乙女ゲームのヒロインをいじめるいじめっ子グループのリーダーに転生したので悪役を演じきってみせましょう

水竜寺葵

文字の大きさ
27 / 66
セカンドストーリー

三章 学園祭で知った事

しおりを挟む
 三階までやってきたリリアーナはまずルシフェルのいる教室へと向かう。

「えっと、確かこの辺りだって聞いてたけど……」

(亜由美、ここですわ)

同じような教室が立ち並ぶためどの辺りなのか分からなくなっていた時に心の声が聞こえてくる。

「有り難う。さてっと、それでは……」

「リリア、来てくれたのか。丁度今から俺のヴァイオリンを披露するところだったんだ。良かったら聞いて行ってくれ」

「リリア、いらしゃい。僕はダンスを披露するんだよ。見ててね」

彼女は一呼吸おいてから教室の中へと入って行くと、リリアーナの姿に気付いたルシフェルとリックが微笑み声をかけてきた。

「リックさん? どうして、リックさんがこの教室に?」

「あれれ? 言ってなかったっけ。僕はここのクラスなんだよ」

リックがいる事に驚く彼女へと彼が笑顔で説明する。

「……俺も今まで会った事がなかったから知らなかったのだが、どうやらクラスメイトだったらしい」

「まぁ、始業式から一度もこのクラスに顔を出していなかったからね。クラスメイトも僕の事知っている人は少ないと思うよ」

ルシフェルも「こいつと一緒のクラスだとは」といいたげな顔で頭を抱えながら話す。それを他所にリックがなぜか得意げな様子で語った。

「そ、そうでしたのね」

「兎に角、今から俺達の出番だから、見て行ってくれ」

「えぇ。勿論そのつもりですわ」

「リリアが見てるんだから、とびっきりのダンスを披露するよ」

知らなかった事実に衝撃を受けるリリアーナへと二人が話し準備の為に立ち去る。

彼女は適当に空いている席へと座り演奏会が始まるのを待った。

「それでは、お待たせいたしました。我がクラスナンバーワンの人気者! ルシフェルとお調子者の問題児リックによる演奏とダンスを披露いたします」

「きゃ~!! ルシフェル様!!」

「ルシフェル様、大好き!!」

「ちょっと、貴女のせいでルシフェル様がみえないじゃないの。どきなさい!」

(すごい人気……ファンブックにもルシフェルは女生徒から人気者でファンクラブまであるって書いてあったけど、ここまで凄いとは……)

誰がルシフェルの近くの席を確保できるかで争い合う姿を見たリリアーナは、端っこの席を選んでよかったと安堵する。

(あれに巻き込まれたくないからね。ここを選んで正解だったわ)

内心で呟いた時壇上に立つルシフェルがヴァイオリンを構える。リックも登場しダンスを披露し始めた。

教室内は心地よい音色に包まれ、その厳かな音に合わせて綺麗に踊るリックの姿もいつものおどけた様子とは打って変わっていて、やはり侯爵家の血をひいていると思わせる麗しく、恭しいダンスにリリアーナは暫く二人の姿に見入る。

気が付いたら演奏が終わっており、二人が綺麗にお辞儀すると教室や廊下から溢れんばかりの拍手喝采が送られた。

(二人とも凄い! 凄い演奏とダンスだったわ!)

彼女も盛大に拍手を送るとその姿を見た二人が嬉しそうに柔らかく微笑んだ。

そうしてルシフェルとリックの出し物を見た後フレンのいる教室へと向かう。

「リリア、来てくれたのか」

教室へと入るとリリアーナに気付いた彼が笑顔で出迎えてくれる。

「えぇ。フレンの教室は何を出していますの?」

「俺の教室は見ての通り手作りのお菓子を販売している。リリア、よかったら好きなのを持っていけ。俺がおごってやる」

彼女の質問に教室の中へと視線を投げかけフレンが答えた。

「え、いいえ。自分で買いますわ」

「おごらせてくれ。……お前に一度も何も買ってやれなかったからな。だから、こっちでは少しくらいは「兄」としてできなかったことをさせてもらえないか」

「う……そう言われてしまったら何も言えなくなっちゃうよ。……分かったわ。それじゃあ、これをお願い」

その言葉に弱いリリアーナは仕方ないといた感じで諦め一つの包みを手に取りお願いする。

フレンが前世で自分の兄であると分かってから事あるごとに「兄としてできなかったことをこっちではさせてくれ」と頼まれるようになったのだ。勿論リリアーナもお兄ちゃんと一緒に何かした記憶はなく、兄との思い出はいつも病院でお見舞いの時に見たベッドに横たわっている姿だけであった。だからこそお互いとも兄と妹としての思い出がないため、こっちではそれを埋めるようにいろんなことを二人で体験しようと約束したのである。

