乙女ゲームのヒロインをいじめるいじめっ子グループのリーダーに転生したので悪役を演じきってみせましょう

水竜寺葵

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セカンドストーリー

十七章 知りたいと思う心

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 不思議な夢を見てから一週間が経過し、リリアーナはすっかりそんなものを見た事すら忘れていた頃。メラルーシィとの読書会に向かっていた。

「お姉様。本日の私のお勧めはこちらです。「時を巡る運命の少女のお話」宇宙に散らばる星々を巡る少女の終わらない物語の一つです」

「相変わらずメルはファンタジーが好きね。私のお勧めはこれ「怪奇」館で起こる殺人事件の謎を紐解いていくのだけれど最後は戦争について考えさせられるという意外な展開に繫がっていてとっても面白いのよ」

「私怖い話は苦手で……でもお姉様のお勧めならば必ず読破して見せますわ」

お互いお勧めの本を見せ合い話に盛り上がる。

「そう言えば、メルのお兄さんからは相変わらず手紙が毎日のように届いているの」

「本当に困っています。毎日届くのは流石に全てにお返事も出せませんし……」

不意にリリアーナが話題を変えるとそれに溜息を零しメラルーシィが答える。

「本当にメルの事が大好きなのね。私もそういうの分かるわ。昔「兄」と呼んだ人がいたから……」

「どうして過去形なのですか?」

「もう、「お兄ちゃん」には永遠に会えないからよ」

「っ!? す、すみません。そうだとは知らずに……でもお姉様のお兄様ですからきっと素敵な方でしたのでしょうね」

(違う違う。前の世界での話だから今は「リリア」と「フレン」として出会ってるのよ……なんて言えないしどうしようこの空気)

少ししんみりした空気になってしまい彼女は焦る。何とかして空気を換えないとと頭をフル回転させているとメラルーシィが口を開く。

「……私のお兄ちゃんがあれほどまでに私に過保護になったのは、私が幼いころ母を亡くしたからなのです。父は王国騎士団の団長を務めていて仕事の為家に帰って来ることもあまりありませんでしたので。それで、お兄ちゃんに私は育てられたようなものなんです」

(そうだったんだ。そんな設定はファンブックにも何処にも書いてなかったから知らなかった……って、そうよね。この世界は実在する惑星なんだから、私の知っている乙女ゲームの世界の通りに存在しているわけじゃない。メルだってこうして生きて生活している一人の女の子なんだもの)

瞳を伏して語り出した彼女の言葉にリリアーナは驚いたがすぐに納得して小さな息を吐き出す。

「幼いころの私は引っ込み思案でいつも兄の後ろに隠れているそんな弱い子で、それでお兄ちゃんに守られていないと何もできない弱虫だと言われていじめられていたんです。王国騎士団の家系に生まれた子なのに何もできない弱虫……かつての私はそういう女の子でした。ですが、今は違いますわ。アルベルト様との婚約のために、侯爵家の令嬢にふさわしい淑女になろうと思った矢先、お姉様に会ったのです。リリア様は私に貴族社会の常識やルールを厳しく教えてくださいました。そんなお姉様が病で倒れた時私は泣きじゃくるしかできなくて……でも、心が固まった時勇気がわいたんです。リリア様を助けたい。だから何もしないまま終わるのは嫌だって。おかげで今の私は泣いてばかりだったあの頃の私とは違います。これもすべてお姉様のおかげなのですよ」

「メル……」

誇らしげに語り切った彼女の顔を見詰めてリリアーナはこみ上げてくる熱い感情に唇を引き上げ微笑む。

「それは違うわよ。メルが自分で自分の殻を破ったの。私は何もしていないわ。メルの中に最初からあったのよ「勇気」が」

「私の中に最初から?」

彼女の言葉にメラルーシィが目を瞬き不思議そうに首をかしげる。

「ええ、そうよ。勇気がない人がいきなりそんな決意思いつくはずないもの。だから、メルの中にあった小さな勇気が炎を上げたから決断できたのよ」

「お姉様……ふふ。有難うございます」

リリアーナがにこりと笑い言うと彼女が頬を紅潮させてお礼の気持ちを伝えた。

「私こそ、メルのことが知れてよかった。メルはただ優しいだけじゃないわ。いざという時に恐怖と立ち向かう勇気を持てる確りと芯の通った素晴らしい女性よ」

「お姉様と出会ったおかげです。お姉様と出会わなければ私は……」

彼女の言葉にメラルーシィが優しくそして尊敬の念を抱いた瞳でまじまじと見詰める。

「?」

「ふふ。秘密です」

不思議そうにするリリアーナへと彼女が緩く微笑み言った。

そうして和やかな雰囲気に戻り読書会が終了すると寮の部屋へと戻るため校門へと向かう。

「リリア、お待ちしておりましてよ」

「エルさん。まだ学校に残っていたの?」

校門の前に佇むエルシアの姿に彼女は驚く。

「貴女、警戒心が緩み切っておりましてよ。いまだに誘拐犯に命令を下した人物が捕まっておりませんのに、いつまた狙われるか分からりませんのよ。それなのに、リリアを一人きりで登下校させられるとでも思いまして」

「あれからもう一月も経つのに……皆心配しすぎです」

令嬢の言葉にリリアーナは苦笑して思っていたことを呟いた。

「お黙りなさい。私が直々にこうして貴女の為を思って守ってあげておりますのよ。私より先に逝く事の無いように黙って守られておけばよろしいのですわ。別に、リリアの身に何か起きたらと気が気でないわけではございませんわ。そ、それに……リリア、貴女は前にも高熱を出して死に直面しましたのよ。これ以上私を心配させるようなこと許しません。ですからこれからも登下校時は私がついていて差し上げましてよ」

(出た。ツンデレお嬢様節)

頬を赤らめ語るエルシアの様子に内心でツッコミを入れながら彼女は小さく笑う。

「……リリアは知っていますでしょう。私のお母様は王家の血をひいておりますの。それゆえに私は幼い頃より厳しい教育を受けて育ちましたわ。ですから、周りの者に利用される前に周りを利用しなさいと……リリアにもずいぶんと酷い事をしてきました。今ではそれを酷く悔いておりますのよ。リリアは私にとって親友と呼べる唯一の存在なのですわ。私の凍てついた心を貴女が溶かしましたの。ですから、貴女は私にとって特別なのですわ」

「エルさん……」

(エル様はゲーム上では嫌味な悪役令嬢で極悪人みたいな扱いのキャラだったのに……今のエルシアはなんていうかツンデレお嬢様って感じで、そして、私の知らない人生を歩んできて複雑な心情を抱いているただの何処にでもいる女の子で……ああ、エルシアって知れば知るほど悪い子じゃないんだなぁ……)

頬を赤らめ愁いを帯びた瞳で語る令嬢の言葉にリリアーナは内心で声に出せない思いを紡いだ。

「私が……この私が間違っていたのだと、今ならば素直に認めて差し上げますわ。ですから、リリア、これから先もずっと、ずっと私の隣にいて下さいますわよね」

「勿論。これから先もずっとエルさんの友達として側にいますよ」

俯き震える声で呟いたエルシアへと彼女は優しい声色で答える。

「ふふ。……仕方ありませんわね。今はまだ「友人」として側にいることを許してさしあげてよ」

(エル様らしいな~)

その言葉に含まれた意味に気付くことなくリリアーナはへらりと笑った。
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