうしたのラオ!?」
いきなり大声で笑い出す俺に驚いたリツ。
そんなリツの頭を勢いよくガシガシと撫でる。
「わぁ!!ちょ……ちょっと!やめろぉ!!!」
「あははっ……やっぱりリツはリツだな~」
「んぇ?どういう事?」
「ん?いや、ただ俺はまだ諦めなくて良いってことに気付いただけ」
「はぁ?だから、どういうこーーーーーー」
……チュ。
小さな手で俺の服を掴み、近寄るリツの頬に軽く音を鳴らしてキスを落とす。
「……ふぇ?」
不意の事で驚き目を丸くするリツに、気分の晴れた俺はさわやかに微笑んだ。
「……リツ、俺もリツが好きだからキスしたって良いよね?」
「……え?」
「だってリツも俺の事好きだもんね?」
「へ……あぇ?でもそれはーーーーーーーーー」
「あーあーあー聞こえなーい!!!」
状況がイマイチ理解できずに大きな瞳がぐるぐると回るリツに俺は耳を塞いで悪戯に笑う。
ねぇ、リツ……やっぱり俺、リツの事諦められないよ。
リツはいつも俺に元気を与えてくれる。
だから俺も、リツの傍でリツを守ってあげたいんだ。
だから……俺は絶対、兄さんよりも強くなる。
そんで、リツは嫌がってたけど……これからも口説く事はやめなからね。
だってこれ、想像以上に好評なんだもん。
リツもドキドキするって言ってたし、続けていれば俺の事を意識してくれるかもしれないし、何より俺自身が結構気に入っているから……。
初めこそ恥ずかしかったが、リツに歯の浮くようなセリフを吐くと、可愛い表情が沢山見られて面白いんだよね。
きっと兄さんよりも俺の方がリツの可愛い表情を沢山知っていると思うし、これからもコロコロと表情が変わるリツを見続けたいからーーーーー。
だからリツ……覚悟しておいてよ。
俺は未だに目を回してあたふたとしている可愛いリツの額にもう一度キスをした。
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