その吸血鬼、返品します!

胡桃澪

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彼が吸血鬼だという事。

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「できた! 流石、俺。芸術家だった父の血を引いているな」
「黒月くん、目の前にある物を模写してくださいね?」

 昼休みが終わり、美術の授業。目の前にある彫刻を模写するという授業内容なのに響斗くんは別の物を描いて怒られている。

「仕方ないじゃないですか、先生。目の前に愛する女性がいたら描きたくなるものです。ね、雫?」
「わ、私を描いてたんですか!?」
「父が言っていたんだ。美術とは自分が美しいと思う物を描くものだと。父も母ばかり描いていたな」

 響斗くんがいちいち甘い台詞を吐くのはお父様譲りなの!?

「黒月くん、授業なのだから先生の言う通りにしてくださいね?」
「すみません、先生。お詫びに先生のその美しいお顔を描かせて頂けませんか?」
「えっ? わ、私?」
「この彫刻より先生の方が良いモデルだと思うんですよね、俺」
「し、仕方ないわね」

 先生を口説いた!!

「これで美術の成績は一気に上がるな」

 今、ボソッと何か聞こえたけど!?

  というか、響斗くんの描いた私の絵ってどんななんだろう?

 私は響斗くんの描いた絵を見てみる。

 確かにめちゃくちゃ上手い。

「どうだ? 上手いだろ? やるよ、雫に」
「へ?」
「俺の愛がたっぷり詰まった絵画だ」
「ちょっと気持ちが重たすぎるので結構です」
「頑張ったのに……」
「じゅ、授業に集中してください」
「雫は彫刻像描いたのか?」
「はい」
「ここに俺というこんなに美しいモデルがいるのにか!?」
「自分で言う人はちょっと……」

 本当ナルシストすぎません!?

「女性にそんな引かれたのは人生で初めてだ」
「そうですか」
「けど、落とし甲斐があって良いな」
「お、落ちませんからね?」

 彼が現れてから平穏だった私の学校生活はがらりと変わってしまった。

「今日は小テストするぞ」
「えー! 急すぎじゃね!?」
「テストは急にやるのが一番だ」

 6限目は数学だった。

 テスト用紙が配られ始めると、私はテスト用紙を後ろに回す。

 だけど、その際に指を切ってしまった。

「いっ……」

 絆創膏探さないと。

「っ……」
「黒月くん、どうしたの!?」
「ちょっと……トイレに」

 響斗くんは呼吸を荒げながら、廊下へ駆け込んで行った。

 私と響斗くんの席はわりと近い。

 もしかして、私のせい?

 私は指に流れた血を眺める。こんな少量でも匂いが分かるのかもしれない。

 吸血鬼は多分嗅覚も優れているはずだから。

「ちょっと! プリントに血がついてるんだけど」

 後ろの席の女の子が私に文句を言う。

「ご、ごめんなさい。プリントで指切っちゃって……」
「まじ気持ち悪いんだけど……」

 私が申し訳なく思っていると、朝倉くんが私の席へ。

「大丈夫? 月宮さん」
「えっ? あっ、ちょっと切っただけだから」
「はい、ミサ。俺のプリントと交換ね」
「ちょっと、湊!?」
「俺、ちょうど絆創膏持ってたから。指出して?」
「じ、自分で出来るので」
「大丈夫。俺、保健委員だし」

 朝倉くんは私の指に絆創膏を巻く。

「あ、ありがとう……」
「ミサ、気持ち悪いなんて言ったらだめだよ。自分が同じ立場だったらどんな気持ちすると思う?」
「そ、それは……」
「俺、優しくない子は嫌いだな」
「湊、違うの。あたしは……」
「月宮さん、怪我したらすぐ言わないとだめだよ。ちょっとした怪我でもね」
「は、はい」
「絆創膏なら俺が大量に持ってるし」
「すごいね?」
「保健委員ですから」

 やっぱり優しいな、朝倉くんは。

「あっ! 黒月くん、おかえり! 大丈夫?」
「あ、ああ。薬飲んだから……」

 響斗くんはふらつきながら教室に入って来た。

「雫、怪我したのか?」
「は、はい。プリントで指を。けど、朝倉くんが手当てしてくれたので」
「そ、そうか」
「だ、大丈夫……?」
「ただの……発作だ」

 響斗くんは私と目を合わせずに言うと、席についた。

 やっぱり、私が血を流したから……。

 私達と変わらないように見えても、彼は吸血鬼。私達とは違う。

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