その吸血鬼、返品します!

胡桃澪

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添い寝を許すのは今日だけなんだからね!?

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「そこまでして添い寝を……」
「ち、違う! ただ、俺は雫が心配で。もしかして眠れないんじゃないかと」
「確かにそう….….だけど」
「やっぱりな。この姿ならラブリーだし、ぬいぐるみと変わらない! 添い寝しやすいだろ?」
「ふふっ。ありがとう……その発想は無かったな」
「良いのか? 添い寝しても」
「人間に戻らないなら良いよ」
「了解! ひゃっほう! 雫の布団にダーイブ」

 最初は警戒していたのに今は響斗くんが来てくれて安心している。

「おやすみなさい」
「おやすみ、雫」

 コウモリ姿の響斗くんと眠っていたら安心したのかよく眠れた。

 珍しく今日は静流さんの夢も見なかった。

「おはよう、雫」
「きゃあああ!!」
「また悲鳴……」

 目覚めると、人間の姿になっている響斗くんが隣にいる事に私は戸惑う。

「朝になったら魔法解けちゃったみたい」
「そ、そう……」
「けど、雫よく眠っていたな? 良かった。一回も魘されなかったな」
「うん。あれ? 響斗くん、目の下にクマ……」
「えっ?」
「響斗くんは眠れなかったの?」
「雫の様子が……いや、コウモリの姿だから眠りにくくてな」

 きっと私を心配して寝なかったんだ。

 一回も魘されなかったって言ってるって事はきっと……。

「響斗くんもあの薬飲んだら? まだ余ってたよね?万能薬なら睡眠不足にも良さそう」
「いや、俺は良いかな。あのエキス入ってるから美味しくないし……」
「私に飲ませておいてそれはずるいよ!?  響斗くん」
「頰膨らませちゃって。可愛いな、雫は」

 響斗くんは私の頰を抓る。

「も、もう! 軽々しく触るのだめ」
「良いじゃん。俺にお姫様抱っこさせた仲なんだし」
「あ、あれは上手く歩けなかったから仕方なく!」
「はいはい。なぁ、雫」
「ん?」
「おはようのキス……しよ?」
「ダメ!」

 私は響斗くんの唇を指で押さえる。

「調子乗りすぎたか」
「そうだよ!」
「ごめん。雫に昨日注意されたばかりなのにな」

 やっぱり響斗くんは私を静流さんの代わりとして見ているんだ。

 何で胸が痛むんだろう? 私が好きなのは朝倉くんのはずだよ?

「おはよう、雫。昨日はメッセありがと」
「お、おはよう」

 学校に着くと、朝倉くんはいつも通り話しかけてきた。

 やっぱり昨日の事、何も知らないっぽい。

「昨日寝落ちした? メッセ応答無くなったから」
「ご、ごめんなさい」

 気付いたら寝ちゃってたな。朝倉くんとメッセやりとりしている途中にコウモリ響斗くんが入ってきたから。

「良いよ。ただ、好きな本聞いてただけだから。雫、よく休み時間に読書してるから何読んでるんですのかなって」
「あっ、恋愛小説が多いかな。だから、男の子にはぴんと来ないかも?」
「そっか。雫って恋愛とか興味あるんだ」
「わ、私みたいなのが恋愛に憧れるなんて烏滸がましいよね。分かってる……」
「そ、そういう意味じゃないよ! ただ、安心した。やっぱり完全に人との関わり断ちたいわけじゃないんだなって」

 そう、見えてたよね。

「わ、私は……朝倉くんや皆みたいになれなくて。どうしたら良いか分からないだけで」
「黒月とは話せるのに?」
「し、親戚だから!」

 不思議と響斗くんとは出会った時から話しやすかったし。

「そっか。けど、あいつを好きなわけでは無いんだよね?」
「えっ? あっ、うん。友達……としては好きだけど」
「そっか。なら、良いんだ。もうあんな思いはしたく無いからさ」
「あんな思い?」
「雫は忘れてて良いんだよ」

 そういえば、朝倉くんは昨日の嘘メッセージの件について話さないけど、聞いた方が良いかな。

 けど、言ったら心配されちゃうかな。朝倉くんは優しいし……正義感もある。

 でも、また何かされたら怖い……。

「あの、朝倉くん。聞きたい事があるんだけど」
「ん?」

 私が言いかけると、女子達が私を睨み始めた。

 ここで話したらまずいかな。

「お、お昼休み!ちょっとだけ話せる? 聞きたい事があって。けど、人がたくさんいると不都合な話で……」

 私が小声で言うと、朝倉くんは頷いた。

「じゃあ、旧図書室は? 先生に鍵借りておくよ」
「あ、ありがとう……」
「ご飯食べたらメッセするよ。なんなら、一緒にご飯食べる? その後そのまま二人で……」
「だ、大丈夫! 響斗くんと食べるし」
「黒月と?」
「う、うん」

