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ライゼン通りのパン屋さん ~看板娘の日常~
十章 健国際
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ある日のライゼン通り。今日は王国の健国際。ミラ達も朝から人で賑わう街でお仕事を頑張っていた。
「はい。新しいパン焼けたぞ」
「出来立てのパンは如何ですか」
「はい。こちらに並んで下さい」
マックスが焼き立てのパンを持ってくるとすぐにそれをミランダが並べながら声をかける。
レジ打ちを任されているミラはお客の波に大きな声を張り上げ列を整理していた。
「うわ~。凄い人だ」
「本当ね。これじゃあ欲しいパンもう売り切れてるかも」
「マルクス、ベティーも二人そろってくるなんてふふっ。お熱いわね」
聞きなれた声にそちらを見やるとマルクスとベティーが立っていた。ミラは小さく微笑み茶化す。
「ち、違うよ。偶々一緒になっただけで」
「そうよ。私もうマルクスに恋情は抱いていないわよ」
「あらそう?」
慌てて答える彼の横で彼女も肯定する。それでもニヤニヤ顔のミラは小首をかしげてみせた。
「もう、本当だってば。それよりアップルパイまだある?」
「何時ものブレッドとメロンパンが欲しいのだけれど」
「それならまだあったはず。ちょっと待ってて」
二人の言葉に棚に並ぶパンを見に行く。
「まだあるわよ。でも急いで買わないと無くなっちゃいそう」
「それは大変だ。急ごう」
「そうね。ミラまた後で」
彼女の言葉にマルクスとベティーが慌てて籠を持ちお目当てのパンの下へと向かう。
「毎度有り難う御座います」
「そうだミラ。今日は健国際だろう。王国騎士団も今日ばかりはいつものお仕事をお休みして修練所で剣舞を披露するんだ。ベティーと一緒に見においでよ」
パンを購入する二人へと笑顔で言うミラへと彼が話す。
「あら、それは面白そうね。行かせてもらおうかしら。でもお店が……」
「剣舞は午後からだから。もしこれるなら是非見に来てね」
「私は行くわよ。もし行けそうだったら声をかけに来てね」
お店の事を考えて返事を出せない彼女へとマルクスが言うとベティーも笑顔でそう話した。
「あら、せっかくの健国際なんだから遊びに行ってきたらいいじゃないの」
「そうだぞ。お店の事は俺達に任せて少し遊びに行ってくると良い」
「そう。それじゃあ行ってくるわね」
話を聞いていたらしいマックスとミランダからそう言われミラは嬉しそうに笑顔になる。
「それじゃあミラ、僕の剣舞見に来てくれるんだね」
「えぇ。せっかくだから見に行くわ」
「それなら頑張らないと。じゃあ、また後で」
嬉しそうに笑うマルクスへと彼女は頷く。彼がそう言うと店を出て行った。
「それじゃあベティー行きましょうか」
「えぇ。そうね。行きましょう」
声をかけられるのを待っていたベティーへと近寄り話しかけると二人は店を出て王宮へと向かって歩く。
「王宮に入れるのなんてこの日くらいしかないから楽しみだわ」
「そうね。と言っても庶民が入れるのは謁見の間か剣舞が行われる修練所だけなんだけれどね」
「それでも入れるだけ凄いことだと思わない」
「ふふ。確かにね」
二人は話をしながら王宮を目指す。後の世ではイベントごとがある日に誰しも王宮に自由に入れるようになるのだがこの時代ではまだそれはなくミラとベティーにとって健国際の日は特別なのであった。
王宮へとやって来た二人は修練所へと向かう。
「うわ~。凄い人」
「早く来たのにもうこんなに埋まっているだなんて」
人の多さに呆気にとられるミラへとベティー。
「それだけ皆剣舞を見たいんだわ」
「私達も早く座れるところを探さないと」
二人は急いで座れるところはないかと首を左右に振る。
「あら、貴女達。こんなところで如何したの?」
「え、あ。ローズ様」
何処からか声をかけられそちらを見やると豪華なドレスを身に纏ったローズがいてミラは一瞬誰か分からなかったが声色から判断して答える。
「もしかして剣舞を見に来たのかしら」
「えぇ。そうなの」
彼女の言葉に返事をするとローズは考えるように周囲を見回し微笑む。
「それならいい場所を知っているわ。ついてきて」
「は、はい」
企み笑いを浮かべるローズの後を追いかけるとそこは王族や貴族が閲覧する席で二人は驚く。
「ローズ様。ここは民間人は立ち入り禁止ですよ」
「あら、レイヴィン。この二人はわたしの連れよ。問題ないでしょ」
扉を守るレイヴィンがミラ達の姿を見つけて声をかける。その言葉に彼女が笑顔で答えた。
「……後で王妃様になんて言われるか俺は知りませんからね」
「わたしのお友達なら問題ないでしょ。さ、二人とも入るわよ」
見て見ぬふりをしてくれるらしいレイヴィンに答えたローズが二人を見やり話す。
「え。で、でも」
「私達には敷居が高いと言いますか……」
躊躇うミラにベティーも如何したらよいのかと戸惑う。
「大丈夫よ。わたしと一緒ならね」
「は、はい」
「分かりました」
自信満々なローズに二人は曖昧に返事をするとすでに歩き出した彼女について行った。
「うぅ……視線が痛い」