「生徒会の仕事が午後から入っているから、午前中にリリアが教室に遊びに来てくれてよかった。もうみんなの教室を見て回ったのか?」

「まだ、フレア様やエル様や会長達の教室は見ていないの。特等生の教室って確か別の建物になるのよね」

「あぁ、生徒会室がある方の舎になるから、東側の方だな」

彼の言葉に答えた彼女へとフレンが説明する。

フレン以外の生徒会のメンバーやエルシアやフレアは皆特等生といい、成績が優秀な学生か王家の者しか入ることが出来ないとされているとても頭のいい生徒達が過ごす教室に通う生徒である。そこはこの学園の中でも別格でリリアーナ達が通う教室がある棟とは別に学舎があり、特等生だけが受ける特別授業を学んでいると噂があるほど、同じ学園に通っていても特別扱いされるいわばこの学園のトップクラスの者達が集まる教室が立ち並ぶ場所があるのであった。

「これからそこに向かうの。確か、学園祭の時は特別に解放されているから、私達普通クラスの生徒が入っても問題ないって聞いてるけど、大丈夫だよね?」

「大丈夫だ。追い出されたりなんかしない。……エルシアやフレアは二年生の教室に、会長達は三階の教室にいるはずだ。ただ、生徒会は皆順番で学園内を巡回しているから、教室にいるか如何か分からないがな」

「有り難う。とりあえず行ってみるわ」

二人は軽く会話を交わすと別れる。リリアーナはそのまま教室を出て特等生の教室がある学舎へと向かっていった。

(亜由美。ここが特等生が過ごす校舎ですわよ)

「ここが……生徒会室以外の場所に来るのは初めてだわ」

生徒会室には何度か顔を出したことがあるが、生徒達が過ごす教室がある棟には一度も来たことがない。自然と緊張で手に汗を握りながら一歩を踏み出し中へと入る。

「流石は特等生が過ごす校舎。普通と違って豪華な感じね」

建物の作り自体は同じようなのだが、中は違っていて、赤い絨毯の敷き詰められた床に彫刻が施された柱や大きな格子窓など、普通の校舎にはない豪華な造りとなっていた。

「えぇと。二階が二年生の教室だったわよね」

独り言を零しながら絨毯の敷かれた階段を上り二階へと向かうと見えてきた豪華な扉に驚く。

「す、すごい。これが教室の入り口だなんて……」

普通の教室のスライド式の扉と比べてなんて特別感を感じる重厚な扉なのだろうと冷や汗を流す。

「ごくり……」

あきらかに場違いなところへと来てしまったと感じながら、怖気づく気持ちを押さえ込み恐る恐る取っ手を握り引き開けた。

「あら、リリアじゃありませんの。ようやく来ましたのね……別に貴女がいつ来るのか待っていたわけではありません事よ。ただ、待ちくたびれる前に来て欲しかっただけですわ」

「リリア、いらしゃい! どう、このドレス試着していってよ」

「……」

引き開けた途端待ち構えていたと言わんばかりにエルシアとフレアが出迎えてくれて、彼女はあともう少し考えていたら扉を思いっきり締め直していただろうくらい衝撃を受けた。

「エル、さん。それにフレア様も……えぇっと、この教室ではいったいどのような出し物をなさっていらしゃるんですか?」

「わたし達二年生のクラスは生徒が作った礼服を展示販売しているのよ」

我に返り慌てて尋ねたリリアーナの言葉に王女が答える。

「つまり、展示会みたいなことをなさっていると?」

「それだけではございませんわ。展示販売を通して収益の方法を学ぶのが一環ですの」

いまいち理解できていないといった感じで彼女はさらに質問をすると令嬢が説明した。

「成る程、未来に役立つ方法で出し物をしているという事なのですわね」

「そう言う事。さ、リリア。せっかく来てくれたんだからわたしが作った服を着てみて」

「私が作った服も勿論試着して頂きましてよ」

(ふええぇ~!?)

二人が言うと同時にしっかりと両側から腕を掴まれ引きずられる。リリアーナは着せ替え人形にされることを察し顔を青ざめさせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...