 朝倉くんとは少し話せるようになったけど、朝倉くんのグループのメンバーからは嫌われてそうだから。

「黒月も一緒でも良いよ」
「ううん! お邪魔になるし!」
「けど……」
「雫! 今、スマホでランド調べてみた! すごいな! 水がザバァっとする乗り物とかぐるんぐるん回るカップとかあるんだな! 感動!」

 響斗くんが興奮気味で私の元へ。

「そんなに楽しみなんだ? ランド」
「ああ! 昔はこういった娯楽が無かったからな。ワクワクする」
「そ、そっか。良かったね」

 私、絶叫マシンダメだけど。

「雫と初めての場所に行けるのがすごく嬉しい」

 響斗くんはにかっと笑う。

 また、ドキッとしてる。おかしい、おかしいよ!? 私。

 響斗くんは静流さんのなのに……。

「またお前は邪魔するんだな」
「朝倉くん?」
「何でもない。それより、雫。俺の事も名前呼びしてよ?」
「えっ? そんな事……」

 恐れ多いよ!?

「黒月は良くて俺はだめなの?」
「そ、そうじゃないけど……」
「俺だけ名前呼びだと距離を感じるなぁ」
「わ、私に名前呼ばれたら不快じゃない!?」
「どうして? 雫は自分を卑下しすぎ」
「じゃ、じゃあ……み、湊くん」
「はーい。湊です」

 名前で呼んじゃった!

 ちょっとずつだけど、前より湊くんと近付けてる!

 やっぱり私が好きなのは朝倉くんだよね。

「なんか、慣れないね」
「嬉しいよ、俺は。一気に近付いたし」

 湊くんはやっぱり優しいな。

 こんな私とも仲良くしてくれる、名前で呼んでくれる。

 昼休みになると、私は慌ててご飯を食べる。湊くんとの待ち合わせ場所にすぐ向かいたかったし。

「雫、何か急ぎの用事があるのか?」
「ちょっと約束をしていて!」
「誰と?」
「せ、先生!」
「怪しいな……」
「響斗くんはゆっくり食べてて良いから」
「俺も行く。何か手伝いとか?」
「ひ、一人で大丈夫! 来ないで」
「し、雫……ひどいよぉ」

 響斗くんに昨日襲われた件についてもう一度話すのには気が引ける。  

 昨日、襲ってきた人達を殺す勢いだったし。響斗くんが私の為に罪を犯すのは嫌だから。

 響斗くんを残し、私は湊くんと待ち合わせをしている旧図書室へ。

「あ、ありがとう。来てくれて」
「良いよ。雫から誘われたのは初めてだから嬉しかった」
「その……湊くんには非常に言いづらいんだけど….…」
「ん?」

 私は昨日あった出来事を全て湊くんに話した。湊くんはやはり何も知らなかったようで驚いた顔をしながら話を聞いていた。

「そんな事が……。ごめん、俺が気付けば。というか、スマホを無造作に机に置きっ放しだったせいでもあるな」
「う、ううん! 湊くんは悪くないよ! 恨まれた私が悪いというか」
「雫は悪くないよ。分かった、犯人探してみるよ。心当たり無いわけではないし」
「ごめん。友達を疑うような真似させる事になっちゃう」
「良いから。俺は雫にそんな酷い事をした奴らが許せない、絶対に。大丈夫? まだ怖い……よね」
「だ、大丈夫! 響斗くんが助けてくれたか……」

 いきなり湊くんは私を抱きしめてきた。

「あ、あの! 湊くん!?」
「ごめん、たくさん怖い思いさせた。これからは何かあったら黒月じゃなくて俺を頼って。俺が雫を守るよ」
「湊くんはどうして私にそんなに優しく……」
「ずっと昔から知ってるから、君を」
「えっ?」
「もうあんな思いはしたくない。君を失いたくない……」
「湊くん……?」

 なんだろう、好きな人に抱きしめられたら嬉しいはずなのに……なんだか違和感を感じた。

 それは昔も感じたような感覚。

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