「周りを気にしては駄目。気にしたら負けよ」
貴族達からの痛い視線にミラが呟くとベティーが小声で答える。
それから二人は居心地の悪さを感じながら剣舞を楽しむ余裕もなく早くこの拷問のような時間が終わることを切に願った。
「はい。新しいパン焼けたぞ」
「出来立てのパンは如何ですか」
「はい。こちらに並んで下さい」
マックスが焼き立てのパンを持ってくるとすぐにそれをミランダが並べながら声をかける。
レジ打ちを任されているミラはお客の波に大きな声を張り上げ列を整理していた。
「うわ~。凄い人だ」
「本当ね。これじゃあ欲しいパンもう売り切れてるかも」
「マルクス、ベティーも二人そろってくるなんてふふっ。お熱いわね」
聞きなれた声にそちらを見やるとマルクスとベティーが立っていた。ミラは小さく微笑み茶化す。
「ち、違うよ。偶々一緒になっただけで」
「そうよ。私もうマルクスに恋情は抱いていないわよ」
「あらそう?」
慌てて答える彼の横で彼女も肯定する。それでもニヤニヤ顔のミラは小首をかしげてみせた。
「もう、本当だってば。それよりアップルパイまだある?」
「何時ものブレッドとメロンパンが欲しいのだけれど」
「それならまだあったはず。ちょっと待ってて」
二人の言葉に棚に並ぶパンを見に行く。
「まだあるわよ。でも急いで買わないと無くなっちゃいそう」
「それは大変だ。急ごう」
「そうね。ミラまた後で」
彼女の言葉にマルクスとベティーが慌てて籠を持ちお目当てのパンの下へと向かう。
「毎度有り難う御座います」
「そうだミラ。今日は健国際だろう。王国騎士団も今日ばかりはいつものお仕事をお休みして修練所で剣舞を披露するんだ。ベティーと一緒に見においでよ」
パンを購入する二人へと笑顔で言うミラへと彼が話す。
「あら、それは面白そうね。行かせてもらおうかしら。でもお店が……」
「剣舞は午後からだから。もしこれるなら是非見に来てね」
「私は行くわよ。もし行けそうだったら声をかけに来てね」
お店の事を考えて返事を出せない彼女へとマルクスが言うとベティーも笑顔でそう話した。
「あら、せっかくの健国際なんだから遊びに行ってきたらいいじゃないの」
「そうだぞ。お店の事は俺達に任せて少し遊びに行ってくると良い」
「そう。それじゃあ行ってくるわね」
話を聞いていたらしいマックスとミランダからそう言われミラは嬉しそうに笑顔になる。
「それじゃあミラ、僕の剣舞見に来てくれるんだね」
「えぇ。せっかくだから見に行くわ」
「それなら頑張らないと。じゃあ、また後で」
嬉しそうに笑うマルクスへと彼女は頷く。彼がそう言うと店を出て行った。
「それじゃあベティー行きましょうか」
「えぇ。そうね。行きましょう」
声をかけられるのを待っていたベティーへと近寄り話しかけると二人は店を出て王宮へと向かって歩く。
「王宮に入れるのなんてこの日くらいしかないから楽しみだわ」
「そうね。と言っても庶民が入れるのは謁見の間か剣舞が行われる修練所だけなんだけれどね」
「それでも入れるだけ凄いことだと思わない」
「ふふ。確かにね」
二人は話をしながら王宮を目指す。後の世ではイベントごとがある日に誰しも王宮に自由に入れるようになるのだがこの時代ではまだそれはなくミラとベティーにとって健国際の日は特別なのであった。
王宮へとやって来た二人は修練所へと向かう。
「うわ~。凄い人」
「早く来たのにもうこんなに埋まっているだなんて」
人の多さに呆気にとられるミラへとベティー。
「それだけ皆剣舞を見たいんだわ」
「私達も早く座れるところを探さないと」
二人は急いで座れるところはないかと首を左右に振る。
「あら、貴女達。こんなところで如何したの?」
「え、あ。ローズ様」
何処からか声をかけられそちらを見やると豪華なドレスを身に纏ったローズがいてミラは一瞬誰か分からなかったが声色から判断して答える。
「もしかして剣舞を見に来たのかしら」
「えぇ。そうなの」
彼女の言葉に返事をするとローズは考えるように周囲を見回し微笑む。
「それならいい場所を知っているわ。ついてきて」
「は、はい」
企み笑いを浮かべるローズの後を追いかけるとそこは王族や貴族が閲覧する席で二人は驚く。
「ローズ様。ここは民間人は立ち入り禁止ですよ」
「あら、レイヴィン。この二人はわたしの連れよ。問題ないでしょ」
扉を守るレイヴィンがミラ達の姿を見つけて声をかける。その言葉に彼女が笑顔で答えた。
「……後で王妃様になんて言われるか俺は知りませんからね」
「わたしのお友達なら問題ないでしょ。さ、二人とも入るわよ」
見て見ぬふりをしてくれるらしいレイヴィンに答えたローズが二人を見やり話す。
「え。で、でも」
「私達には敷居が高いと言いますか……」
躊躇うミラにベティーも如何したらよいのかと戸惑う。
「大丈夫よ。わたしと一緒ならね」
「は、はい」
「分かりました」
自信満々なローズに二人は曖昧に返事をするとすでに歩き出した彼女について行った。
「うぅ……視線が痛い」
「周りを気にしては駄目。気にしたら負けよ」
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