その吸血鬼、返品します!

胡桃澪

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私が助けを呼ぶ相手は。

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 昼休み、一人で中庭で昼食をとっていると、いきなりスマホにメッセージが入った。

『月宮さん、今日の夜空いてる? 話したい事があるんだけど』

 あ、朝倉くんからメッセージが!!

『空いてるよ!』
『良かった。じゃあ、19時に南公園で』
『了解』

 話って何だろう?

 なんかドキドキする。南公園って人気がない公園だけど……。

「黒月くん、今日皆で遊びに行こ!」
「うちら、黒月くんと遊びたい!」
「俺は……」

 教室に戻ると、響斗くんが女子達に囲まれていた。

 響斗くんは私と目が合うと、私に声をかけようとする。

 だけど、先生が戻って来てしまった。

 響斗くんは私の言った事、気にしてるよね。けど、私の言った通りに違いない。

 私が欲しいのはニセモノの好きじゃないもん。

 だけど、また鋭い痛みが頭に響いて来た。

「っ……」

 何か、大事な事を忘れてる気がする……。

 頭に浮かんできたイメージは部屋で一人泣き続ける静流さんの顔。

 どうして静流さんが……?


 放課後になると、響斗くんが席にやってきた。

「先程も頭を抑えていたが、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
「今日、魔界に用事があるから先に帰るよ」
「えっ?」
「ちょっと買いたい物があるから。遅くはならないはずだ」
「そ、そう。あの、大丈夫?」
「何が?」
「魔界でもあまり良く思われていないって言ってたから….…」
「大丈夫。行くのはあまり好きじゃないけど、どうしても買いたいものがあるから。買ったらすぐ帰るよ。やっぱり雫は優しいな」

 さっきあんなきつい言い方しちゃったのに響斗くんは普通に接してくれる。

「あの……」
「困らせてごめんな。けど、ニセモノじゃないよ。俺が雫を好きな気持ちは」
「えっ?」
「いつか、雫にも気付いて欲しい」
「気付くって……?」
「今、俺が目覚めた意味と俺と雫が出会っ意味。一緒にいる内に分かってきたんだ」
「それってどういう….…」

 響斗くんは切ない表情を一瞬見せると、教室を出て行った。

 私はやっぱり何か欠落している気がする。頭痛が起きる度に感じるの。

 大事な何かを忘れているような気がするって。

 朝倉くんとの約束の時間になると、私は公園へ。ただでさえ人気の無い公園だというのに夜に行くのは怖い。

 ドキドキしながら、私はベンチで朝倉くんを待つ。

 だけど現れたのは朝倉くんではなく、ガラの悪そうな男二人組。

「君が月宮雫ちゃん?」
「そ、そうですけど……」

 何で私の名前知ってるんだろう?

「残念。君の大好きな朝倉は来ないよ。俺らに依頼してきた子が朝倉くんのスマホ使ってメッセージ飛ばしたんだよね」
「ど、どうして……」
「君が朝倉と黒月と仲良くしているから二度と近づけないようにしてやれって」
「ここならあいにく人も来ないし、やり放題」
「か、帰ります……」
「だめだよ、逃げちゃあ」

 私は腕を強く掴まれる。

「俺ら結構お小遣い貰ってるからさ、逃げられると困るわけ」
「お小遣いだけじゃなくこんな若い子とやれるとか最高」
「い、嫌! 離してください! お願いします!」
「うるせぇな。縛れ、良太」
「了解」

 男性に掴まれたら抵抗なんて難しいに決まってる。しかも、相手は二人。

 あっという間に手足を縛られ、床に押さえつけられる。

「や、やめてください! お願いだから……お願い、離して!!」

 何度ももがき、悲鳴をあげても彼らは聞かない。

 誰がこんな事……。

 制服のシャツを脱がされ、スカートの中に男性の手が伸びる。

 やだ、やだ、怖い……。

 助けて、誰か……!

「響斗くん……助けて……」

 私は涙を流し、強く助けを求めた瞬間だった。

 いきなり私の上に覆いかぶさっていた男性が悲鳴を上げ、地面に倒れこんだ。

「な、何だ? 今の紫色の光は」

 倒れた男性の背中には焦げ跡のような物がある。火で焼かれたみたいに、服はぼろぼろになっている。

「これ以上続けるようならもっと痛い目に遭わせるぞ? この火をもう一度放てば、この男は死ぬ。こいつを殺したらお前も殺す」
「ひいぃ!」
「響斗くん……?」

 響斗くんが冷たい瞳で彼らを見下ろしていた。響斗くんの左手の上には紫色の炎が浮かんでいる。

「俺を怒らせた以上、生きては返さない」
「ひ、響斗くん! だめ! 人を殺したらだめだよ!」
「俺はこいつらに苦しみを味わわせないと気が済まない。雫にこんな酷い事をした以上は……」
「だめ! 人を殺したら響斗くんは一生苦しむ事になる! だから、人を殺めるような真似しないで!」

 私は響斗くんに後ろから抱きつく。

「雫……」
「ま、まだ何もされてないから。大丈夫だから……」
「ひいぃ! 化け物ーっ!!」

 男性は倒れている男性を支えながら走り去って行った。

「くそっ……逃げやがって……」
「響斗くん、お願い! 追っかけたりしないで!」
「雫……」
「私は本当に大丈夫だから……」
「分かった」

 私は響斗くんの身体を解放すると、その場にしゃがみこむ。

「何故一人でこんな所に?」
「あ、朝倉くんに呼び出されて。けど、呼び出したのは朝倉くんじゃなくて朝倉くんの携帯を使って嘘のメッセージをした人で。私に恨みがある人があの人達を……」
「明日朝倉に問い詰めてやる」
「あ、朝倉くんは関係無いと思うよ! 優しい人だから……」
「分からないだろ、そんなの! 奴らの言葉のままだとしてもあいつの携帯からメッセージが……」

 身体がまだ震えている。

 あのまま響斗くんが来なければ私は……。

「ごめん。今はそんな事を気にしている場合では無かったな。大丈夫、もう大丈夫だから」

 響斗くんは着ていたパーカーを私に着せると、私を優しく抱きしめてくれた。

「大丈夫、大丈夫」

 響斗くんはいつにもなく優しい声で私を励ます。

「どうして来てくれたの……?」
「雫が呼んでる気がしたから」
「えっ?」
「もう一人でこんな危ない所に行くな」
「ごめんなさい……」
「雫の居場所が分かる能力があって本当に良かった」

 私、さっき一番に助けを求めたのは響斗くんだった。

 それに、こんな経験無いはずなのに前にもこんな事があったような気がして……。

「っ……」

 また頭に鋭い痛みが走る。

「雫っ!」
「また……頭痛……」
「これ飲め。魔界で買ってきた。あらゆる症状に効く万能薬だ」

 響斗くんは黒い粉の入った瓶を私に手渡す。

「わ、私が飲んで大丈夫なの?」
「ちゃんと人間にも効くか確認済みだ。母さんも体調が悪い時はよく飲んでたし。なかなか入荷されない代物だ」
「もしかして、これを買いに?」
「ああ。雫がまたひどい頭痛に悩まされたら可哀想だからな」
「ありがとう……っ……」
「ほら、水も」

 私は薬を一気に飲む。

「苦っ……」
「大丈夫か?」
「あれ? 痛み一気に引いた……」
「良かった」
「何が入ってる薬なの?」
「聞かない方が良いぞ」
「じゃ、じゃあ聞かないでおく」
「大丈夫か?」
「うん。今日はお母さんいるし、早く帰らないと心配しちゃうね」
「立てるか?」
「何とか……」

 あれ?頭痛は治まったのに足がふらつく。

「雫、じっとしてろ」
「へ? きゃっ!」

 響斗くんはいきなり私を抱き抱える。

「軽いな」
「は、恥ずかしいんだけど!?」
「けど、上手く歩けないだろ?」
「そ、そうだけど……」
「帰ろうか」

 お姫様抱っこされながら帰るとか初めてだから困惑している。

 さっきあんなひどい言い方、響斗くんにしたのに。

 大変な時だけ助けを求めるとか勝手だ。

 けど、響斗くんが来てくれて本当に嬉しかったんだ。

「眠れない……」

 未遂とはいえ、あんな目に遭った。布団に入っても眠れるわけ無かった。

「結局、誰があんな依頼したかも分からないままだったし……」

 スマホを見ると、朝倉くんから入ってた嘘のお誘いメッセージは削除されていた。

 朝倉くんは代わりに誰かがメッセージを送った事を知らないのか、普通に挨拶のメッセージを寄越していた。

『朝倉湊です。これからよろしくね! 雫いくつかメッセージ入ってたけど、どうしたの?』

 そっか、私の返事のメッセージだけ朝倉くんのスマホに残ってたのか。

『ごめん、間違えて送っちゃってたみたい。お母さんに送ろうと思ってて。これからよろしくね』

 とりあえず誤魔化す。

 やっぱり朝倉くんは関係なさそう。きっと朝倉くんか響斗くんのファンの人の仕業かな。

 未遂で済んだとはいえ、また何かされたらどうしよう……。

 もやもやしていると、いきなり寝室のドアに何かがぶつかる音がした。

「な、何!?」

 私は恐る恐る寝室のドアを開ける。

「この姿じゃノックできないんだった」
「ひ、響斗くん!」

 コウモリになってる!

「いやぁ、ノックしようとしてドアに激突しちゃった。痛い……」
「だ、大丈夫?」
「ああ。けど、雫と添い寝する為にはこの姿が一番だからな!」
「ま、また添い寝しに来たんだ……」
「コウモリなら問題無いだろ? 大丈夫! 長時間変化していられる薬飲んだから」

 魔界ってそんな薬まであるんだ!




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